新元号発表に翻弄されるカレンダー業界他で経営悪化危機も

「新元号」の発表がいつになるのかが決まらず、カレンダー業界で倒産の危機も

記事まとめ

  • 「新元号」の発表が“いつ”になるのかが定まらず、翻弄されている業界は少なくない
  • 筆頭がカレンダー業界で「祝日・休日の判断」ができず中小業者は倒産危機に瀕するとも
  • 切符やICカード「Suica」に和暦を用いるJR東日本は西暦表示するなどの切り替え作業も

新元号発表に翻弄されるカレンダー業界他で経営悪化危機も

新元号発表に翻弄されるカレンダー業界他で経営悪化危機も

新元号発表はいつになるか(時事通信フォト)

 2019年5月1日の新天皇の即位まで1年2か月。国家をあげた一大イベントとなるのは間違いないが、国民的関心事である「新元号」の発表が“いつ”になるのかが定まらない。その影響を最も受けるのは──。

 新元号の発表は今年末以降に──そう“スクープ”を打ったのは、読売新聞(2月16日付)だった。

 記事では、〈政府は(今上天皇の)即位30年を祝う記念式典を来年2月24日に(中略)行う方向で、式典後に新元号を公表する可能性もある〉とし、改元の2か月前まで新元号は明らかにならないというのだ。

 もともとは「2018年半ば」になると報じられていた新元号発表はズルズルと“後ろ倒し”になっているように見える。

 その理由としては「早期の公表は天皇と新天皇の“二重権威”が生じる懸念がある」「周知期間が長いと2つの元号が併存すると受け止められかねない」などと報じられているが、定例会見で質問を受けた菅義偉・官房長官は「適切に検討を進めていく」と述べるのみ。

 そこに翻弄されている業界は少なくない。筆頭がカレンダー業界だ。

 読売報道の前日、カレンダー業者が加盟する「全国カレンダー出版協同組合連合会」が、菅氏への陳情に足を運んだ。和暦を入れたカレンダーの場合、新元号発表のタイミングは“死活問題”となる。松原順・事務局長はいう。

「2019年の商品は通例なら2017年末から印刷を始めます。製造元は中小零細企業が多いため少量ずつ、1年かけて製造しているんです。今年はその作業を見合わせている状況です」

 さらに松原氏が深刻に受け止めているのが、「祝日・休日の判断」だ。

 現在、政府は新天皇の即位日となる5月1日を祝日か休日とする方向で検討中とされる。もし祝日法を改正し祝日になればその前後の4月30日、5月2日が休日になり、4月27日から10連休が出現する。

「祝日はカレンダーの赤数字で確認する人が多い。黒数字の日付から平日と判断した人が会社に行ったら祝日だった、という事態だけは絶対に避けたいのです」(松原氏)

 慶事に関わるだけに松原氏の不安の言葉は控え目だが、ある業界関係者はこう吐露する。

「大手と違い、中小業者は設備も人手も急な印刷には対応できない。決定後に大手が“新元号・新休日対応”を謳った商品を売り出したら太刀打ちできない。放置すれば年末の商機は大幅売上減だし、臨時に人を雇っても、売れなければ大赤字は必至。どちらを採ろうとも倒産の危機に瀕する会社が出るだろう」

◆“お断わり”で対応

 手帳版元大手の高橋書店はすでに新元号の掲載を見送る決断を下した。

「2019年版は、1月始まりの手帳だけで255種もあって、すでに製造に着手しています。元号は省き、祝日については奥付に『2018年2月末までに確定した内容で掲載しています』とお断わりを記すしかない。2019年4月始まりの商品は今秋が締め切りですが、このままですと同様の対応になります」(広告・広報部)

 発表が遅れるほどに影響は拡大する。切符やICカード「Suica」に和暦を用いるJR東日本広報部の話。

「当社のシステムは和暦ですが、必要に応じて新元号表示への変更や西暦表示とするなどの切り替え作業が生じます。ちなみに券売機は訪日外国人のお客様への対応で、西暦対応を順次行なっていく計画です」

◆書き換え作業する人が足りない!

 硬貨製造にあたる独立行政法人造幣局はこんな言い方をする。

「昭和64年1月7日、小渕恵三・官房長官の新元号の発表直後から金型を作り始め、製造が始まったのは2月半ばでした。当時は消費税導入に向けて1円硬貨の製造を増やしていたため、休日返上、残業続きで対応しました」

 つまり、来年年初の発表なら間に合うが、2019年2月24日の即位30年記念式典以降にズレ込むと、新天皇即位のタイミングで“新元号コイン”を市中に流していけるかは微妙になってくるのだ。

 しわ寄せは様々な業界の“現場”に及ぶ。大手金融機関の顧客管理システム構築を下請けするエンジニアが沈んだ表情で打ち明ける。

「顧客の生年月日や手続き日などを和暦で管理しているため作業は煩雑になる。社員の端末に表示される画面のレイアウトひとつとっても新元号の画数次第では表示枠が小さいと漢字が潰れてしまったりするので複数案用意しなくてはならず、発表された元号次第でゼロからやり直しになることもありうる」

 改元直前の公表でデザイナーやオペレーターの人材が払底すれば、人件費はかさみ、中小のカレンダー会社やシステム管理会社の経営を圧迫しかねない。

“平成最後の日”に向け、心配を募らせる人は少しずつ増えている。

※週刊ポスト2018年3月9日号

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