外食チェーンのセルフ式店舗導入 松屋と大戸屋を比べてみた

外食チェーンのセルフ式店舗導入 松屋と大戸屋を比べてみた

牛丼チェーン「松屋」のセルフ式店舗

 人手不足がもっとも深刻な外食産業。大手外食チェーンは人材確保にあの手この手で知恵を絞っているが、人手が少なくても効率的なオペレーションが見込めるセルフ型店舗も増えてきた。フードアナリストの重盛高雄氏が、最近セルフ店舗の実験を進める牛丼チェーン「松屋」と、昨年から一部セルフ式の導入を始めた定食屋チェーン「大戸屋」の2店を訪れ、その効果について検証した。

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 今回「松屋」のセルフ店舗として訪問したのは東京・紀尾井町店だ。地下鉄「麹町駅」至近、ビルの1階に位置するいわゆる路面店だ。周囲には企業のビル群が立ち並び、平日のランチ時間には“難民”も発生しそうな立地だ。

 松屋のセルフ店舗の仕組みは次の通り。店舗に入ると、まず自動販売機にて食券を購入して着席する。ここまでは従来型店舗と同様の流れ。ここからがセルフ店舗の特徴だ。

 一般店舗であればカウンター席に座るとスタッフが水を運び、食券を受け取りに来る。その後キッチンで注文品が作られ、客の座席に運ばれるが、セルフ店舗では、お水やお茶もセルフサービスとなっている。さらにこの店舗の給茶機には食後に薬を服用する人のために、ぬるめのお湯も用意されている。

 席で待つこと数分。お渡し口上部にあるディスプレイ(表示板)に自分の番号が表示される。ディスプレイに作り中→受け取りごとに番号が表示され、呼び出しが行われる。そして、窓口にて食券を従業員に渡し、注文した商品が提供されるという流れだ。

 食後は下膳コーナーにトレイを持ち運ぶ。お茶などの紙コップは高速道路にあるSAのように専用ボックスに廃棄することで完了する仕組み。廃棄するゴミの軽量化という観点からみると、エコに配慮した取り組みといえる。

 一方、定食屋の雄である「大戸屋」のセルフ式店舗も訪れた。新丸の内センタービルに新旗艦店としてリニューアルオープンしたこの店舗は、「丸の内オアゾ」に隣接するオフィスビルの3階に位置する。

 まずは来店時、空いている席に案内される。今回はカウンター席を選択したが、カウンターには見慣れたメニュー表はなく、タブレットが設置されている。最初の画面では人数の登録を求められ、人数を入力後、メニュー表記に移る。メニューから商品を選択し、その後ご飯の種類とサイズを選んで注文は完了となる。

 セルフ店舗とはいえ、タブレットに不慣れな年代のお客様も想定されるためか、よく見るとスタッフは通常店舗と同様、腰にオーダー用の端末も装備している。オーダー後、タブレットの役目は終了。今回は注文後15分ほどして、料理が運ばれてきた。食後は下膳する必要はなく、通常店舗と同様である。

 大戸屋のセルフ店舗の一番の強みは会計方法だ。通常通りスタッフの対応するカウンターに加え、セルフレジも設置されている。セルフレジにおいては、現金のほかクレジットカードや各種電子マネーやプリペイドカードなどの支払い手段が使用可能となっている。

 導入前の実験店舗では約3割の客がセルフレジを利用と説明していたが、今回の訪問時においても、一時間の滞在においてカウントしてみると、やはり3割ほどの利用頻度であった。

 今回、実際に2チェーンのセルフ式店舗を訪れた体験を元に、まずは従業員目線でメリット・デメリットを検証してみた。

 松屋の場合、忙しい時間帯は調理に専念することが可能だということ。時間のかかっていた座席への配膳や下膳の手間が軽減されているからだ。特に下膳においては、【食器を下げる→テーブルを拭く→次の客を迎える】という一連の作業が省ける。スタッフが店内作業において一番大変な部分が軽減される仕組みだ。

 大戸屋の場合は、オーダーを聞くという場面においてタブレットが使用可能な客に関しては省力化できるが、タブレットに不慣れな客層に関しては、通常店舗と何ら変わることはない。配膳、下膳に関しても通常店舗と同様である。最大のメリットとしては支払い手段によるスタッフの手間と時間が軽減することぐらいか。

 次に、セルフ型店舗を消費者目線で検証してみると、松屋はランチタイムなど混雑時における着席率の向上がうかがえる。トレイの下膳を客が対応することにより、回転率アップの効果がかなり大きいといえる。

 セルフスタイルで客の負担が増す分、通常店舗に比べて料理が10円安く提供されるのも特徴的だ。中には丁寧な接客やフルサービスを求める客層もいるだろうが、安さや早さのニーズも高いだけに、素早く入店できて10円でも安く食べられるセルフ式を選択する客は増えるだろう。

 また、松屋のセルフ店舗は、横長のテーブル席に目隠しがあるため前の客の存在が見えることなく個別テーブルの感覚で着席することが可能。これは女性客に配慮した試みだ。机を拭くためのダスターも使用前・使用後と区分けされた状態で各座席や座席端のコーナーに用意されており、衛生面においても好感を持てる仕組みだ。

 かたや大戸屋は、今回訪問した店舗ではオーダータブレットやセルフレジを除けば通常店舗とあまり変わったという印象を受けない。実際、私が訪問した時も高齢夫婦がタブレットでの注文ができず、通常のメニューを持ってきてもらい、通常店舗と同様、店員に注文していた。

 新旗艦店としてオープンした際には、スタッフの負担軽減や客の利便性向上を図るとしつつも、「お客様とのタッチポイントは大切に残しておきたい」と説明していた大戸屋。どこまでをスタッフが対応し、どの部分をお客様にゆだねるのか、まだ試行錯誤中なのだろう。席から調理する様子が見えるオープンキッチンも初めて導入したが、すべての席から見えるわけではなく、大きな特徴とはいいにくい。

 両社とも特定店舗の売り上げを発表していないため、セルフ店舗単独における効果はまだ見えない。セルフ店舗に限れば、女性の取り込みには一定の成果が上がっていると感じたが、客にとって真のベネフィットになり、来店動機につながっているかというと、両社ともまだ模索の段階という印象だ。

 ただ、セルフ型店舗の可能性は徐々に高まっている。東京オリンピックを見据え、外国語に対応した食券購入機やオーダータブレットの導入もその一例だが、今後、ロボットやAI(人工知能)を駆使したさらなる自動化・省力化が実現できれば、値引きなどの顧客還元も進むかもしれない。

 人手不足の打開策であると同時に、多くの客に選ばれる価値のひとつとして、外食チェーンのセルフ型店舗がどこまで進化するか。いまはその過渡期といえる。

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