エイプリルフール企画を行なう企業に畏敬の念を感じる理由

エイプリルフール企画を行なう企業に畏敬の念を感じる理由

レバンガ北海道のツイート

 4月1日はエイプリルフール、嘘をついてOKな日! どんな嘘をつこうかワクワクしていたのは小学生だけではない。多くの企業や団体も、同じようにネットにネタを提供するのが近年では恒例となっている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、企業にとってのエイプリルフール企画について考えた。

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 ハトにピザを配達してもらう「ピザハト」をピザハットが開始! 劇団四季がリアルなジュゴンが登場する『リトルマーメイド』ならぬ『リアルマーメイド』を上演! キングジムがAI搭載「テプラ」開発! 実に夢に溢れた商品・サービスだが、これは毎年数多くの企業・団体がネットで行なう「エイプリルフール企画」である。

 これらの企画者には畏敬の念を感じざるを得ない。というのも、競争があまりにも激し過ぎ、話題となる企画数は限られるからである。それなのにそれなりのカネをかけ、各社毎年やり続ける根性に感服するのである。

 ネットにネタを提供する側からすれば「競争相手が少ない日に渾身のネタをブチ込む」方が目立つ。その意味でもはやエイプリルフールはPRには向いていない日なのだ。

「情報発信の時期」についてもう一つ。4月1日から数日は、新社会人・新入生に訓示めいたことを述べる者がネットには増殖する。「キミの前に広大な道が広がっている」といった前向きなものも多いが、「嫌になったら逃げてもいい」といったものも含まれる。訓示は、毎年成人式、卒業シーズンにも同様に大発生するが、訓示を述べるのであれば別の時が良い。

 2015年8月26日、鎌倉市図書館は、二学期の開始が死ぬほどつらい子どもは学校を休んで図書館に来るようツイッターで呼びかけた。そして「逃げ場所に図書館も思い出してね」と書いた。これが10万件以上のRT(引用)をし、テレビ等でも取り上げられた。

 新学期が開始する9月1日に子供達の自殺が増えることを見越したものだったのだが、今でもこうして思い出せるほど同図書館は「子供達に優しい図書館」「いいことを言う大人が勤務する図書館」というイメージをこの一発のツイートにより醸成することができた。同図書館はネットでウケることを企図しておらず、あくまでも自殺の多さに心を痛めああいったツイートしたのだろうが、狙ってやるのならばわざわざ競争相手の多い日にやる必要はない。

 エイプリルフール企画の話に戻るが、効率の問題に加え、単純に「寒い」ことが多いのである。企画段階では大盛り上がりだろうが、予想外に企画が滑った場合の担当者の心の持ちようを考えると、あまりにも危険な企画である。そのため数多くのサイトにかかわった私自身、エイプリルフール企画はやったことはない。

 バスケ・Bリーグのレバンガ北海道は雑誌風ニセコンテンツを作った。その中には“2人の男性選手同士が熱愛発覚!”という記事があり、これを紹介するツイートでは「一部週刊誌に報道されました件につきまして、両選手からは『相手は仲の良い友人の一人』と聞いております」とあった。面白い! と高く評価する声も多数あったが、同性愛者差別の意図を感じた人もいたようで、同チームのツイッターには抗議が多数寄せられた。さらには、当の同性愛者からこうした批判をして問題化するのにはうんざり、といった声も出た。

 ジョークのセンスがない人がエイプリルフール担当にさせられたのであれば、それこそ「逃げてもいいんだよ」とその人に言ってあげたいぐらいである。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2018年4月20日号

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