ドル/円は材料不足で、105円を突破しての上昇トレンド形成は困難=外為どっとコム総研

ドル/円は材料不足で、105円を突破しての上昇トレンド形成は困難=外為どっとコム総研

外為どっとコム総研の研究員、石川久美子氏(写真)は、「9月の日米政策決定会合を通過し、ドル/円の方向性を決めるようなメインテーマが不在になってしまった。当面は、その都度浮上した材料によって価格が神経質に動く展開となりそうだ」と見通している。

 外為どっとコム総研の研究員、石川久美子氏(写真)は、「9月の日米政策決定会合を通過し、ドル/円の方向性を決めるようなメインテーマが不在になってしまった」と現在の相場をみている。米大統領選、ドイツ銀問題、Brexit、ECBのテーパリング問題と材料山積に見えるものの、個々の材料に対する市場の反応は限定的に過ぎない。「当面は、その都度浮上した材料によって価格が神経質に動く展開となりそうだ」と見通している。

 ――ドル/円は、1ドル=103円台に乗せてきた。当面の見通しは?

 現状は、9月の米FOMC、日銀の政策決定会合が終わって、メインテーマが不在の状況だ。米大統領選、ドイツ銀問題、Brexit(英国のEU離脱)、ECBのテーパリングなど、気になる材料はあるものの、主役として市場の方向性を決めてしまうほどの力がない。

 米大統領選に関しては、候補者討論会などを通じ、トランプ氏の支持率が急激に上昇すれば、金融市場全体のリスク回避ムードを強める材料になり得る。また、一方で、クリントン氏の支持率が大幅に上昇し、「トランプ大統領実現リスクが消滅」と受け止められる事態になれば、リスク要因が消えた事を好感する形でドル/円にとっては上昇圧力となり得る。しかし、両氏の支持率は長く拮抗しており、そうしたシナリオが実現する可能性は高いとは言えない。この先もクリントン氏とトランプ氏の支持率が拮抗し続ければ、大統領選挙の結果が出るまで、「小さい材料」となり続けるだろう。

 ドイツ銀の問題も米司法省がMBSに絡む不正販売で課す巨額の制裁金の額が想定よりも小さくなりそうだとの報道が出たことで、ユーロ不安の動きは一旦落ち着いたが、再燃する可能性はある。ただ、ドイツ銀の経営不安は今に始まったものではない。過去にも話題になっては消えてきた歴史がある。また、メルケル首相は現時点でドイツ銀への公的支援の可能性を否定しているが、本格的にドイツ銀が破たんする可能性が高まった場合には支援に動かざるを得ない、というのが市場の大方の見方だ。こうした状況下で、この件に関する危機感が長続きするとは考えにくいと言える。

 また、Brexitのプロセス開始の申請も2017年第1四半期であり、まだ先の話だ。ECBのテーパリング開始についても17年3月までの緩和策を延長するかどうかなので、これから出る欧州の経済指標次第の話で、今すぐに何か決定的な変化が起こる可能性は低い。

 これらを鑑み、何かのきっかけでドル/円が動いたとしても、その日だけの動きであったりして、トレンドが出るような動きにはならないと考えられる。104円台に乗せた動きも、円ロングポジション(ドル売り・円買い)の巻き戻しの動きが中心で、積極的にドルを買い上げるような動きではないと見る。

 当面の予想レンジは1ドル=99円〜104円台半ば。円ロングが溜まっているため、ドルの上昇時は値動きが軽くなるが、105円に乗せるほどの力はないと考える。

 ただし、先ほど可能性が低いとした「米国でトランプ大統領が誕生するのではないか」という不安が非常に強くなるような場合は、ドル/円は急落しよう。下げに勢いがつけば、1ドル=95円をめざすようなドル安もあり得る。一方で、ほとんど可能性がないとみられている11月の米利上げが実施される可能性が取りざたされれば、105円へ乗せてなお上値を伸ばす事も考えられる。

 ――ユーロ/ドルは?

 ユーロ/ドルにとって、現状は米大統領選関連報道の影響をほとんど受けていない。ドル/円相場では、トランプ・リスクは株安を経由して円高に結びついているが、ユーロ/ドルの株連動性は低く、影響は限定的だ。

 一方、ユーロサイドの材料は、ECBのテーパリング、Brexitなど先の話が多く、継続的な材料とはなりにくい。

 したがって、方向感がつかみづらく、6月の高値・安値の水準である1ユーロ=1.09ドル〜1.14ドルの間でもみ合う展開を予想する。

 ――その他、注目の通貨ペアは?

 米大統領選挙が接近し、トランプ・リスクにストレートに反応しているメキシコペソの動きに注目している。

 9月にトランプ・リスクが高まった際には、メキシコペソが大幅に売られた。反対に、第1回の討論会でクリントン氏が有利と伝えられた時に、一番値上がりしたのはメキシコペソだった。大統領選挙の動向を睨み、最も分かりやすく影響を受ける通貨として注目している。

 ペソ/円は現在1ペソ=5.4円近辺だが、9月には5.0円まで下落した。トランプ・リスク後退の場面では、5.6円まで戻る可能性がある。一方、トランプ・リスクが高まった場合に、市場のリスクオフムードなどが急激に強まるようならば、5.0円を割れも視野に入る。流動性が低い通貨であるがゆえに、4.5円辺りまで大きく下げる事も想定しておきたい。

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