LNG燃料船、普及進むか 立ち遅れた日本、厳しくなる排ガス規制へまったなし

LNG燃料船 普及も日本立遅れ

LNG燃料船、普及進むか 立ち遅れた日本、厳しくなる排ガス規制へまったなし

LNG燃料船、普及進むか 立ち遅れた日本、厳しくなる排ガス規制へまったなし

川崎重工が計画した大型LNG燃料コンテナ船。太平洋往復横断も可能な航続距離があり、バックアップ燃料として重油も利用できる(画像出典:川崎重工業)。

船舶の燃料として、LNG(液化天然ガス)を使用する動きが加速しつつありますが、日本はすでに立ち遅れている状態といえます。どうしてこうなったのでしょうか。またその課題とはなんでしょうか。

環境対策の切り札「LNG燃料船」、立ち遅れた日本

 石油(重油)に比べ環境に優しいとされるLNG(液化天然ガス)。これを使用した「LNG燃料船」というものがあり、いま世界各国で導入、普及が加速しつつありますが、日本ではその動きが遅れています。

 2016年9月上旬、ハンブルク(ドイツ)にて、日本郵船と三菱商事およびフランスのエネルギー大手、エンジー社による合弁企業「Gas4Sea」が、欧州における船舶を対象としたLNG燃料供給事業の開始を表明しました。また、国土交通省も船舶へのLNG燃料供給システム確立を目指し、横浜港を対象に供給設備の整備検討を開始。三井物産とロシアのガスプロムも、船舶用LNG燃料に関する事業を共同で立ち上げると表明しました。いずれも、ようやく具体的な動きが本格化したといったところです。

 しかしLNG燃料船の建造については、環境先進国の北欧をはじめとする欧州諸国やアメリカに比べて、「日本では日本郵船が手始めに港で使うタグボート(船舶やはしけなどの水上構造物を、押したり引いたりするための小型船)を建造したばかりで、立ち遅れているといわざるを得ない」(海運会社)のも事実です。

 重油にかわりLNGを船の燃料として使うことは、早くから「環境対策としては絶対的な切り札」(同)とされていたにも関わらず、なぜ日本は立ち遅れてしまったのでしょうか。

「欧州に先駆けるか?」と注目を集めた日本 しかし…

 かつて日本においても、LNGを燃料にするフェリーに注目が集まったことがありました。2009(平成21)年12月、商船三井が発表した次世代船構想「船舶維新」シリーズにおいて、その次世代フェリーに採用するとしたのがLNG焚きエンジンだったからです。

 このとき発表された構想によれば、さまざまな省エネ対策を加えて「CO2は50%、NOX90%、SOXは98%から100%削減できる」、つまりNOX(窒素酸化物)、SOX(硫黄酸化物)がほぼ完全に除去できるという優れもので、同社は「5年後にはLNG焚きの主機関を持つフェリーを登場させる」としていました。

 この発表が注目を集めた理由は、ほかにもあります。というのも商船三井グループは、「さんふらわあ」ブランドで知られる日本最大級の長距離フェリー企業群を傘下に置き、当時、それらの会社は軒並み運航船の新造代替を検討していたからです。すなわち、環境先進国である欧州に先駆けて、LNG焚きフェリーが日本で実現するのも時間の問題と見られたためです。

 そののち、同社は5〜6隻のフェリー新造発注へ動き始めたのですが、最終的にLNG燃料船の計画は見送られてしまいました。

LNG燃料船で先駆けたかもしれない日本、外れた読み

 計画が見送られたことについて、グループのフェリー会社は「構想当時は原油価格が急速に上昇、船の燃料である重油の価格も同じテンポで上昇しており、LNG焚きエンジンへの投資は十分に回収できるという計算が成り立ちました。しかし新造船の発注検討時期に差し掛った2010年以降、原油価格が値下がりに転じましたので(計画は見送りになった)」とコメントしています。

 また、船舶用エンジンメーカーによれば「燃料として、環境性の高い低硫黄の重油に比べればLNGは10%から20%、調達コストが安い」ものの、「LNG焚きエンジンを採用するには、現有船に比べて2倍から3倍の大きさの燃料タンク設置が必要なうえ、再液化装置などエンジン以外の設備投資も必要」とのこと。

 つまり原油価格の下落により、高価な低硫黄重油と安価なLNGとの差額でまかなおうとしていた初期投資費用の回収見込みが立ちにくくなった、というわけで、これがLNG燃料船の新造計画が見送られた最大の理由のようです。

 そのうえ、船へのLNG燃料補給には、タンクローリーを使用した陸上からの供給システムや、LNG燃料供給船を使っての海上からの供給など、さまざまな方式が検討されていますが、これには港湾当局側の受け入れ態勢や安全対策などの検討も必要です。

 これらの理由から、結局のところ日本のLNG燃料船は、先述した長距離フェリーの代替期に間に合いませんでした。

もはや「待ったなし」の日本

 2016年現在、海運技術の向上や海洋汚染の防止などを目指す国連の専門機関である国際海事機関は、SOX(硫黄酸化物)の全海域規制を検討しており、早ければ2020年にも実施される見込みです。

 国際海事機関による規制を待つまでもなく、バルト海や北海、北米沿岸海域などにおいては、すでに船からの排気ガス規制が施行されています。

 たとえばバルト海域を走るカーフェリーとして、すでにLNG燃料船が就航しているのみならず、新造船ではLNGエンジンが一般的なものとして採用され始めています。世界最大のクルーズ会社であるカーニバル・コーポレーション(アメリカ)は、数隻の大型クルーズ船に重油とLNGによるデュアルフュエル(二元燃料)エンジンの採用を決めました。ほか、各国で自動車運搬船のエンジンとして採用されつつあります。

 これら世界の潮流に対応し、日本におけるLNG燃料船の普及を本気で推し進めるには、もはや待ったなしの時期に来ているといえるでしょう。

 また、エンジン自体の開発もさることながら、もっとも肝心なのは、船への燃料供給体制です。入港した港でLNGの供給を受けられなければ、船は止まってしまいます。まずはフェリーのように使う港が決まっている船種から、港やガス会社が協力して安全性が担保された供給体制を確立することが必要です。世界中の港に寄港する一般商船の場合、多くの港で供給体制が整備されなければ、LNG焚き船の普及は進まないでしょう。

 そうしたなか現在、先述のとおり三菱商事や日本郵船、三井物産などが動き始め、遅まきながら日本企業によるLNG燃料船への取り組みが本格化しつつあります。日本中、ひいては世界中の港にガソリンスタンドならぬガススタンドやガス燃料供給船を整備することは、海運、造船、エンジン業界ばかりでなく、海事業界総ぐるみの壮大なプロジェクトになるでしょう。今後の展開が注目されます。

 なお、LNGを輸送するタンカーは、その多くが輸送中に気化した積み荷のLNGを燃料に使っています。

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