まるでCG? 異形の駆逐艦「ズムウォルト」まもなく就役 特異な姿、背景にその任務

CGのような米駆逐艦が就役へ

まるでCG? 異形の駆逐艦「ズムウォルト」まもなく就役 特異な姿、背景にその任務

まるでCG? 異形の駆逐艦「ズムウォルト」まもなく就役 特異な姿、背景にその任務

「ズムウォルト」の異様な姿。アメリカ海軍では「誘導ミサイル駆逐艦(guided - missile destroyer)」と分類されている(写真出展:アメリカ海軍)。

2016年10月、これまでの水上艦とは一線を画す姿をした、アメリカ海軍の駆逐艦が就役します。まるで、ひと昔前のCGがそのまま実物になったようでもある異様な形、背景にはその艦の任務がありました。またその姿、日本でしばしば見かけるようになるかもしれません。

任務に必要なステルス性

 アメリカ海軍の最新鋭ミサイル駆逐艦「ズムウォルト」が2016年10月15日(土)、就役します。

 この「ズムウォルト」は、何もかもが異様です。海に浮かぶその姿は、ひと昔前の低予算映画におけるCGかと思えるようなもので、不気味さすら感じさせ、まるでこの世のものとは思えません。

 その不可思議なシルエットは、レーダーによって探知されにくいよう、ステルス性を強く追求したがゆえの結果です。「ズムウォルト」は、大きな脅威にさらされる可能性の高い敵地の沿岸近くに展開し、内陸部へ対してその火力を叩き込むことに特化した艦艇。その姿を「見せない」ようにすることで、生存性を確保する必要があったのです。

 本来「ステルス」とは、相手に発見されにくいようにする技術やメカニズムを意味します。よって古くからある「迷彩塗装」も、立派なステルスのひとつです。現代の艦艇は、海上で背景へ溶け込みやすい灰色を基調とした塗装が施されていますが、これも単なる灰色ではなく、海域によって微妙に異なる海の色にあわせて、ライトグレーであったりもう少し暗い色調だったりと、国によってさまざま。かつてレーダーがまだ未発達な時代には、敵の目視照準を妨げるために、錯視を引き起こしやすいゼブラ柄の迷彩なども行われました。

ロシア生まれ、アメリカ育ちのステルス技術 艦艇で実用化が遅れたワケ

 特にレーダー被探知距離を大幅に短くする現代的なステルスの理論は、意外にもロシア人物理学者のウフィムツェムによって確立されました。ウフィムツェムはレーダーの反射を制御しこれが計算可能であることを発見しますが、本国ソ連(当時)ではまったく注目されませんでした。そのため機密指定すらされず、のちに敵国アメリカで注目を集めることになります。

 ロシア人物理学者ウフィムツェムの発見は、1981(昭和56)年に初飛行したアメリカ空軍のロッキードF-117「ナイトホーク」攻撃機という形で初めて実用化されます。そして皮肉なことに、ロシア発の技術で設計されたステルス機F-117は、ロシア製レーダーをほぼ完全に無力化してしまいました。

 飛行機のステルス化に成功したアメリカのロッキード社(現・ロッキード・マーチン社)は、引き続きアメリカ海軍と共同で艦艇のステルス化を目的とした「シー・シャドウ」というステルス実験艦を開発。その有効性が確かめられます。

 しかし艦艇のステルス化は、軍用機のようにすぐさま“突然変異”が生じるようなことはありませんでした。1990年代には、早くもステルスを重視した艦艇の建造計画が立案されるものの、冷戦構造の崩壊によって「アメリカ一強」の時代になり、軍縮の流れからその計画はキャンセルになってしまいます。

 そのため「艦艇のステルス」は、たとえば1990年代から就役を開始したアメリカ海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦に、レーダー反射を制御するため直線部分が多く取り入れられるなど、航空機のそれに比べゆっくり、少しずつ実用化されていきました。

「ズムウォルト」は日本へ 各地で見られる可能性も

「ステルスの理論」は、これまで数千年にわたり蓄積されてきた、「海上を航行するための理論」とはまったく無関係です。そのためステルスをあまりに重視すると、風や波による転覆を防ぐ「復原性」などの航行性能や使い勝手、または多様な任務を可能とする汎用性など、「船としての機能」を犠牲にしなくてはなりませんでした。また、艦艇のステルス化は航空機ほど絶大な効果は無いとみられるため、優先度がそれほど高くなかったことも大きいといえます。

「ズムウォルト」もまた、そのステルス性のための「犠牲」をともなっており、現行のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦に比べて対空戦闘能力、対潜戦闘能力が劣るなど、汎用性はかなり割りきっています。ただ一方で、2門備えている大口径の主砲155mm先進ガンシステム(AGS)や、80セルの先進垂直発射システム(AVLS)を搭載するなど、「対地攻撃重視」という従来の艦艇とはまったく違った思想で設計されており、それがあの異様な姿を現実のものとした、ともいえます。

 時期は未定ですが、「ズムウォルト」は将来的に長崎県佐世保市の在日米軍基地へ配備されることが決まっています。米軍の艦艇は友好のため、各地へ寄港することが多いので、奇々怪々な姿で日本中を驚かせる日は、そう遠くのことではないかもしれません。

【写真】異形の駆逐艦「ズムウォルト」

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