戦車が100周年 危うく「トイレ」呼ばわりの可能性も?

戦車が100周年 危うく「トイレ」呼ばわりの可能性も?

トラファルガー広場に展示された、史上初の実用戦車であるMk.I(レプリカ)。1916年9月15日に初めて実戦投入された(写真出典:イギリス陸軍)。

2016年9月、戦車が実戦投入100周年を迎えました。そのあいだ、さまざまな戦車が登場していますが、実は100年前と、基本的にはあまり変わっていません。また、この「陸の王者」ともされる戦車、それに代わる存在は今後、誕生するのでしょうか。

戦車の母国イギリスで生誕100年記念イベント開催

 2016年9月15日(木)、「戦車」が第一次世界大戦における「ソンムの戦い」(フランスで行われたイギリス・フランス軍対ドイツ軍の戦い)にて、史上初めて実戦に投入されてから100周年を迎えました。戦車の母国であるイギリスでは、陸軍が主催する戦車生誕100年記念セレモニーが執り行われ、ロンドンのトラファルガー広場において当時の「Mk.I(マークワン)戦車」(レプリカ)が姿をあらわしました。

 同セレモニーにおいてスピーチした、マイケル・ファロン英国防長官は「近代戦を一変させてしまった」として、Mk.I戦車の意義を讃えています。

「戦車」という語は、英語の「タンク(Tank)」の訳語として使われています。日本語では、近世以前の「戦闘馬車(チャリオット)」も戦車と呼ばれていますが、英語では明確に区分されています。「タンク」はその名の通り、液体を貯蔵する容器としてのタンクに由来しており、これは戦車開発時のイギリスで機密保持のために使われた名称が、そのまま戦車を表す語として定着したものです。

 当初は水運搬車「ウォーター・キャリアー(Water Carrier)」とも呼ばれていたため、少しだけ歴史の歯車が食い違っていたならば、戦車は「W.C.(トイレ)」などという不名誉な名前になっていたかもしれません。

現在の主流はイチローのような戦車

 最初の戦車であるMk.I戦車は、無限軌道(いわゆる「キャタピラ」)によって不整地や塹壕を踏み越える機動力、強力な火砲や機銃といった高い攻撃力、そして被弾しても容易に撃破されない装甲による高い防御力をあわせ持ち、当時は非常に困難だった敵機銃陣地を突破する“最終兵器”として誕生します。

 そして、同じく第一次世界大戦末期の1917(大正6)年に誕生した、フランス製のルノーFT-17戦車において無限軌道をもつ車体と回転砲塔に主砲という形が確立され、以降99年間に渡って戦車はルノーFTの特徴を引き継ぎ続けています。

 たとえば陸上自衛隊の最新鋭戦車である10式戦車は、「凄い機動力と凄い攻撃力と凄い防御力を持ったルノーFT-17に、すごいネットワークシステムを組み込んだ戦車」と言い換えることができるかもしれません。

 戦車100年の進化の過程においては、たくさんの主砲を搭載し、ひたすら攻撃力を重視した「多砲塔戦車」や、ともかく撃破されないことを第一としたばかりに動くことさえ困難になった「超重戦車」のような変わり種も誕生しました。しかしこうした戦車は非常に使い難かったためことごく淘汰され、現在では「機動力」「攻撃力」「防御力」というみっつの要素がバランスよく優れた、野球のイチロー選手のような「主力戦車(MBT)」が主流になっています。

 走攻守あらゆる面で優れる戦車は、地上において最強の兵器であり、「陸の王者」として讃えられます。戦車がそこに存在するというだけで、味方の兵士にとっては頼もしい助っ人となり、相手にとっては最悪の敵となり、その士気に与える影響は絶大です。

円熟期を迎えている戦車 新たな「陸の王者」登場は?

 現在では対戦車ロケット弾やミサイルによって、歩兵が戦車を撃破することも不可能ではなくなっていますが、仮に走攻守いずれかがイチロー選手に匹敵する3人を揃えても、イチロー選手の代わりにはなり得ないのと同様に、戦車の優位を帳消しするには至っていません。敵戦車に対抗するには、それと同じように攻撃を跳ね返す防御力と、敵を粉砕する攻撃力、そしてさまざまな地形を走破できる機動力を持った兵器、すなわち味方の戦車が必要であり、「戦車への最良の対抗手段は戦車である」と認識されています。

 1991(平成3)年の、ソ連崩壊による冷戦構造の終焉によって、大国同士が全力で殴りあう世界大戦の危機は過去のものになりました。その結果、多くの国は戦車の配備数を大幅に削減しており、大量のモスボール(再使用を考慮し極力劣化を防いで保管すること)された車両を抱えています。

 現在、各国の軍はこうしたモスボールされた車両を、センサーの追加やコンピューターの載せ替えといった、情報処理能力を重点においた近代化改修を行ったうえで、退役する車両と入れ替え再就役させており、そこからもうかがえるように、「戦車」という兵器自体はほぼ完成され円熟期を迎えています。しかし、戦車に代わる新しい「陸の王者」は、いまのところ誕生しそうにありません。

【写真】強烈な発砲炎、陸自最新戦車

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