サーブ社、防衛省へ何を売る? クルマはすでに別会社、現商材こそ「本業」

サーブが日本防衛省に売込み

サーブ社、防衛省へ何を売る? クルマはすでに別会社、現商材こそ「本業」

サーブ社、防衛省へ何を売る? クルマはすでに別会社、現商材こそ「本業」

1978年に発売され、日本国内でも人気を博したサーブ900。写真は86年に発売されたカブリオレモデル(写真出典:artzzz/123RF)。

自動車メーカーとして一定の年齢層以上にはお馴染みのサーブ社ですが、現在クルマとは無縁で、そして日本の防衛省に売り込みをかけているそうです。何を売り込むつもりなのでしょうか。

クルマの「サーブ」、まもなく消滅

 北欧スウェーデン王国に本拠を構える「サーブ(SAAB)社」と聞けば、おそらく多くの日本人にとっては自動車メーカーとしてのイメージが強いのではないでしょうか。特に日本では、バブル景気時代に“通好み”のクルマとして根強い人気を誇りました。

 しかし2017年をもって自動車の「サーブ」ブランドは消滅します。そしてあらたに「NEVS」ブランドとして再出発することになっています。

 とはいえ、企業としての「サーブ」は健在です。もともとサーブの本業は航空防衛産業であり、クルマの「サーブ」は現在、ブランド名だけを引き継いだ別会社が製造、販売しているのです。

「SAAB」はスウェーデン語で「スウェーデン航空機株式会社」を意味する語の頭文字をとったものであり、戦闘機の開発製造を目的に創業されました。その本家たるサーブはいま、日本への市場拡大を目指すべく防衛省への売り込み活動を活発化させています。サーブは防衛省へ何を売りたいのでしょうか。

航空・軍需企業としてのサーブ、防衛省に何を売る?

 サーブ製航空機の、日本国内での導入事例としては、1950年代に旧防衛庁がサーブ「サフィール」を短距離離陸実験機として1機、調達しています。また日本エアコミューター(JAC)は、36席の小型旅客機サーブ340を9機保有し現在、就航中です。国土交通省はより大型のサーブ2000を2機保有しています。しかしながらサーブ340、サーブ2000とも生産は終了しました。

 現在サーブにて生産中の航空機としては、ベストセラー戦闘機「グリペン」の発展型「グリペンE」があります。「グリペンE」は、航空自衛隊のF-4EJ改や未改修型F-15Jよりもはるかに戦闘能力の高い機種ですが、機体自体が小さくより大型の機体が欲しい航空自衛隊機としては不向きであり、F-35Aが勝者となった前次期主力戦闘機選定においても候補機とはなりませんでした。

 サーブは航空機以外にも「C4I(指揮・統制・通信・コンピューター・情報)」すなわち艦艇、車両、早期警戒機、電子情報収集機、戦闘機、無人機などに搭載するソーナーやレーダーといった各種センサー、通信・情報処理システムも開発・生産しており、陸海空宇宙ならびに民間分野における様々な機器の販売を手掛けます。

 むしろ航空機自体よりも、将来の自衛隊に配備される兵器の「中身」、こういった各種「C4Iシステム」の開発に参画したいというのがサーブの狙いだといえます。

育ての親は「隣の軍事大国」

 日本は護衛艦や潜水艦、車両を独自開発しており、また航空機にしてもYS-11EBやEP-3、EC-1といった電子情報収集機、電子戦機の退役が控えており、これらの搭載システムは、世界でも有数といえる大きな市場があります。

 またサーブは、アメリカ空軍次世代練習機T-Xの候補として、ボーイングと共同で練習機を開発しました。もしサーブ・ボーイングT-Xが採用となれば、航空自衛隊T-4練習機の後継機として選定される可能性があります。そうでなくとも、T-4後継練習機搭載システム開発への参画も考えられます。

 さらに2016年に防衛省が実施した、F-2後継機開発に関する情報提供要求にも応じてており、おそらくは国際共同開発となるであろう次世代機の開発への参画を狙います。

 スウェーデンは人口1000万弱の小さな国ですが、第二次世界大戦時はドイツとソビエト連邦という二大国に挟まれながらも、両国との交戦さえ辞さず中立を貫きました。そののちの冷戦においても、特にソビエト連邦からの脅威に対抗し続けました。1937(昭和12)年に創立したサーブ社は、こうしたスウェーデンの厳しい国際情勢のもと、多くの軍用システムの開発経験を蓄積し、高い技術力を有するに至ります。

 スウェーデンは現在もなお、ロシアの潜水艦や軍用機が領海・領空に接近し、たびたび戦闘機などがスクランブル発進するという、日本と似たような脅威を抱えています。そのスウェーデンのサーブ社が開発するシステムの導入ならびに連携強化は、日本にとっても大きな利点があると言えるかもしれません。

【写真】JACにも「サーブ」

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