残りわずかYS-11、輸送機型が退役 貴重な飛ぶ姿をさらに貴重にしている理由とは?

残りわずかYS-11、輸送機型が退役 貴重な飛ぶ姿をさらに貴重にしている理由とは?

2017年5月28日、美保基地航空祭にて自身最後の飛行展示に臨むYS-11P 152号機(画像:航空自衛隊美保基地)。

2017年現在、国産機YS-11を運用するのは空自のみです。うち1機が5月29日に退役となり、その飛ぶ姿を見ることはますます難しくなりましたが、実は輪をかけて貴重にしている理由があります。

YS-11最後の輸送機タイプが引退

 2017年5月29日(月)、航空自衛隊は国産輸送機YS-11Pのラストフライトを実施し、同機を退役させました。

 YS-11は、日本航空産業の総力を挙げて開発した国産の双発プロペラ(ターボプロップ)旅客機であり、1962(昭和37)年に初飛行しました。戦後復興の象徴として日本国内外を含むエアラインや航空局、海上保安庁や航空・海上自衛隊において運用されましたが、2006(平成18)年には国内最後の定期便が運航終了、2014年には海上自衛隊から全機が退役しており、2017年現在では航空自衛隊が国内最後のYS-11運用者になっています。

 今回ラストフライトを行い引退したYS-11Pは、日本国内において最後まで残っていた人員輸送型のYS-11であり、基本的には旅客機型と大差ありませんが、キャビン前方にVIP用のラウンジ座席が設けられているなど独自の改修が施されています。

 本機が製造されたのはなんと1965(昭和40)年であり、現在、陸海空自衛隊が保有するおよそ1500機の現役機のうち2番目の長寿で、実に50年超にもわたり国防に尽力し続けた功労者です。今後は小牧基地(県営名古屋空港)に建設中の「あいち航空ミュージアム」の展示機として第二の人生を送る予定になっています。

その飛ぶ姿はもう見られないのか?

 航空自衛隊のYS-11P退役によって、もうYS-11が飛行している姿を見ることはできなくなってしまったのかというと、実はそんなことはありません。何を隠そう自衛隊機1500機の最古参現役機は同じ1965年に製造されたYS-11なのです。

 現在航空自衛隊に残っているYS-11シリーズはすべて入間基地(埼玉県狭山市)に配備されており、飛行点検機YS-11FC、電子戦機YS-11EA、電子偵察機YS-11EBの3タイプが活躍中です。

 YS-11FCは航空基地などに設置された、自衛隊機ないし民間機の航行に使用する航空保安無線施設の点検を行う試験機であり、最古参機もこの機種です。また同機は、毎年11月3日の文化の日に開催される入間基地航空祭において飛行展示を実施するのが恒例行事になっています。しかしながらすでに後継機となるセスナ社製「サイテーション・ラチュード」の採用が決まっているため、退役を目前に控えている状態です。

 一方でYS-11EAとYS-11EBはかなり特殊なタイプで、航空自衛隊の公式WEBサイトにおける「主要装備」のなかにもなぜか掲載されておらず、一般メディアにもまず登場しません。そのため、航空専門誌の読者や入間基地で飛行機ウォッチングを楽しむマニア以外には、ほとんど知られていない存在です。それというのもYS-11EAとYS-11EBは、自衛隊機のなかでも特に機密度の高い任務を与えられているためです。

機密のベールの向こうで現役稼働中の2機、その役割は?

 YS-11EAは「電子戦訓練機」と呼ばれ、レーダーなどを無効化(ジャミング)するといった電子戦の訓練を行う機種です。もう一方のYS-11EBは、そうした電子戦などを効率的に進めるために、平時から他国の電波情報を収集する「シギント」と呼ばれる任務を行う電子偵察機で、任務の性格上、他国の領空ギリギリにまで接近することもあり、2014年には中国軍のSu-27戦闘機に異常接近されたことで外交問題にもなりました。

 現代の戦闘はレーダーを中心とした「電子の戦い」ですから、これに従事するYS-11EAとYS-11EBは機体自体こそ旧式ながら、もっとも重要な任務をこなしているともいえるでしょう。

 YS-11EAとYS-11EBは、YS-11FC退役後もしばらく現役である見込みですが、その特性上、航空祭で展示されることは望み薄なので、YS-11FCが現役である今後何年かのうちに開催される入間基地航空祭が、現実的にYS-11の飛行する姿を楽しむことのできる最後のチャンスになります。入間基地は幸い都心からアクセスしやすい場所にあるので、興味のある人は国産の名機YS-11の雄姿を目に焼き付けに訪れてはいかがでしょうか。

関連記事(外部サイト)