北朝鮮空軍は匙を投げられたのか 加速するミサイル開発の一方で空軍が旧態依然なワケ

北朝鮮空軍は匙を投げられたのか 加速するミサイル開発の一方で空軍が旧態依然なワケ

朝鮮戦争当時の新鋭戦闘機、ソ連製MiG-15。写真はポーランドがライセンス生産したLim-2だが、北朝鮮空軍塗装で展示されているもの(関賢太郎撮影)。

2017年5月、北朝鮮は毎週のようにミサイル発射実験を繰り返し、その開発を加速させていますが、他方その空軍に関しては、目も当てられない状況と見られます。

ミサイル実験を断行する一方で

 2017年5月29日(月)早朝、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は3週連続になる弾道ミサイル発射実験を実施しました。北朝鮮はかねてより公然と核兵器開発およびミサイル開発を推し進めており、国際連合安全保障理事会決議を無視したその強硬姿勢は、東アジア情勢において大きな懸念材料になっています。

 また北朝鮮は国民皆兵制度をとり、男子に対して実に10年もの義務兵役を課し、北朝鮮陸軍だけでも100万以上の兵員と3500両の戦車を常備、その大多数を朝鮮戦争における停戦ライン、いわゆる北緯38度線の非武装地帯付近に配備していると推測されます。

 さらに北朝鮮海軍は2010(平成22)年、潜水艇から発射した魚雷によって韓国海軍の水上艦「チョンアン」を撃沈しました。その主力は小型艦艇であるとはいえ、ほかにも特殊部隊の輸送に使用されると見られている潜水艇を多数保有します。

 北朝鮮は以上のように、従来から保有する強力な陸海軍に、あらたに核戦力を加えようと企図しているわけですが、その一方で空軍だけは悲惨な状態で放置され続け、戦力としてほとんど機能しない状態に陥ってしまっているようです。

北朝鮮空軍の実態とそこに至ったシンプルなワケ

 北朝鮮空軍、正式名称「朝鮮人民軍空軍」は、全軍の航空機運用を一手に引き受けており、数の上では1000機もの航空機を保有、うち半数の500機を戦闘機が占める世界トップクラスの兵力を誇る空軍です。

 ところが500機の戦闘機のうち現代戦闘機といえる能力を持つ機種はせいぜいMiG-23とMiG-29のみであり、両機をあわせても100機に足りません。また1996(平成8)年にロシアよりMiG-29を購入し、1999(平成11)年にはカザフスタンより旧型のMiG-21bisを購入して老朽機の更新に当ててたのが最後、それ以降はまったく更新が行われていない状況です。

 驚くべきは最高指導者である金正恩第一書記が飛行場を視察した際に、朝鮮戦争において伝説的な活躍をした名機MiG-15bisの姿があったことです。おそらくもっぱら訓練用とは思われますが、いまだに現役であることが明らかになっています。

 実のところ北朝鮮軍内でもっとも充実した陸軍も、旧型戦車などが主力であることは変わらないのですが、ある程度頭数があればそこに存在するだけでも戦力となる陸上兵器とは異なり、航空戦力は「量で質を補えない」という特性があります。

 ゆえに航空戦力をきちんと機能させるには十分な資金を投じて航空機を導入、そして長い時間をかけて性能向上を続けてゆき、地上の迎撃管制やネットワークシステム、早期警戒管制機、空中給油機などを揃えなくてはなりません。

 さらに戦闘機パイロットひとり当たり1年間に約200飛行時間、最低でも80飛行時間の訓練を実施する必要があります。しかしそれも燃料不足から、年平均で数飛行時間しか飛べないと推測され、一説にはパイロットが南へ亡命することを防ぐために訓練時は意図的に燃料を減らしているともいわれます。皮肉なことに飛行訓練が行えないからこそ、各種の旧型航空機も何とか寿命を保っていられるものと思われます。

指導者すら匙を投げた? 歴史的航空機の「ショーケース」

 北朝鮮空軍は主に自国の防空を目的とした組織ではあるものの、米軍はおろか航空戦力の充実に積極的な韓国空軍にもとても太刀打ちできず、有効な航空作戦を行えないのが実態です。

 金正恩第一書記は空軍の輸送機を自ら操縦するほどの熱心な航空マニアであり、航空機自体には強い関心を持っているようですが、いまさら多少のことではどうにもならない空軍を近代化するよりも、核開発・ミサイル開発にリソースを投じたほうが合理的と判断しているのかもしれません。

 2016年9月、北朝鮮の元山において同国初となる国際航空ショー「元山国際親善航空フェスティバル」が開催されました。「世界最大の動く航空博物館」である北朝鮮空軍が保有する珍しい飛行機が楽しめるとあって、日本人も多く訪れたようです。

 今年2017年9月にも第2回目が開催される予定になっていますが、北朝鮮に落としたお金は当然ミサイルや核開発に使われること、外務省は渡航自粛を要請していること、また北朝鮮当局が日本人旅行者を外貨獲得の手段よりも人質外交に使ったほうが利益を得られると判断した場合、容赦なく拘束される恐れがあることを十分に考えておく必要があります。

 実際2017年5月13日(土)には、アメリカ人2名が「反朝鮮敵対行為」の容疑で北朝鮮当局に逮捕されました。軍用機が展示される「元山国際親善航空フェスティバル」の来訪者を拘束する際、北朝鮮当局がその容疑に困ることはないでしょう。

【写真】北朝鮮空軍における最高性能機、MiG-29(同型機)

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