70km/h超え! 世界最速エレベーター、どう実現? 「新幹線」などのノウハウ注入も

70km/h超え! 世界最速エレベーター、どう実現? 「新幹線」などのノウハウ注入も

世界最高速を記録したエレベーターのイメージ。かごの形は両端が丸みを帯びている(画像:日立ビルシステム)。

中国・広州の超高層ビルに納入される日立製のエレベーターが、世界最高速である分速1260mを記録しました。時速にして75.6kmという高速エレベーターは、どのようにして実現したのでしょうか。

1階から95階まで43秒

 日立製作所は2017年6月2日(金)、エレベーターの速度試験で、世界最高速となる分速1260m(時速75.6km)を記録したと発表しました。

 このエレベーターは中国・広州に立つ高さ530mの超高層ビル「広州周大福金融中心」に納入されるもの。速度試験は現地で行われ、エレベーターの公的認定機関である中国の「国家電梯質量監督検験中心」から正式な速度認定を受けたといいます。日立グループで、エレベーターの製造・販売などを手がける日立ビルシステム(東京都千代田区)によると、実運用でも最高で分速1200mを出し、1階から95階までおよそ43秒で上り切るそうです。

 世界最速のエレベーターは、どのような技術で実現したのでしょうか。日立ビルシステムに聞きました。

――分速1260mというスピードは、どのようにして実現できたのでしょうか?

 スピードそのものの要因は、かご(搬器)を吊るロープの軽量化、巻き上げ機に搭載されたモーターの出力大型化などが挙げられます。しかし、実現の大きなカギとなったのは、そのスピードに対応できる安全装置や制御装置を開発したことです。

――クルマでも急に止まれない速度ですが、どのようにして止めるのでしょうか?

 クルマのエンジンブレーキを効かせるように徐々に減速し、最後に、ロープの巻き上げ機のブレーキでロープを挟み込んで止めます。自転車のリムブレーキでタイヤを挟み込むようなイメージです。

騒音対策に高速鉄道の技術

――新たに開発された技術とはどのようなものでしょうか?

 揺れや騒音を抑える装置や、気圧の制御など、快適性を支える技術に新機軸が多く盛り込まれています。垂直方向にかごの走行を案内する「ガイドレール」が設けられているほか、かごの四隅でそのレールに接する「アクティブガイドローラー」と呼ばれる装置が、感知した振動を打ち消す働きをします。また、急激な気圧の変化による耳詰まりを軽減するため、かご内の気圧を制御しています。

 かごの形にも工夫があります。通常の箱型ではなく、上端と下端が丸みを帯びた「流線型」にすることで気流を受け流し、気流の乱れによる騒音を抑制しています。これは日立グループがもつ、新幹線をはじめとする高速鉄道の製造ノウハウを反映しており、鉄道車両の先頭形状を参考に、風洞実験をくり返して最適な形状を打ち出しました。

――「ギネス世界記録」への申請はしますか?

 その予定はありません。営業運転では分速1200mまでしか速度を上げないからです。このエレベーターは、「最高分速1200m(時速72km)」で受注したものですが、余裕をもって分速1260mまで耐えられるように設計しているのです。今回の記録は、さらなる高速化需要を見込んだ速度試験において、制御装置や安全装置に改良を加えたうえで樹立したものです。

※ ※ ※

 現在、「ギネス世界記録」に登録されている世界最高速エレベーターは最大分速1230m(73.8km/h)で、2016年に中国・上海の超高層ビル「上海中心大厦」(高さ632m)へ納入された三菱電機製のもの。それ以前は最大分速1010m(60.6km/h)で、2004(平成16)年に竣工した台湾・台北の「台北101」(高さ508m)にある東芝エレベータ製のものでした。

 日本のエレベーター大手3社で、今後も「速度競争」が加速していくのでしょうか。

エレベーターはさらに高速化? 三菱、東芝はどう出る?

 日立ビルシステム、三菱電機、東芝エレベータに、超高速エレベーター開発の今後について聞いたところ、3社とも口をそろえて「高いビルの案件があれば」という回答でした。

 というのも、ビルが高くなればなるほどエレベーターも高速化できるものであり、逆に高さがないと高速化は難しいのだそうです。また建物が高くても、途中で上のフロア用と下のフロア用にエレベーターを分割するような場合もあるため、さらなる高速化はそうした建物そのものの側の条件も整う必要があるといいます。

「『世界一高いビル、世界一速いエレベータ』というコマーシャルとしての価値を追求するビルもありますが、実際は『大容量で、ある程度速い』といった実用性の重視が世界的なトレンドといえます。エントランス階にいかに人を滞留させず、効率的に上層階まで運ぶかという点が求められます」(東芝エレベータ)

 エレベーターの業界団体である日本エレベータ協会(東京都港区)によると、「日本にはそれほど高いビルはなく、国内のエレベーターでは現時点以上の高速化は難しいでしょう。海外でより高いビルが立てられ、しかも直通のエレベーター需要があれば、スピードアップは考えられます」といいます。

 日立ビルシステム、三菱電機、東芝エレベータとも、そのような大型案件の受注獲得に今後も取り組むそうです。

【写真】世界最高速エレベーターが納入されるビル

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