「デゴイチあげます!」 引き取り手なければ解体も 全国の展示SL、維持はどれほど大変?

大分県由布市が市所有のD51形蒸気機関車「デゴイチ」の引き取り手を募集

記事まとめ

  • 大分県由布市が、市内の公園に保存・展示しているSL「デゴイチ」の引き取り手を募集へ
  • 車両は1944年製造のD51形1032号機で、現在は市内の湯布院中央児童公園で屋外展示
  • 劣化が激しく危険だが、抜本的な修繕は財政上難しいため、無償で譲渡するという

「デゴイチあげます!」 引き取り手なければ解体も 全国の展示SL、維持はどれほど大変?

「デゴイチあげます!」 引き取り手なければ解体も 全国の展示SL、維持はどれほど大変?

由布市が引き取り手を募集しているD51形1032号機(画像:pixta)。

大分県由布市が、市内の公園に保存・展示しているSL「デゴイチ」の引き取り手を募集します。しかも無償でもらってほしいといいますが、なぜでしょうか。こうした事例は全国的に相次いでいるようです。

抜本的な修繕にはウン千万円!

 大分県由布市が、市所有のD51形蒸気機関車、いわゆる「デゴイチ」の引き取り手を募集します。

 車両は1944(昭和19)年製造のD51形1032号機で、現在は市内の湯布院中央児童公園で屋外展示されています。市はこれを無償で譲渡するといい、2017年9月19日(火)から市のウェブサイトなどで募集要綱などを公開するそうです。由布市建設課に話を聞きました。

――なぜ譲渡するのでしょうか?

 劣化が激しく、安全面で課題があるためです。以前は子どもがSLの近くで遊べるようにしていましたが、現在は危険なことから立ち入り禁止にしています。解体も視野に対策を住民の方々と相談したところ「歴史的価値がある」「なくすのはもったいない」ということになり、譲渡先を探すこととしました。

――維持するのは難しいのですか?

 子どもが遊べるようなレベルするには、何千万単位の費用がかかります。近年はボランティアの方々に清掃していただいてもいますが、抜本的な修繕は財政上難しいと考えています。もしも譲渡先が決まらなかった場合は、やはり解体も含め検討しなければなりません。

――そもそもどのような目的で展示されていたのでしょうか?

 もともと1970年代に旧湯布院町営の「SLホテル」(編集部注:連結した寝台車を利用した宿泊施設)に活用され、その後、現在の中央児童公園に移設されました。駅から続く湯の坪街道沿いの地に移設されたことからも、観光資源のひとつという位置づけがあったと思います。ただ、このSLは当市を通る久大本線にゆかりのあるものではありません。

※ ※ ※

 由布市の担当者は「譲渡費用はいただきませんが、基本的には現状渡しで、移送費も取得者に負担いただきます。歴史的価値を活用いただけるところにもらっていただければ」と話します。

 このようにSLを展示している公園や公共施設は全国に多数ありますが、近年は由布市と同様に、譲渡あるいは解体する例が相次いでいるようです。

「補助金出します」でようやく譲渡決定も

 近年、街の公園や公共施設に展示されていたSLが譲渡あるいは解体された例は、静岡市葵区にある城北公園のD51形146号機、さいたま市中央区役所の9600形39685号機、長崎市中央公園のC57形100号機、福岡県行橋市民会館のD51形10号機などがあります。静岡市のSLは2015年に栃木県真岡市へ、行橋市のSLは2016年に福岡県直方市のNPO法人へ譲渡されましたが、さいたま市と長崎市のSLは2016年と2017年に、いずれも解体されています。

 このうち行橋市では「塗装などは定期的に行っていましたが、老朽化が激しく維持が困難になり、解体も視野に入れて引き取り手を募集しました。しかし希望者がなく、輸送費などに300万円の補助金を計上したうえで再募集し、ようやく決まった」(同市文化課)そうです。引き取った団体で修繕されているといい、「よかった」と話します。

 一方、長崎市は譲渡先を公募することなくSLを解体しています。同市みどりの課は「設置場所である中央公園の再整備にあたりSLの移設を検討したところ、『吊り上げたら壊れてしまう可能性がある』と専門業者から指摘されました。安全な状態にするのは難しく、そのようなものを譲渡することもできないと判断したため、解体しました」といいます。

 ただ、そもそもこのSLは「長崎原爆の投下直後に走った救援列車の記憶を残す」という目的で設置されたもので、「部品を残しその役割を果たそう」という考えも、解体を決めた理由のひとつだそうです。「長崎市内のほか、ゆかりのある長与町にも解体後に車輪がモニュメントとして保存されています」と話します。ちなみに、本格的な修繕を行った場合、「業者からの口頭ベースの見積もりですが、工場への移送費用も含めて1億円ほどかかるのではと言われた」そうです。

 このように、展示されているSLが岐路に立った例がある一方で、地域住民により守られているという例も全国で聞かれます。たとえば愛知県の蒲郡市博物館では、国鉄OBや鉄道好きの市民などからなる「蒲郡SLを守る会」により、屋外展示されているD51形201号機の清掃が40年以上にわたり毎月行われており、2017年9月3日(日)には通算500回を達成しています。蒲郡市博物館は「当館は海に面した場所にありますが、清掃ではSLの全体をていねいにワックスがけしていただいており、潮風から守られています」と話します。

 全国にあるSLのほとんどは、製造から半世紀以上が経過しており、維持管理がますます難しくなっているようです。引き取る側にも、相応の心構えが必要かもしれません。

【写真】日本に現存する最古の「動くSL」

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