「住むなら小田急沿線」と思わせる10の理由 平日も休日もロマンスカーと暮らす

「住むなら小田急沿線」と思わせる10の理由 平日も休日もロマンスカーと暮らす

展望席や連続窓、ドーム型の天井、連接台車などが採用されているロマンスカー50000形「VSE」(2009年9月、恵 知仁撮影)。

通勤通学と観光のふたつの顔を持つ小田急電鉄が、2018年に大変貌。複々線完成や新型ロマンスカー導入をはじめとする10の魅力で、沿線の暮らしや遊びがますます充実しそうです。

通勤に便利 日帰り、宿泊観光地もある楽しい路線網

 小田急電鉄は3つの路線を運行しています。本線として、新宿と小田原を結ぶ「小田原線」、そして支線として、相模大野から分岐して片瀬江ノ島に至る「江ノ島線」と新百合ヶ丘から分岐して唐木田に至る「多摩線」です。

 小田原線は小田原から箱根登山鉄道に乗り入れて、箱根湯本まで直通運転しています。新宿発の特急ロマンスカーの直通運転で知られていますが、新松田や本厚木からの各駅停車も設定されています。新宿方面を見ると、代々木上原から東京メトロ千代田線に乗り入れ、さらに綾瀬からJR常磐線方面へも直通運転しており、千葉県の松戸、茨城県の取手に至ります。

 小田急沿線は都心方面の通勤に便利なだけではなく、日帰りや宿泊滞在で楽しめる観光地がたくさんあります。ビジネスもプライベートも充実できる路線網といえそうです。

小田急電鉄のグッドポイント、ベストテン

 それでは、今回も筆者(鉄道ライター:杉山淳一)の思い込みと独断による「小田急の魅力ベストテン」をご覧ください。もちろん異論は認めます。

【1位】ロマンスカーで通勤も観光も!

 小田急電鉄の特急ロマンスカーは、観光列車系統と都市間速達列車系統に分かれます。観光列車系統としては新宿と箱根湯本を結ぶ「はこね」「スーパーはこね」、新宿と片瀬江ノ島を結ぶ「えのしま」、新宿からJR御殿場線に乗り入れて御殿場を結ぶ「あさぎり」があります。「はこね」には千代田線内を発着する「メトロはこね」もあります。

 特急ロマンスカーは新宿と箱根、江の島、御殿場を結ぶという印象が強く、「沿線外のお客様の乗りもの」というイメージがあります。しかし、実際に住んでみると、小田原線内の途中停車駅も多く、沿線の人々にとっても、それぞれの観光地へ行きやすいダイヤになっています。平日の新百合ヶ丘発箱根湯本行き「はこね5号」などは、まさに小田急沿線の人々のために存在するロマンスカーといえるでしょう。

 都市間速達列車系統の特急ロマンスカーは「さがみ」です。おもに新宿〜小田原間で運行されており、買い物客や子ども連れに人気です。早朝の上り列車は町田始発、相模大野始発、本厚木始発が設定されています。千代田線直通の「メトロさがみ」も1日1本あり、座って通勤通学できる列車として人気があります。朝、都心の病院に向かう人々もラッシュに揉まれなくてすみます。

 夕方の下りに設定されている「ホームウェイ」も都市間速達列車系統といえるでしょう。「ホームウェイ」は新宿発、箱根湯本行き、小田原行き、本厚木行き、藤沢行きなどがあります。千代田線内から出発する「メトロホームウェイ」もあり、それぞれ座って帰れる通勤特急として人気です。観光特急という印象が強い特急ロマンスカーですが、細かいダイヤ設定によって、沿線の誰もが利用できる列車が増えています。

複々線がついに完成 列車の増発と時間短縮が実現へ

【2位】複々線化完成で「渋滞」解消

 現在、小田原線の東北沢〜梅ヶ丘間で、線路を2本から4本に増やす「複々線化」の工事が進行中。これが完成すると、代々木上原〜登戸間の事業区間11.1kmにおいて、各駅停車用の線路(緩行線)と特急・急行列車用の線路(急行線)が分離されます。なお、登戸〜向ヶ丘遊園間も上り線のみ急行線が分離されています。小田急電鉄は工事が完成する2018年3月にダイヤ改正を行う予定です。

 かつてはこの区間の列車本数を抑えるため、新宿〜相模大野間で小田原線急行6両と江ノ島線急行4両が連結して走り、相模大野で分割、連結していました。しかし利用客増加などのため、どちらも10両編成の列車として独立。また、多摩線内の列車は基本的に新百合ヶ丘で折り返していましたが、これも一部が千代田線や新宿方面への直通列車として小田原線に乗り入れるようになりました。

 このような増発と長編成化によって、小田原線の都内区間は列車の渋滞が起きています。「せっかく急行に乗ったのに、多摩川を渡ると先行列車に追いついてしまう」という状態です。そこで、東京都が実施する連続立体交差事業とあわせて、代々木上原〜登戸間の複々線化工事が始まりました。一部で複々線が完成するたびにダイヤが改正されてきましたが、途中に残る複線区間がボトルネックでもありました。

 2018年3月に東北沢〜梅ヶ丘間の複々線化が完成し、工事用地確保のため複線に戻された代々木上原〜東北沢間が再び複々線化されると、急行の渋滞が解消される見込みです。各駅停車も急行の通過を待つための長時間停車がなくなり、所要時間が短縮されます。すべての小田急沿線の利用客にメリットがあります。

2018年には赤い新型ロマンスカーが登場

【3位】新型ロマンスカー70000形が登場

 複々線化完成を機に実施されるダイヤ改正で、新型の特急ロマンスカー70000形電車が登場する予定です。塗装は、従来のロマンスカーで使われたバーミリオンオレンジが採用され、ロマンスカーのイメージを新たにします。先頭車には展望席を設定。側面には大型の連続窓が採用されるため、すべての席で車窓をいままで以上に楽しめそうです。

 1両の車体の長さは地下鉄対応の青いロマンスカー60000形「MSE」と同じ。従来の展望席付きロマンスカーより大型化されるため、座席定員は白いロマンスカー50000形「VSE」より42人多い400人になります。しかし、車体の大きさが同じ60000形「MSE」の定員は578人ですから、かなりゆったりとした座席配置になりそうです。

 筆者が小田急電鉄の関係者に聞いたところ、新型70000形は旧型車両と置き換えないため、ロマンスカーの編成数は純増となります。したがって、特急ロマンスカーの列車本数も現在より増える見込みです。2018年3月のダイヤ改正では、夕方の帰宅列車「ホームウェイ」のように、朝の通勤列車として「モーニングウェイ」が誕生する予定です。

【4位】地下鉄千代田線直通が便利

 代々木上原駅で東京メトロ千代田線が接続しています。相互直通運転は1978(昭和53)年から始まりました。当時は平日の朝夕だけでしたが、現在は日中、土休日も直通列車があります。千代田線は官庁街の霞ケ関駅、銀座に近い日比谷駅、東京駅に近い大手町駅を通ります。巨大な新宿駅で乗り換えるよりも便利といえるでしょう。

 平日朝は小田原線の準急や、多摩線からの急行、多摩急行が千代田線に直通。日中は多摩線の急行が1時間あたり3本の割合で直通します。2008(平成20)年から千代田線に直通する特急ロマンスカーも設定されました。鮮やかなフェルメールブルーの車体の60000形「MSE」です。千代田線内と箱根湯本を結ぶ「メトロはこね」、朝の都心方面「メトロさがみ」、夕方の帰宅列車「メトロホームウェイ」があります。

 特別料金不要の隠れた長距離列車として、多摩線・唐木田駅発の急行で、JR常磐線の取手行きが設定されています。平日に2本、土休日に3本。所要時間は約2時間。乗り鉄の筆者としては、いつか全区間を乗り通してみたいです。

山や海の有名観光地へ、小田急線で1本

【5位】国際的観光地「箱根」へ直通

 小田急電鉄の前身、小田原急行鉄道は1927(昭和2)年に新宿〜小田原間を一気に開通。官営の東海道本線に対抗して、東海道最大の宿場町・小田原と東京を結びました。この小田急の動きに呼応して、箱根登山鉄道が小田原駅に乗り入れます。小田急と箱根登山鉄道の連携は開業当時からの伝統です。

 箱根は関東の奥座敷として名高い温泉地で、近年は海外からの観光客も増えています。箱根へはJRでも小田原乗り換えで行けます。しかし、箱根の玄関にあたる箱根湯本まで直通できる特急ロマンスカーが便利です。新宿〜箱根湯本間は特急ロマンスカーで2080円、東海道新幹線利用(東京発、自由席)で3530円、東海道本線の普通列車利用で1800円。なお、小田原線の快速急行を使えば乗車券のみの1190円です。

 小田急沿線から箱根方面へは、箱根登山鉄道やケーブルカーやロープウェイなど8つの乗り物が乗り放題となる「箱根フリーパス」が便利です。有効期間は2日間または3日間、出発駅によって料金が異なり、新宿からだと2日間用が5140円(子ども1500円)、3日間用が5640円(子ども1750円)です。

【6位】気軽に湘南・江の島へ

 小田原急行鉄道は小田原線を開通させた2年後に、江ノ島線も一気に開通しました。江ノ島線の終点、片瀬江ノ島駅は、江ノ島大橋の目の前にあり、また、新江ノ島水族館まで徒歩5分です。湘南モノレールの湘南江の島駅や江ノ島電鉄の江ノ島駅より海に近い場所にあります。

 江ノ島電鉄は小田急グループの会社です。直通運転こそしていませんが、小田急沿線では「江の島・鎌倉フリーパス」を販売しています。江ノ島電鉄と小田急江ノ島線の藤沢〜片瀬江ノ島間が乗り放題となるきっぷです。1日間有効で、新宿からだと1470円(子ども740円)です。

 新宿と片瀬江ノ島を結ぶ特急ロマンスカー「えのしま」の一部は、相模大野まで「はこね」「さがみ」と連結して走ります。相模大野駅の列車分割、連結場面は鉄道ファンでなくとも興味深い風景です。片瀬江ノ島駅は竜宮城をイメージした駅舎で人気がありますが、老朽化のため建て替えが検討されています。新しい駅舎の登場も楽しみです。

沿線には紅葉の名所や高級住宅街も

【7位】紅葉と夜景の名所「大山」

 丹沢大山国定公園の大山は標高1252m。関八州の展望台といわれるほど見晴らしの良いところです。ここの最寄り駅は一部の特急ロマンスカーが停車する伊勢原駅です。バスで約20分の終点、大山ケーブル停留所から、こま参道を通り抜けるとケーブルカーの乗り場があります。ケーブルカーの山頂駅である阿夫利神社駅付近に展望台があり、空気が澄んでいれば東京都心まで見渡せます。とくに夜景が素晴らしい所です。途中駅の大山寺は紅葉の名所としても有名です。

 このエリアにも「丹沢・大山フリーパス」があります。大山ケーブルと小田原線の本厚木〜渋沢間、エリア内のバス路線が乗り放題の「Aキップ」は、新宿から2470円(子ども1230円)で、2日間有効です。

【8位】憧れの高級住宅街

 小田急沿線の魅力は多彩な住環境です。高級住宅地の成城、玉川学園は、成城学園と玉川学園が広大な土地を取得。駅を誘致した上で住宅地を分譲しました。その結果、みどり豊かで閑静な学園都市が形成されました。小田急沿線を象徴する風景のひとつといえそうです。

 小田急が開発した都市としては、江ノ島線沿線の「林間都市計画」があります。東林間駅、中央林間駅、南林間駅を含む広大なエリアを宅地開発する計画でした。総面積は80万坪に及びました。しかし、戦争の影響で目論み通りの開発は行われませんでした。その後、1984(昭和59)年に東急田園都市線が中央林間駅に到達すると大発展します。小田急側も中央林間駅に急行、湘南急行(現、快速急行)を停車させるなどの対抗策を打ち出し、便利になりました。

 多摩線は東京都の多摩ニュータウン開発計画に関連して、東京都の要請もあって建設された路線です。小田急としても多摩ニュータウンの手前、新百合ヶ丘〜はるひ野間の住宅開発を手がけます。また、多摩ニュータウンの先、唐木田地区へ延伸しました。唐木田地区は付近の大妻女子大学多摩キャンパスのイメージも加えて、新たな学園都市を形成しています。

多摩線はどこへ延伸?

【9位】買い物や都市型レジャーが楽しい

 小田急線の急行のほとんどは新宿に通じており、新宿のデパートや家電量販店は、小田急沿線からも多くの人々が集まります。新宿まで行かなくても、経堂、成城学園前、新百合ヶ丘、町田、相模大野、海老名、本厚木、藤沢などに小田急系列のデパートや商業施設があり、路線長の長い小田原線沿線の買い物を支えています。下北沢のように若者文化に根ざした独自の文化が生まれた街もあります。

 レジャースポットの筆頭は「よみうりランド」でしょう。ローラーコースター、大観覧車のある大型遊園地で、夏は流れるプールや波のプールも人気です。読売ランド前駅からバスで約10分です。近年では「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」も人気です。登戸駅からバスで9分。直行便が10分おきに出ています。向ヶ丘遊園駅付近の生田緑地には「岡本太郎美術館」、町田駅付近には「町田市立国際版画美術館」があり、文化、教養あふれる休日も過ごせます。

【10位】多摩線に気になる延伸計画、横浜市営地下鉄も来る?

 複々線工事が完成したあとも、小田急電鉄には次の展開があります。そのひとつが多摩線の延伸計画です。唐木田から先、町田市を通って、JR横浜線の相模原駅、さらにJR相模線の上溝駅に至る約8.8kmです。相模原駅に隣接する米軍用地の返還をきっかけに建設の気運が盛り上がり、小田急も「小田急多摩線延伸検討会」に協力しています。

 この路線をさらに西へ延伸する構想もあります。相模原市、愛川町、清川村、厚木市は「小田急多摩線の延伸促進に関する連絡会」を結成。この路線が実現すると、厚木市北部の開発が進むほか、宮ヶ瀬湖という観光地へのアクセスも便利になりそうです。多摩線に、特急ロマンスカーが再び登場するかもしれません。

 さらに、横浜市営地下鉄ブルーラインの新百合ヶ丘延伸構想もあります。ブルーラインは現在、横浜中心部、新横浜駅、港北ニュータウンを経由して、東急田園都市線のあざみ野駅に達しています。構想では、ここから北へ延伸して新百合ヶ丘駅につなぎます。これによって多摩線や小田原線から横浜方面や東海道新幹線へのアクセスが便利になります。

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 都心へ通勤し、週末はリゾートライフやレジャーを満喫。小田急沿線にはそんなイメージがあります。鉄道ファンにとってはなによりも「ロマンスカーと暮らす」が最高のメリットといえそうです。

【地図】新宿を起点に3方面へ路線を伸ばす小田急電鉄

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