事故統計から見る「オスプレイ」 欠陥機論は事実か否か?

事故統計から見る「オスプレイ」 欠陥機論は事実か否か?

アメリカ海兵隊のMV-22「オスプレイ」(画像:アメリカ海兵隊)。

2017年9月末、アメリカ海兵隊の「オスプレイ」の事故が相次ぎました。安全性への懸念が根強い同機ですが、これまでのデータからはどのような実態が浮かび上がるのでしょうか。

事故相次ぐ「オスプレイ」 実際のところは…?

 2017年9月29日(金)、ISIL(イスラム国)に対しシリアで作戦中だったアメリカ海兵隊MV-22B「オスプレイ」が墜落しました。また同日、日本では新石垣空港において同機が緊急着陸しました。

 かねてより日本国内では「オスプレイ」が欠陥機であり事故が多いのではないかという根強い懸念があります。なぜ「オスプレイ」の事故は多いのでしょうか。

 アメリカ陸海空軍・海兵隊の軍用機は合計で1万機を超えるため、じつはかなりの件数で墜落ないし不時着による全損事故が発生しています。もしこれら米軍機すべての機種が「オスプレイ」と同様の注目を集めていたならば、ほぼ1週間に1度のペースで報道されるはずですが、実際はそうではありません。つまり「オスプレイ」の事故が多いように感じるのは、「オスプレイ」の場合だけ日常茶飯事的に発生している些細な故障、予防着陸といった案件でさえ報道されているからにすぎません。

 たとえば陸海空自衛隊すべてと在日米陸軍が保有するUH-60「ブラックホーク」およびその同型機は2017年4月からこの半年間において、筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)が調べた限り4月19日メリーランド州、4月26日グアム沖、7月10日ミシシッピ州、8月1日アフガニスタン、8月15日ハワイ沖、8月25日イエメン沖で墜落および不時着による全損事故が発生しており、また8月26日には海上自衛隊機が墜落していますが、海上自衛隊機を除けば日本においてほとんど注目されることはありませんでした。

 もちろんUH-60が欠陥機であるから事故が多いわけではありません。UH-60は2017年現在、世界で最も多く使われている傑作軍用ヘリコプターであり、事故が多いのは数が多いからといえます。

「オスプレイ」にまつわる重大事故、その中身

 一方でアメリカ海兵隊は「オスプレイ」の事故発生件数を公表しており、事実としてMV-22B「オスプレイ」の事故件数は近年若干の増加傾向にあることが明らかになっています。大破または200万ドル(2億3000万円)以上の損害、死亡・永続的な全身不随の発生を意味する「クラスA事故」の統計は、開発初期の連続事故発生による飛行停止処分が解除された2003(平成15)年から2017年8月末までに、30万3207飛行時間で11件の発生が報告されています(アメリカ海軍・海兵隊報告による。2017年9月29日の墜落は含まれていない)。そして10万飛行時間あたりのクラスA事故発生件数は最新の数値で3.64件であり、これは海兵隊機の平均よりも高い数字です。

 海兵隊のMV-22Bオスプレイにおいて発生したクラスA事故の主要因を見てみましょう。

・2006年03月27日 エンジン始動時に急激な出力増加が発生し意図せぬ浮揚と不時着
・2007年12月06日 エンジン火災による損傷
・2011年07月07日 機体からの転落死
・2012年04月11日 禁止操作を行ったことによる墜落
・2013年06月01日 エンジン火災による損傷
・2013年08月06日 悪天候着陸訓練時における不時着
・2014年10月01日 機体からの転落死
・2015年05月07日 着陸時異物吸入によるエンジン停止で墜落
・2016年12月13日 操縦ミスによる空中給油機と衝突、不時着
・2017年07月11日 駐機中の落雷で整備員が死傷
・2017年08月05日 強襲揚陸艦への着艦失敗

 以上のように、「オスプレイ」に発生したクラスA事故のうちメカニカルな故障によって生じたものはほとんど無いのが実情であり、また故障もエンジンに集中していることがわかります。そのほかについては操縦ミスやほかの機体にも起こり得るものばかりであり、特に転落死や落雷による整備員の死傷などは機体に関係がないことは明らかです。こうした直接関係のない事故および地上で発生したもの4件を除いた場合、在日米軍基地への配備が始まる2012(平成24)年の時点において10万飛行時間当たりの発生件数は1.93件(この数字は防衛省配布の資料にも見られます)、そして2017年の時点では2.31件であり、ほんのわずかながら増加していることがわかります。一方ですべてを含んだクラスA事故の発生率自体は、2012年時点の3.86件から3.64件へ微減しています。

事故の「内容」から見えてくる「オスプレイ」の姿とは?

 UH-60がそうであるように、オスプレイ自体も量産・配備が進み機体が増えたぶん、事故が増えてしまうことは避けようがありません。また機体数に左右されない飛行時間あたりのクラスA事故件数はひとつの指標ではあり、作戦中はどうしても事故が多発しやすいとはいえ飛行中に限るとこれが増加している事実は、オスプレイの運用における重大な問題ではあります。しかし必ずしも機体固有の欠陥や危険性を証明している事実とはなりえず、安全性を考察する上では個別に事故の詳細を探っていかなければほとんど意味がありません。

 これはクラスB事故(50万ドル以上の損害または永続的な障害ないし3人以上の入院)やクラスC事故(5万ドル以上ないし1日の療養が必要な負傷)においても同様であり、特にクラスC事故は「エンジン整備中に落下し5日の欠勤」「不運にも高価な赤外線前方監視装置にバードストライク」など機体には関係のない要因ばかりとなります。

 政治的象徴となってしまい欠陥機として語られることが少なくない「オスプレイ」ですが、事故が増加傾向にあることは事実であるものの、一部メディアで言われるような欠陥機論の事実は事故の統計から見出すことはできません。

【写真】バグダッド上空のUH-60「ブラックホーク」

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