巨大アームで線路脇の電柱を回転 JR西日本「電柱ハンドリング車」を新開発

巨大アームで線路脇の電柱を回転 JR西日本「電柱ハンドリング車」を新開発

新たに開発された電柱ハンドリング車。クレーンの先端にアームがついている(2017年10月17日、伊原 薫撮影)。

JR西日本グループが国内の鉄道業界で初めて、線路脇にある電柱の建て替えをより安全・スムーズに行なえる新型作業車「電柱ハンドリング車」を開発。危険な高所作業を一掃できるという、このクルマはどんなものなのでしょうか。

クレーン先端のアームで、電柱をガッシリ

 JR西日本グループである西日本電気システム(大阪市淀川区)は、架線柱(線路上空の電線を支える電柱)の建て替えをより安全に行えるよう、新たに電柱建替車「電柱ハンドリング車」を開発。2017年10月16日(月)に、JR西日本網干総合車両所宮原支所(大阪市淀川区)で、その作業の様子を報道陣に公開しました。

 これまで、電柱を建てる手順としては、長さが10から14mほどある電柱の先端に金具を取り付け、クレーンで吊り上げていました。この方法だと、建てたあとの電柱に人が上って金具を撤去するという、危険な高所作業が必要でした。また、作業は線路上から行うため、吊り上げる際にクレーン車の「ブーム」と呼ばれる腕部分が既存の架線(線路上空にある電車に電気を供給する電線)に接触しないよう、移設する必要がありました。

 そこで、西日本電気システムではクレーンや高所作業車を製造するタダノ(香川県高松市)と共同で「電柱ハンドリング車」を開発。このクルマは、クレーン車のブームの先端に、油圧式のアームを装備しています。このアームで電柱の中央部分を直接つかむことで、吊り上げ作業が不要となったほか、ブームを高く上げる必要がないため、架線の移設作業も不要に。現場での高所作業を一掃することができました。さらに、従来は吊り上げた電柱が風にあおられて揺れないよう、ロープで支えていた介助者も必要なくなりました。こうしたクルマの導入は、国内の鉄道業界では初めてで、1台の製作に1.5億円(開発費を含む)を投じました。

電柱を回転させて穴に挿入 線路走行も可能

 この日の公開では、実際の設置作業を想定したデモンストレーションを実施。線路際に寝かせてあった新しい電柱を、電柱ハンドリング車がアームでつかみます。その後、電柱を持ち上げて縦方向に回転させ、あらかじめ掘られている穴に挿入。最後に電柱が倒れないよう、作業員がくさびを打ち込みます。実際の設置では、このあとで穴にコンクリートを流し込み、固定するとのことです。作業は操縦者を含めて3名で、10分弱で終了しました。

 なお、このクルマは線路と道路の両方を走ることが可能な「軌陸車」で、作業場所の近くにある踏切まで道路を走り、その線路上で鉄輪(レール用の車輪)を下ろして、現場まで自走。線路の上を走れるよう、通常の駆動用エンジンに加えて鉄輪を駆動させるための油圧式モーターを搭載しています。今回開発されたアーム部分も油圧式で、最大で長さ14m、重さ2.5t程度の電柱を、安定して確実につかむことができます。

 この電柱ハンドリング車の導入で、従来の作業時間を25%程度短縮することができ、また作業員も高所作業に従事する3ないし4名が不要に。高所作業も必要なくなり、より効率的に電柱の建て替え作業ができるようになりました。ちなみに、このクルマは逆の手順をとることで電柱の撤去作業も可能とのことです。

 西日本電気システムでは、合計3台の電柱ハンドリング車を導入する予定で、同日から作業員の教育訓練も開始。終了した作業所から順次使用され。在来線の電柱建て替え作業に使われるとのことです。

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