東急田園都市線「地下区間」 運行トラブル防止へ、点検作業こう変わる!

東急田園都市線「地下区間」 運行トラブル防止へ、点検作業こう変わる!

報道陣に公開された田園都市線の「新しい点検作業」。写真は道路と線路の両方を走れる「軌陸車」(2018年2月7日、恵 知仁撮影)。

東急電鉄が田園都市線の地下区間で相次いだ停電トラブルを受け、点検作業の見直しを行います。1日にわずか2時間程度しか行えないというその作業、具体的には、どのような検査体制に変わるのでしょうか。

点検できるのは深夜の約2時間

 東急電鉄が、2017年秋に田園都市線の地下区間で相次いだ停電トラブルを受け、検査体制の強化を図ります。2018年2月7日(水)の未明、東急電鉄はその田園都市線の地下区間で実施する新しい点検作業の様子を、報道陣に公開しました。

 今回公開されたのは、田園都市線の渋谷駅ホーム付近で行われた夜間点検です。

 東急電鉄が行っている点検作業は、「日中作業」と「夜間作業」の2種類あります。日中作業は電車を運行している時間帯に実施。列車が走り去ってから次の列車が来るまでの時間を使って、点検を繰り返します。

 これに対して夜間作業は、終電から初電までの電車が走っていない時間帯を使って集中的に行うもの。東急電鉄は、地上区間では日中作業と夜間作業の両方を行っていますが、地下を行く区間では電車が来たときに作業員が待避できる場所が少ないなどの問題があり、夜間作業のみ行っています。

 実際に点検作業が始まったのは午前2時頃。田園都市線の終電は渋谷0時42分発の鷺沼行きですが、すべての電車が車庫に入ったことを確認するまで点検作業ができないため、この時間になってしまいます。一方、初電は5時頃から運行を開始するため、列車運行の準備も考えると4時頃には作業を完了させなければなりません。時間との勝負です。

「みる」に加えて「さわる」でチェック

 まず公開されたのは、ホームの下を通っている高圧配電ケーブルの点検作業です。ケーブルはむき出しになって敷設されているわけではなく、線状に伸びるコンクリート製の箱(トラフ)に収められています。

 トラフは長さ1m弱ごとに区切られた「ふた」で覆われており、これを取り外すと数本束ねられたケーブルが姿を現しました。作業員はケーブルを目で確認しながら手で触り、傷がないかを確認します。

 ふた1個の重さは20kgで、作業員はこれをひとつずつ取り外してケーブルの状態を確認しなければなりません。また、ホームの下という狭い空間のなか、中腰の姿勢で目視と触手による点検を行うことになります。なかなかの重労働です。

 それだけではありません。ケーブルには交流6600Vの電気が流れています。作業員は絶縁ゴム手袋を装着してケーブルを触りますが、一歩間違えると感電事故につながります。細心の注意が必要な作業です。

 以前はトラフの外側を目で見て点検するだけでしたが、新しい点検方法では、こうした触手による点検が追加されました。関係者は「(触手点検は)レベルが全然違います。細かな部分まで確認することができます」と話します。ひと晩で点検できる距離は200m程度とのことです。

渋谷駅の池尻大橋側トンネル内では…

 続いて、ホームの池尻大橋側にあるトンネル内で信号ケーブルの点検作業が公開されました。ここには上下線をつなぐ線路(渡り線)があり、駅部分の箱状のトンネルから単線2本の丸いトンネルに移る部分。信号ケーブルはトンネルの壁に設置されたラックの上に数本束ねて置かれ、一定の間隔ごとに縛られています。

 こちらも目視による点検に加え、触手点検が追加されました。ケーブルを縛っている結束バンドを取り外し、清掃しながら手で触ってチェック。点検が完了したあとは、新しい結束バンドで縛り直します。

 2017年秋に相次いだトラブルを受け東急電鉄が実施した緊急安全総点検では、信号ケーブルに細かな傷が発見されたそうですが、直ちに修繕が必要な状況ではなかったとのこと。傷のある部分には目印のテープが巻かれ、後日の修繕に備えられていました。

トンネルの上は「線路を走れるトラック」で点検

 信号ケーブルの確認が進められるなか、下り線の池尻大橋側から小型トラックのようなものが走ってきました。「軌陸車」と呼ばれる保守作業車で、ゴムタイヤと鉄車輪を装備。線路と道路の両方を走ることができます。

 目の前で止まった軌陸車の荷台には、高所の点検作業台が取り付けられています。これを使って、トンネル上方に設置されているケーブル類の点検作業を開始。架線に電気が通っていないことをチェックしたうえで作業員が荷台に上がり、架線や、架線に電気を供給するケーブル(き電ケーブル)、無線アンテナ線、トンネル内の照明に電気を供給するケーブルの点検を行います。

 架線は以前から触手点検が行われていましたが、今回のトラブルを受けて、き電ケーブルも触手点検を実施することになりました。それ以外は従来通り、目視による点検です。点検距離はひと晩で約500mになります。

田園都市線で相次いだトラブル、その原因

 田園都市線は、渋谷〜中央林間間の31.5kmを結ぶ東急電鉄の鉄道路線です。このうち渋谷〜二子玉川間の9.4kmは、1977(昭和52)年に開業。かつて「新玉川線」と呼ばれていた地下区間で、おもに首都高3号渋谷線と国道246号(玉川通り)の下を通っています。

 開業から40年が過ぎた2017年の10月19日(木)、三軒茶屋駅で電力ケーブルのショートによる停電が発生。信号設備が使えない状態になり、117本の列車が運休しました。さらに約1か月後の11月15日(木)には、池尻大橋〜駒沢大学間におけるき電ケーブルのショートで架線に電気を供給できなくなり、約4時間にわたって155本の列車が運休してしまいました。

 電気関係のトラブルが相次いだことを受け、東急電鉄は11月18日から12月13日まで、田園都市線の地下区間で「緊急安全総点検」を実施。のべ約2120人を動員し、電気関係の設備だけでなくトンネルなどの土木施設、線路、車両の点検も行いました。

 その結果、「緊急性の高い不具合箇所はないが、複数箇所の設備に表面的な傷等を確認」(東急電鉄)したとのこと。ケーブル類は281か所で「表面的な傷等」を確認し、漏水やホコリなどによる付着物も43か所で確認されたといいます。

点検は「メリハリ」つける そして新型車両も

 そこで東急電鉄は、「地下区間という設備環境」に応じた点検方法を導入することにしました。具体的には、目視点検に加えて触手点検も追加。点検頻度も見直し、き電ケーブルと高圧配電ケーブルの精密点検は5年に1回だったのを2年に1回へ変更しました。これによりトラブルを未然に防止する体制を強化したといいます。

 くわえてトラブルが発生した場合でも、早期の復旧を図れる体制に変えました。

 地下区間で電気関係のトラブルが発生した場合、以前は二子玉川信通区と鷺沼電力区に宿泊している作業員が現場に向かっていました。しかし、二子玉川と鷺沼は地下区間から離れており、道路渋滞に巻き込まれて現場への到着が遅くなるなどの問題がありました。

 そこで2017年12月からは、地下区間の沿線に作業員を分散して宿泊させ、現場への到着時間を短縮する体制を構築。また、2017年度末には技術部門を中心とした現場事務所が、地下区間の沿線に設置される予定です。東急電鉄はこれにより、地下エリアを中心にきめ細やかな保守、運営体制を確立するとしています。

 ちなみに、田園都市線では16年ぶりとなる新型車両の2020系電車が、2018年春にデビューする予定です。この車両は機器の状態を常に監視する「大容量情報管理装置」を採用。車両についても故障の未然防止を図り、運行の安定化を目指すことになっています。

 東急電鉄は田園都市線のほかにも目黒線などに地下区間を抱えていますが、今回の新しい点検体制は田園都市線の地下区間のみでの導入。東急電鉄電気部の伊藤篤志統括部長は「田園都市線の地下区間は(開業から)“40年選手”。建設が比較的新しい地下区間とは施設の状況が異なります。施設の年数に応じて(点検の体制に)メリハリをつけていきたいです」と話しています。

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