膨らむ「宇宙ホテル」、なにがメリット? 2021年打ち上げ、1泊100万ドル台より

膨らむ「宇宙ホテル」、なにがメリット? 2021年打ち上げ、1泊100万ドル台より

ビゲロー・エアロスペースが2021年の打ち上げを予定している「B330」(画像:ビゲロー・エアロスペース)。

はるか上空の軌道上や月、さらには火星近くのホテルに長期間滞在する。そんなSF小説や映画でしかあり得なかったシチュエーションが、現実になろうとしています。ビゲロー・エアロスペースが発表した膨らむ「宇宙ホテル」とは、どのようなものなのでしょうか。

2基の「宇宙ホテル」が2021年に打ち上がる

 宇宙開発企業のビゲロー・エアロスペース社(アメリカ)は2018年2月20日、宇宙ホテルとしても利用できる膨張式のモジュール「B330」を2021年に2基、地球低軌道に打ち上げること、そしてその運用企業のビゲロー・エアロスペース・オペレーションズを設立したことを発表しました。

 B330は幅6.7m×長さ16.8m、重量約22tの膨張式モジュールです。宇宙空間において人間が活動可能な空間を作り出すことが目的のもので、その特徴は、小さく折りたたまれた状態でロケットにより打ち上げられ、宇宙空間で内部に空気を充填することでそのサイズを3倍にまで拡張できることでしょう。これにより、膨張後には6人の滞在が可能な330立方メートルの空間が宇宙空間に誕生するのです。

 モジュールには推進装置やソーラーパネル、エアロック、接続アダプターなどが搭載され、乗員の生命維持が可能。単独で運用したり、あるいは国際宇宙ステーション(ISS)やほかの「B330」と接続したりすることもできます。またその本体にはクラレの合成繊維「ベクトラン」に似た素材が利用され、金属製の宇宙ステーションよりも頑丈だとされています。

「B330」で想定される利用用途はISS(国際宇宙ステーション)と同じような科学実験の場としてだけでなく、宇宙空間での居住地区やホテルとしての利用、さらにはほかの惑星の地上に設置する「コロニー」のような利用もありえるのです。

躍進する民間宇宙ビジネス、その背景は…?

 実は、以前から「B330」の打ち上げを表明していたビゲロー・エアロスペース社。しかし、なぜいまになって大いに注目を集めているのでしょう。それには、アメリカ政府とNASAによるISSの運用方針に関する重大な決定が関連しているのです。

 アメリカ政府が2月12日に発表した2019会計年度の予算教書で、とうとうNASAはISSへの出資を2025年から打ち切ると発表しました。以前より2025年以降の運用方法が決定されていなかったISSですが、これにより今後は運営の一部、あるいは全部の民間への委託を模索することになります。

 さらに、NASAは1億5000万ドル(約160億円)の予算で低軌道での民間宇宙ビジネスの支援を行うことになります。ビゲロー・エアロスペース社のロバート・ビゲローCEOはこのNASAの方針を大いに賛称し、NASAや他社とのパートナーとして活動する準備があると発言しているのです。

実績を積むビゲロー、成功の目算は?

 このような膨張式モジュールをビゲロー社はすでに複数製作しており、そのなかでも最新の「BEAM(ビゲロー膨張式活動モジュール)」は2018年2月現在もISSに接続されています。このBEAMは2016年4月にスペースX社の「ファルコン9」ロケットによって打ち上げられ、同年5月には内部に空気を入れて膨張させることに成功しました。

 BEAMは全長4m×幅3.23m、重量1.4tのモジュールで、膨張後にはサイズが10倍となり16立方メートルの内部容積が確保できます。さらに2016年6月には内部に宇宙飛行士が一時的に滞在し、観測機器で気温変化や宇宙線の影響を計測。またこのBEAMは当初の予定を大幅に超え、2020年までISSへと接続される予定です。

 このように、宇宙ホテルとしても利用できる膨張式モジュールの計画と実証を続けるビゲロー・エアロスペース。2017年10月には、2022年までに月を周回する軌道に「B330」を設置する予定だと発表しています。さらに火星往復のための居住区域としても、同社のモジュールは活用が期待されているのです。

 なお、ビゲロー・エアロスペースは新会社設立の発表時に、宇宙ホテルの滞在費用はひとりあたり100万ドル台から1000万ドル台になるだろうと発言しています。いつかくるであろう宇宙旅行の時代に備え、本気で貯金を始めるのもいいかもしれません。

【画像】宇宙旅行を快適に? 「B330」と推進装置

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