長〜い「連節バス」、大量輸送の主役となるか 都市部などで導入進む その歴史と現状

長〜い「連節バス」、大量輸送の主役となるか 都市部などで導入進む その歴史と現状

新潟交通が「萬代橋ライン」で運行する連節バス。スカニア/ボルグレン製の車両を日本で初めて導入した(須田浩司撮影)。

都市の大量輸送手段として注目されている連節バス。大都市圏の中心部や、通勤通学客が集中する路線を中心に導入が進んでいます。日本において連節バスはどのような歴史をたどってきたのでしょうか。

そもそも「連節バス」とは

 通常のバスよりも長い「連節バス」が近年増えています。1台で多くの人を運べることから、大都市圏の中心部を走る路線や、郊外に開発された副都心、大学のキャンパスなど、朝夕時間帯に通勤通学客が一気に集中する路線を中心に導入が進んでいます。

 連節バスとはどのような乗りものなのでしょうか。兵庫県三田市で連節バスを運行している神姫バス(姫路市)のウェブサイトでは、「大量輸送のために車体が2つ以上つながっているバスであり、連節部分が幌でつながっているため自由に行き来ができます」と紹介されています。全長はおよそ18mから19mで、旅客定員は110名から190名程度です。

 エンジンの配置は、先頭車両の床下にミッドシップエンジンとして置いて後部車両を牽引(けんいん)するものと、最後部車両にリアエンジンとして置いて中間・先頭車両を推進するものがありますが、車両のノンステップ化が進んだことで、最近は後者のタイプが大半となっています。一方、欧州などでは、有害物質を排出せず運行経費が低いトロリーバス仕様の車種も見られます。

 日本の場合、連節バスは道路運送法に基づく国土交通省運輸局の特例措置を受け、使用路線を限定して運行されます。というのも、連節バスの全長が、日本の保安基準で定められている12mを超えるうえ、軸重や全幅も日本の基準を超える車種が存在すること、さらには非常口が設置されていないなど、原則では日本国内の公道を走行することができないからです。そのため、日本で連節バスを運行する場合は、これらの点について、道路運送車両法に基づく国土交通省運輸局の基準緩和申請、道路法に基づく道路管理者の特殊車両通行許可申請、および道路交通法に基づく警察署の制限外許可申請などが必要となります。また、非常時の迂回路や新規路線への投入には、その都度実車による検証と認可も必要です。

 連節バスはトレーラーバスと異なり、複数の車両が幌でつながっているため、通常の大型免許で運転でき、けん引免許は不要です。しかし実際には、けん引自動車の運転と同等の技能が必要であることから、多くの事業者はけん引免許取得者を乗務させています。なお、営業運転に際しては大型二種免許が必要です。

日本初の連節バスは? 80年代「つくば博」で広く知られる

 日本初の連節バスは、1950(昭和25)年2月にいすゞ自動車が試作製造した「BXツイン」といわれています。当時のベストセラーバスであったいすゞ「BX91」をベースに製造され、「双子バス」とも呼ばれていました。全長は11m、定員は75名で、運転者1名と車掌2名が乗務。連節部は上下方向にしか折れ曲がらない代わりに、後部車体にある第3軸が曲がる構造を採用していましたが、小回りが効かないなどの理由で普及には至らず、製作はこの1両のみ。同車は青森県の八戸市交通部で活躍しました。

 連節バスが広く知られるようになったのは、1985(昭和60)年に茨城県つくば市で開催された「国際科学技術博覧会」(科学万博つくば '85)ではないでしょうか。会場へのアクセス手段として、スウェーデン・ボルボ製(ボディは富士重工業〈現・スバル〉製)の連節バスが100台導入され、万博会場と常磐線の臨時駅である万博中央駅(現在のひたち野うしく駅の場所に会期中のみ開設されていた)のあいだを結ぶシャトルバスとして使用されました。

 博覧会閉幕後は、100台のうち80台がオーストラリアへ輸出され、19台は東京空港交通(東京都中央区)に移籍し、TCAT(東京シティエアターミナル)〜成田空港間のリムジンバスや空港内のランプバスとして使用されました。また、最後の1台は富士重工業伊勢崎製作所(現・桐生工業伊勢崎工場)に保存のため引き取られています。東京空港交通で空港内ランプバスとして使用された3台はさらに、1999(平成11)年に旭川電気軌道(北海道旭川市)へ移籍し、冬期の通学路線用として2004(平成16)年まで使用されました。

 1998(平成10)年にはボルボが連節バス(ボディは富士重工業製)を日本で正式発表し、京成電鉄(分社化を経て京成バス)が千葉県でJR幕張本郷駅〜幕張新都心間の路線バスに導入しました。この京成バスの車両を使用して、金沢市では2004(平成16)年11月に連節バスの運行実験も行われています。

日本で活躍する連節バスは大半が外国製

 現在日本では、北は新潟から西は福岡まで、おもに大都市の利用客が多い路線や幹線路線を中心に連節バスが導入されており、その数はここ数年で増えています。2018年春にはさらに、京都府精華町域のけいはんな学研都市で運行を開始するほか、福岡県北九州市など導入を検討している都市もあります。2020年東京オリンピック・パラリンピックまでに、連節バスが見られる機会はさらに増えることが予想されます。

 日本で活躍する連節バスは、大半が外国製です。現在は次の4車種が活躍しています。

●メルセデス・ベンツ「シターロG」
・運行事業者:神奈川中央交通、京成バス、岐阜乗合自動車、近江鉄道、南海バス、神姫バス、西日本鉄道

 ダイムラーグループのエボバス(EvoBus)が製造する大型連節路線バスで、2007(平成19)年に神奈川中央交通が日本で初めて導入しました。現在、日本国内では最多の台数を誇り、三菱ふそうトラック・バスが販売窓口となっています。2016年には新型モデルが発表され、南海バスや西日本鉄道が導入しています。

●スカニア/ボルグレン
・運行事業者:新潟交通、奈良交通(2018年春運行開始予定)、西日本鉄道

 スウェーデン・スカニア製のシャーシとエンジンに、オーストラリア・ボルグレン製の車体を載せた連節バス。車両幅や軸重などを日本の法規に合わせるなど、日本市場向けとしたのが特長です。日本で初めて導入したのは新潟交通で、2015年9月のこと。三井物産プラントシステム(東京都港区)が輸入販売を行っています。

●ネオプラン「セントロライナー」
・運行事業者:神奈川中央交通

 ドイツのゴットローブ・アウベルダー社製、「ネオプラン」ブランドの低床バスです。日本では神奈川中央交通が2005(平成17)3月に湘南台駅西口〜慶応大学間の路線バス用として「セントロライナー」連節タイプを初導入しました。

●ボルボ「B10M」
・運行事業者:ジェイアールバス関東

 前出の、ボルボが1998(平成10)年に日本で正式発表し、当時の京成電鉄(京成バス)がJR幕張本郷駅〜幕張新都心間に導入した連節バスです。車体は富士重工業(現・スバル)製。京成バスはこのバスを10台導入しましたが、現在はメルセデス・ベンツの「シターロG」に代替されています。京成バスで活躍していた車両のうち4台は、ジェイアールバス関東が購入し、現在はJR東日本総合研修センターの送迎バス(新白河駅〜研修センター)として運行しています。

 残念ながら、現在のところ純国産の連節バスは導入されていませんが、じつはいすゞ自動車と日野自動車が共同で、ハイブリッドシステムを搭載した新型の連節バスを開発しています。早ければ2019年には日本国内向けに発売する予定です。

「連節バス=BRT」ではない? 連節バスのこれから

 先述のとおり、日本ではおもに大都市の利用客が多い路線や幹線路線を中心に連節バスが導入されていますが、海外の事例を見ると、ブラジルのクリチバや中国の広州など、BRT(Bus Rapid Transit、バスを基盤とした大量輸送システム)を実現するためのツールのひとつとして連節バスを導入する事例が多いです。

 一方で日本では、「連節バス=BRT」と称する事例を時々見かけますが、特に「rapid」(速達性)という観点で見ると、これが正しいかは大いに疑問であり、BRTのおもな特徴である「バス専用車線」「バス専用道路」「車外運賃徴収」「交差点での待遇」「乗降口の高さ」という観点で考えても程遠いというのが現状です。BRTのおもな特徴をすべて兼ね備えた路線の登場と、BRTを実現するためのツールとしての連節バスの登場が、今後期待されるところです。

 また、最近では路線バスの運転手不足が深刻になっており、1台で多くの乗客を運べる連節バスを普及させることで、その解決に少しでもつなげられないかという議論も出始めています。乗客が多く連節バスの運行に適した区間に限られますが、運行の無駄を省き効率化する手段として連節バスを活用するというケースは、もしかすると今後増える可能性があります。

 許認可の問題など導入のハードルが高い連節バスではありますが、大量輸送手段として自治体や事業者などが注目しているのもまた事実です。純国産連節バスのデビューも近づいており、運行の環境が今以上に整えば、街中で多くの連節バスが行き交う光景が見られるのも、そう遠くない時期に訪れるかもしれません。

【表】日本で走る連節バス一覧

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