潜水艦とスマホの悩ましい共通点 静かにしたい潜水艦は増える電力消費にどう対処?

潜水艦とスマホの悩ましい共通点 静かにしたい潜水艦は増える電力消費にどう対処?

海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦1番艦「そうりゅう」が浮上航行する様子。最大速力は20ノット(画像:海上自衛隊)。

潜水艦とスマホは、バッテリーを使用するという点で共通しています。充電切れが悩みの種というのも同じ。電源のない海中、しかも静粛性が求められる通常動力潜水艦は、どのように増える電力消費へ対処しているのでしょうか。

スマホの悩み、潜水艦も

 いまや、多くの人が持ち、生活に欠かせないものになってきたスマートフォン。ですが、そのバッテリーの“持ち”に悩まされている人は多いと思います。高機能なスマートフォンもバッテリーが切れてしまっては、ただの文鎮になってしまいます。

 軍事の世界でも同様のことが言えます。あらゆる装備品に電子機器が使われるようになり、電気消費量の増大とバッテリーの問題は悩みの種になっています。なかでもシビアなのは、ディーゼルエンジンを搭載した通常動力潜水艦です。

 原子力潜水艦は外気を取り入れずともばく大な電力を生み出せますので、長時間の潜行が可能です。一方、バッテリーに蓄えた電気を使ってモーターで航行する通常動力潜水艦は、原子力潜水艦と比べて静粛性、隠密性に優れていますが、バッテリーを充電するには、浮上するか、シュノーケルによって大気を取り入れ、ディーゼルエンジンを動かして発電する必要があります。海面近くにまで出てディーゼルエンジンを動かすというのは、静粛性に優れる通常動力潜水艦にとって望ましいものではありません。

 このため、通常動力潜水艦の指揮には電力消費とバッテリー残量の厳密な計算が必要になります。以前、海上自衛隊の元潜水艦艦長の方が、「私はスマートフォンを使っていても、バッテリー残量を20%切らせたことはない」と仰っていたのを聞いたことがありますが、これはいかに電力消費をコントロールし、バッテリー残量を見通すことが、通常動力潜水艦に重要であるかを物語るエピソードかもしれません。

大気のいらないAIP潜水艦とは?

 こういった通常動力潜水艦の電力問題を解決し、潜行時間を伸ばすため、大気に依存しない非大気依存推進(AIP)潜水艦が昔から各国で研究されてきており、近年はディーゼルエンジンの補助として搭載される例があります。たとえばドイツが開発した212A型潜水艦では、ディーゼルエンジンに加え、水素と酸素を反応させて発電する燃料電池が搭載されており、大気を取り入れられない潜行中でも発電を可能にしています。

 自衛隊のそうりゅう型潜水艦にも、スウェーデンのコッカムス社が開発した「スターリングエンジン」が搭載されています。スターリングエンジンは機関内部の作動ガスを加熱・冷却し、そのガスの圧力変動から動力を取り出す機関のことで、このスターリングエンジンで発電機を潜行中に動かして電気を得ます。液体酸素と硫黄分がごく少ない灯油による燃焼はあるものの、ディーゼルエンジンのように爆発をともなわないために静粛性に優れている特性があります。

 しかし、これら実用化されているAIP潜水艦は、先にも書いたようにディーゼルエンジンが主とされており、AIP機関はあくまで補助です。潜水艦に必要な動力すべてをAIPでまかなうには至っていません。

潜水艦、ようやくスマホに追いつく

 ここで最初の話に戻ります。スマートフォンのバッテリーです。多くのスマートフォンで用いられているリチウムイオンバッテリーは、一般的に同じ重量の鉛バッテリーの倍以上のエネルギー密度があり、充放電の繰り返し回数も長く寿命に優れます。鉛バッテリーは現在も自動車で使われているほか、そうりゅう型潜水艦にも搭載されています。

 防衛省では従来の鉛バッテリーに替わる新たな潜水艦用バッテリーとして、平成14年度から潜水艦用リチウムイオンバッテリーの研究を行ってきました。リチウムイオンバッテリーはエネルギー密度に優れる反面、スマートフォンで問題になったように発火、爆発の危険性もあり、潜水艦に積むにはリスクがあるのですが、研究では安全性の確保が確認されたとして、平成20年度に建造する潜水艦に搭載を予定していました。ところが、予算等の問題から搭載は先送りにされてきました。

 長らく潜水艦への搭載が先送りにされてきたリチウムイオンバッテリーですが、ついに平成27年度予算で建造するそうりゅう型11番艦に搭載されることになり、今年の進水が予定されています。

 このそうりゅう型11番艦は、これまでのそうりゅう型に搭載されていたスターリングエンジンは無くなり、ディーゼルエンジンにリチウムイオンバッテリーという構成になるとされます。鉛バッテリー比で2倍以上のエネルギー密度を持つリチウムイオンバッテリーを搭載すれば、スターリングエンジンに頼らなくてもよいという判断があるようです。

 スマートフォンに置き換えて考えてみましょう。あなたのスマートフォンのバッテリーの持ちが2倍になるなら、外出時間によっては、外付けのモバイルバッテリーや充電用ケーブルを持ち歩かなくてもよい、という判断もありかもしれませんね。

【写真】米海軍の弾道ミサイル搭載型原子力潜水艦

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