バスはどれほど長持ちするのか 「200万km走行」もダテじゃない 寿命は延びる傾向に

バスはどれほど長持ちするのか 「200万km走行」もダテじゃない 寿命は延びる傾向に

西日本鉄道の1997年式3240号車。東京〜博多間の夜行バス「はかた号」にも使用され、20年近く在籍した(須田浩司撮影)。

バスは乗用車よりも寿命が長い乗りものといわれています。どれくらいの距離を走ることができ、何年くらいで寿命を迎えるのでしょうか。昨今はその寿命も延びつつあります。

一般路線バスと高速バスで寿命が違う

 バスの車両は、どれほど長持ちするのでしょうか。

 日本では一般的に、乗用車は走行距離10万kmが買い替えの目安といわれますが、これに対してバスの場合は、街なかを走る一般路線タイプの車両が50万kmから100万km前後、観光・高速路線タイプの車両が100万kmから200万km走ることができるといわれています。あくまで目安の数値ですが、一般路線バスでは1年間の走行距離がおおよそ5万kmから6万km、観光・高速路線バスではおおよそ10万kmから20万kmといわれていますので、計算上は、どちらも10年から20年程度維持できるというわけです。

 しかし実際には、バスの寿命は使用環境や走行距離などによって大きく変わってきます。

 街なかで走る一般路線バスの場合、発進と停止の回数は多いものの、高速走行はほとんどありません。エンジンにかかる負担がそれほどでもないことから、15年から20年程度が寿命といわれています。一方で観光バスや高速バスでは、1回の走行距離が長くなり、街なかに加えて高速道路での走行もありますので、そのぶんエンジンにかかる負担も大きくなり、エンジンの寿命が短くなりがちです。

 このため、観光・高速バスでは一般的に10年前後で寿命を迎えるといわれており、たとえば、はとバス(東京都)の観光バスは12年前後で廃車にしているそうです。1回の走行距離が観光バス以上に長い高速バスでは、寿命がさらに縮まる傾向に。特に、片道1000km以上を走る長距離夜行路線用の車両では、5年から7年ほどで寿命を迎えます。

 かつては、寿命を迎えた車両をすぐに廃車や除籍扱いにするケースが多かったのですが、現在は、エンジンや機器類のオーバーホール(分解しての点検・修理)および外観の塗り替え、補修などを行ったうえで引き続き運用に就くことも。ほかの路線への転用、あるいは高速バス車両を貸切用やイベント用へ転用するといったケースも多く見られます。車体やエンジン、機器類の耐久性が向上したこともあり、バスの寿命も延びる傾向にあるのです。

40年選手も!

 バス事業者は、各社独自の更新基準や更新サイクルを設けたうえで、在籍している車両の状態なども考慮しながら総合的に判断して更新計画を策定し、バス車両の更新(入れ替え)を行っています。

 更新のサイクルは各社様々ですが、たとえば西日本鉄道の場合、かつては一般路線バスがおおむね15年程度、高速バスがおおむね10年程度で更新の時期を迎えていましたが、現在は前者がおおむね20年前後、後者がおおむね12年から15年前後に。整備技術の向上や車両価格の高騰などを背景に、更新サイクルは以前より延びています。

 地域によっても事情は異なります。東京、名古屋、大阪といった大都市部では、厳しい排ガス規制に対応するために比較的短いサイクルで新車に入れ替える傾向が強い一方で、経営が厳しい地方のバス会社では、新車と中古車を同時に導入して車両を更新したり、中古で導入した車両をさらに中古車両で更新したりするケースも。導入から10年以上経過した高速路線用の車両に、大幅な更新工事を行って車両の更新時期を延ばすケースも見受けられます。

 もっともバスの場合、法定点検以外にもバス会社独自で定期点検やメンテナンスサイクルを定めているところも多く、しっかりと点検やメンテナンスを行えば、一般的にいわれているよりも長く使える、ということもいえます。ちなみに、いわゆるボンネットバスを除き、日本で走っている最も古いバス車両は、沖縄バスと東陽バス(いずれも沖縄県)で各1台保有する動態保存車です。沖縄の道路交通方式が右側通行から現行の左側通行に変更された1978(昭和53)年7月30日(通称:730〈ナナ・サン・マル〉)にあわせて導入された車両で、その車齢は約40年と長持ちです。現在、沖縄バスでは日曜午前、東陽バスでは日曜および祝日の特定ダイヤにてそれぞれ運行されています。

「生産追い付かぬ」観光バス 地方では中古市場も活況

 一方で、この数年来のバス車両の更新状況を見ていくと、ある傾向がみられます。ひとつは、「観光バスの新車の増加」です。

 訪日外国人のツアー団体客とシニア層による国内ツアーの利用が堅調な観光バス業界の現状に加えて、2012(平成24)年4月に関越道で発生した高速ツアーバス事故などを踏まえ、2014年4月に実施された「貸切バス新運賃・料金制度」で、バス会社の車両に投資できる環境が整いつつあるのがおもな理由です。2015年ころには「大型観光バスの生産が追いつかない」といった報道がなされたのも記憶に新しいところで、2017年には供給メーカー2社(三菱ふそうトラック・バスとジェイ・バス)が相次いで観光バスの新型モデルを発表しています。安全面への感心も高くなっていることから、今後しばらくはこの傾向が続くかと思われますが、2020年東京オリンピック開催以降も国内観光バスの需要が伸びるかは不透明です。

 そして、もうひとつは「地方で進む路線バスのノンステップ化」です。乗降口に段差のないノンステップバスは、まず大都市圏の事業者を中心に導入が進みましたが、これが地方にも普及してきています。すでにメーカー側のラインアップがノンステップタイプ主体になっていることや、バス会社側が補助金などを活用して新型ノンステップバスの導入を積極的に進めているのがおもな理由ですが、1990年代後半から2000年代初頭にかけて大都市圏で導入されたノンステップバスの一部が地方のバス会社に渡っていることも、普及率を上げている要因のひとつになっています。国土交通省が公表している「ノンステップバス導入率が高い事業者ベスト30」(2017年3月31日現在)で、山口県の防長交通やサンデン交通、北海道の函館バスといった地方のバス会社が30位以内に入っているのも興味深いところです。

 安全対策の強化と、乗り降りしやすいバスの普及をめざして新型車両の導入が進む一方で、中古バス市場も活発になっていると聞きます。「つい最近まで走っていたバスがあの地方都市で……」というのをときどき見かけますが、車両の性能や耐久性が向上するにつれ、今後ひんぱんにこのような状況を目にすることになるのかもしれません。

【写真】いまも走る日本一古いバスのひとつ

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