追加調達か、早期警戒機E-2D「アドバンスド・ホークアイ」 空自の新しい「空飛ぶ目」

追加調達か、早期警戒機E-2D「アドバンスド・ホークアイ」 空自の新しい「空飛ぶ目」

ノースロップ・グラマンの工場からロールアウトした航空自衛隊向けE-2D早期警戒機の初号機(画像:ノースロップ・グラマン)。

空自E-2D「アドバンスド・ホークアイ」の導入が進められています。早期警戒機に分類されるものですが、そもそもどのような飛行機なのでしょうか。誕生には、旧日本軍が大いに関わっていました。

そもそも「早期警戒機」とは?

 防衛省は2018年8月31日に発表した来年度防衛予算の概算要求に、航空自衛隊の早期警戒機E-2D「アドバンスド・ホークアイ」2機の調達費として544億円を計上しました。

「早期警戒機」とは、搭載する強力な大型レーダーで空中を監視し、味方の航空機や艦艇に敵の位置や数などを知らせることで、戦いを有利に進める航空機です。世界初の早期警戒管制機が実戦投入されたのは第二次世界大戦の末期のことですが、その開発には日本が大きな影響を与えています。

 地上に設置されたレーダーや軍艦に搭載されたレーダーには、水平線の影になることから低空を飛行する目標の発見が難しいという特性があります。アメリカ海軍は第二次世界大戦時、すでに駆逐艦クラスの軍艦にもレーダーを搭載していましたが、低空を飛行する日本陸海軍の特攻機を発見することができず、自軍や友軍のイギリス海軍の軍艦に、特攻機の突入を許してしまいました。このためアメリカ海軍は艦上攻撃機であるTBM「アベンジャー」の胴体下面にレーダーを搭載して、低空を飛行する特攻機を遠距離で探知する「TBM-3W」という名称の航空機を開発しました。このTBM-3Wが、世界初の早期警戒機と見なされています。

 アメリカ軍は全世界での作戦を想定していますが、敵地に侵攻する場合は地上レーダーの支援を受けられないことから、アメリカ海軍と空軍は第二次世界大戦後に低空目標だけでなく、全方位で広い空域を監視できる早期警戒機の開発に乗り出しました。やがて1950年代、アメリカ海軍はC-1「トレーダー」輸送機の胴体上部に、お皿のような形状の大型レーダーを収容するレーダードームを搭載した、空母に搭載する早期警戒機E-1「トレーサー」を実用化させます。

 E-1に搭載された大型レーダーは1分間に6回転することで全方位の捜索が可能となりました。E-1の後継機であるE-2「ホークアイ」も、E-1と同様にレーダーを収容するレーダードームが毎分6回転して、全周を捜索することができますが、捜索可能な空域が大幅に拡大したほか、E-1が同時に4から6個の目標を追尾し、そのうちの2個の迎撃を管制する能力しか持っていなかったのに対し、E-2は同時に250個の目標を追尾し、30個の目標の迎撃を管制する能力を備えています。

自衛隊への導入はあの有名な事件がきっかけ

 航空自衛隊は1970年代前半から、早期警戒管制機の持つ能力に加えて、機内から多数の目標に対する迎撃管制能力も備えた早期警戒管制機E-3「セントリー」の導入を検討していましたが、予算不足などで政府から導入を認められていませんでした。しかし1976(昭和51)年9月6日に発生した、ソ連防空軍に所属するMiG-25戦闘機の函館空港への強行着陸事件で、航空自衛隊のF-4EJ「ファントムII」戦闘機や地上レーダーが、超低空を飛行するMiG-25を見失ってしまったことから、急遽早期警戒機である「E-2C」の導入が決定。1983(昭和58)年から1994(平成6)年までに13機が導入されています。

 来年度概算要求に2機の調達費が計上された早期警戒機E-2Dは、このE-2Cの発展改良型です。

 E-2Dの外見はE-2Cとほとんど変わりなく見えますが、搭載するレーダーがE-2Cの「AN/APS-96」から、ロッキード・マーチンが開発した、より能力の高い「APY-9」AESAレーダーに変更されています。

 APY-9レーダーはE-2C同様にレーダードームを回転させて、全周に渡って空中と洋上を監視するモードに加えて、一定の範囲を重点的に監視するモード、レーダードームを目標の方向に向けて回転を止めて捜索を行なうモードも備えています。E-2Dのメーカーであるノースロップ・グラマンによれば、回転を止めて捜索を行なうモードを使用するE-2Dは、E-2Cの5倍以上の距離の探知ができるとのことです。

 空母に搭載するため機体の大きさに制限のあるE-2Cは、E-767などの早期警戒管制機や、近年増加しているビジネスジェット機をベースに開発された早期警戒機に比べて機内のスペースが小さく、レーダーの操作や味方との通信などを担当する電子システム士官は3名しか搭乗していません。わずか3名ですべての任務をこなさなければならないため、E-2Cの電子システム士官には大きな負担がかかっています。E-2Dのコクピットの液晶ディスプレイには電子システム士官の座席の液晶ディスプレイと同じ画像を表示する能力を備えており、必要であれば副操縦士が電子システム士官の任務の一部を担当することができます。

 E-2Cとアメリカ海軍の運用するE-2Dにはトイレがありませんが、航空自衛隊の導入するE-2Dにはユニット式のトイレと、食べ物を温めたり暖かい飲み物を作ったりできるギャレーが追加装備されています。航空自衛隊のE-2Cは、空母から運用されるアメリカ海軍のE-2CとE-2Dに比べて作戦時間が長く、乗員には大きな負担がかかってきましたが、E-2Dはその負担を大幅に軽減することができます。

CEC機能がほぼ間違いなく追加されるだろうワケ

 防衛省は2014年度から2018年度までに、E-2Dを4機予算化しており、2019年度防衛予算が概算要求の通りに認められれば、航空自衛隊のE-2Dの発注数は合計6機ということになります。

 ただ、2019年度概算要求には、発注から納入までに時間のかかるE-2Dの部品の調達費として265億円が計上されているほか、アメリカ国防総省の機関で安全保障に関する政策を担当する国防安全保障協力局が9月10日に、日本に対して最大9機のE-2Dを売却することを承認し、アメリカ連邦議会に輸出承認の審議を求める通告を行なっていることなどから、航空自衛隊は2020年度以降も、E-2Dの調達を続けていく可能性が高いと考えられます。

 航空自衛隊は早期警戒管制機(AWACS)E-767を運用する第602飛行隊、E-2Cを運用する第601飛行隊と第603飛行隊の、3個飛行隊で「警戒航空隊」を編成していますが、2019年度概算要求には、日本周辺の警戒監視能力を強化するため、飛行警戒隊を、「警戒航空団」に格上げするための予算も計上されています。

 2019年度概算要求に調達費が計上されたE-2Dは、警戒監視能力を強化するための増強分とも考えられますが、一方で初期に導入したE-2Cの老朽化が進んでいることから、航空自衛隊は老朽化したE-2Cの後継機に充てる可能性も示唆しており、今後E-2Cは順次E-2Dで更新されると見られています。

 E-2Cの後継機に関しては一時期、国内開発も取りざたされていましたが、国産早期警戒機ではなくE-2Dを選んだ最大の理由は、E-2Dがイージス艦などと情報を共有するCEC(共同交戦能力)を備えている点にあると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 アメリカ海軍は巡航ミサイルなどの低空を飛行する目標をE-2Dで探知し、E-2Dから送信された目標のデータを使用してイージス艦などに搭載された「SM-6」ミサイルで迎撃する計画を進めています。2017年11月に初飛行した航空自衛隊のE-2Dの初号機はCEC機能を備えていませんが、海上自衛隊がSM-6ミサイルの導入を決定していることなどから、複数のメディアは防衛省がCEC機能の追加を検討していると報じています。

 防衛省・自衛隊は陸海空三自衛隊を密接に連携させる「統合運用」の強化を進めており、今後の航空自衛隊の早期警戒機には、これまで以上に海上・陸上自衛隊との連携能力が必要となることなどから判断すれば、E-2Dの追加調達は適切な判断だと筆者は思います。

【写真】回転式レーダードーム搭載機の元祖! E-1「トレーサー」

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