「イージス艦」なぜ似たり寄ったり? 西側諸国の主力艦、バリエーションに乏しいワケ

「イージス艦」なぜ似たり寄ったり? 西側諸国の主力艦、バリエーションに乏しいワケ

ノルウェー海軍のフリチョフ・ナンセン級フリゲート「ヘルゲ・イングスタッド」。イージス戦闘システムを搭載した「イージス艦」でもある(画像:ノルウェー軍)。

2018年時点で就役している西側諸国の「イージス艦」とよばれる艦艇は、大きくふたつのタイプに分類され、艦上構造物に違いはあれど、それぞれにおおむね似たような見た目をしています。もちろん理由があります。

ほぼ沈んだあの船も「イージス艦」

 2018年11月8日、ノルウェー西部のベルゲン沖で、NATO(北大西洋条約機構)が主導する多国間軍事演習「トライデント・ジャンクチャー」に参加していたノルウェー海軍のフリゲート「ヘルゲ・イングスタッド」がマルタ船籍の石油タンカーに衝突され、ほぼ水没するという事故が発生しました。

 ほとんどのメディアは「ノルウェー海軍の軍艦」とだけ報じている「ヘルゲ・イングスタッド」ですが、実は2006(平成18)年から2011(平成23)年に同艦を含めて5隻が就役したフリチョフ・ナンセン級フリゲートは、イージス戦闘システムを搭載した、俗に言う「イージス艦」なのです。

 フリチョフ・ナンセン級の全長は、海上自衛隊のイージス艦であるこんごう型が161mなのに対して131m、基準排水量もこんごう型の7250tに対して4681tに過ぎず、2018年11月の時点で就役している世界のイージス艦のなかでは最小です。レーダーもこんごう型などが搭載している「SPY-1D」のアンテナ素子を減らして送信電力を抑えた「SPY-1F」を搭載しているほか、イージス戦闘システムも簡易型の「イージスIWS(Integrated Weapon System:統合兵器システム)」を使用。さらにミサイルのVLS(垂直発射装置)の数もこんごう型の90基に対して、8基と少なく、艦対空ミサイルもこんごう型などに搭載されている「SM-2」(「スタンダード」ミサイルシリーズのひとつ)ではなく、イージス艦ではない海上自衛隊のあきづき型護衛艦などが搭載している、「スタンダード」に比べて射程の短い「ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile:発展型シースパロー)」を搭載しています。このためフリチョフ・ナンセン級はこんごう型のように艦隊全体の防空を担当する艦ではなく、あきづき型と同様、自艦とその周辺を航行する味方艦艇の防空も行なえる、汎用フリゲートともみなされています。

細々と見て行けば違いはあれど…?

 フリチョフ・ナンセン級フリゲートは、スペインが2002(平成14)年から2012(平成24)年までに5隻を就役させた、イージス戦闘システムを搭載するアルバロ・デ・バサン級フリゲートの設計を流用して開発されています。

 アルバロ・デ・バサン級は全長146.72mとフリチョフ・ナンセン級よりやや大型のイージス艦ですが、こんごう型などと同じSPY-1Dレーダーを搭載しており、こんごう型などに比べれば多少機能を制限したイージス戦闘システムを使用しているものの、SM-2ミサイルの運用能力を備えています。

 アルバロ・デ・バサン級は運用コストを抑える事に重きを置いて開発されており、アーレイ・バーク級やこんごう型などの日米のイージス艦が、ガスタービン・エンジン4基を使用して航行するのに対し、アルバロ・デ・バサン級はガスタービン・エンジン2基と、燃費効率の良いディーゼルエンジン2基を併用することで燃料の消費量を抑えています。このためアーレイ・バーク級やこんごう型などの最大速度が時速30ノット以上であるのに対し、アルバロ・デ・バサン級は時速28.5ノットと、若干低速になっています。

 アルバロ・デ・バサン級の就役により、アメリカ海軍や海上自衛隊ほどの規模を持つ海軍でなくても、イージス艦を保有する道が開けたと言っても過言ではなく、オーストラリアもアルバロ・デ・バサン級の設計を流用したホバート級ミサイル駆逐艦の整備を進めています。

 ホバート級はこんごう型などと同じSPY-1Dレーダーを搭載。海上自衛隊のイージス艦あたご型と同じベースライン7と呼ばれる仕様のイージス戦闘システムを使用しています。また海上自衛隊が2隻の建造を進めているイージス艦まや型と同様、目標情報をほかの艦艇やE-2D早期警戒機などと共有できる、共同交戦能力(CEC)にも対応しており、2022年以降に海上自衛隊も導入する、巡航ミサイルへの対処能力の高い「スタンダード」ミサイルの搭載が予定されているほか、トマホーク巡航ミサイルの搭載能力も備えています。

 オーストラリア海軍は2017年までにホバート級3隻の就役を予定していましたが、オーストラリアの造船所の建造体制の整備が遅れたことなどから、2018年11月の時点では1番艦「ホバート」と2番艦「ブリスベン」のみが就役しています。

大きく分類するとふたつのタイプになるワケ

 海上自衛隊のイージス艦であるこんごう型、あたご型、まや型はアメリカ海軍のイージス艦アーレイ・バーク級を、海上自衛隊の要求に合わせる形で改設計して開発されました。韓国海軍が2008(平成20)年から2012年にかけて3隻を就役させたイージス艦セジョン・デワン(世宗大王)級ミサイル駆逐艦と同様、アーレイ・バーク級を元にして開発されています。

 セジョン・デワン級は元となったアーレイ・バーク級の改良設計型であるフライトIIA仕様より船体が10cm延長されており、満載排水量は2018年11月の時点で就役している世界のイージス艦のなかで最も大きい、1万0455tに達しています。

 セジョン・デワン級は国産巡航ミサイル「天竜」と国産対潜ミサイル「赤鮫」用の国産VLS(48基)が搭載されているほか、短射程艦対空ミサイル「RAM」(Rolling Airframe Missile)と30mmCIWS「ゴールキーパー」を備えるなど、他国のイージス艦に比べて強力な兵装を持つことが特徴となっています。搭載するレーダーはSPY-1D、イージス戦闘システムもベースライン7を使用しており、韓国政府は2018年10月に、こんごう型やあたご型などが搭載している弾道ミサイル迎撃用ミサイル「SM-3」を導入する方針を明らかにしています。

 現時点で就役しているイージス艦は、アーレイ・バーク級とアルバロ・デ・バサン級を元にしているため、フリチョフ・ナンセン級を除くと、どの国の艦も見た目が似ていますが、オーストラリアが新たに建造するイージス艦のハンター級フリゲートは、イギリス海軍向けに開発された26型フリゲートを元にしており、レーダーもSPY-1シリーズではなく、国内で開発される「CEAFAR」が搭載されます。またスペインが建造を計画している新型イージス艦の110型フリゲートも、艦橋などの艦上構造物のデザインがステルス性能を追求した設計になると見られています。

 日本人はイージス艦と言えば、海上自衛隊のこんごう型、あたご型、まや型と、こんごう型の元となったアーレイ・バーク級、同級の元となったタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の姿が思い浮かぶと思いますが、こんごう型のような大型イージス艦を持てる国は少なく、今後は小型で独自性のあるデザインのイージス艦が、増えていくのではないかと筆者(竹内修:軍事ライター)は思います。

【写真】個性あふれるロシアのミサイル艦

関連記事(外部サイト)