意外と身近な不発弾、実際どう処理? 危険手当1万400円、自衛隊不発弾処理隊の戦い

意外と身近な不発弾、実際どう処理? 危険手当1万400円、自衛隊不発弾処理隊の戦い

米国製250kg爆弾の信管抜き取り作業を行う隊員(画像:陸上自衛隊)。

住民避難や交通の規制など、周囲に大きな影響を与えることもある不発弾処理。その作業にあたる自衛隊の不発弾処理隊は、2018年12月現在まで一度の事故もない、プロフェッショナル集団です。

決して他人事ではない不発弾

 2013(平成25)年6月4日、東京都北区の工事現場において、旧日本軍の高射砲弾と見られる不発弾が自衛隊によって処理されました。現場はJR上中里駅に近く、新幹線53本、在来線106本の列車が一部区間で運転を見合わせたため、約9万人の足に影響が出たといわれています。この不発弾は同年3月に発見されていて、処理日には11時から14時までのあいだ、現場から半径100m以内への立ち入りが制限されました。

 そもそも不発弾とは、日本国内で製造されたものの使用されず適切に破棄されなかった爆弾や、戦時中に米軍などの部隊が日本を攻撃した際に、爆発することなく地中に埋まってしまった爆弾などのことを言います。

 関東周辺で発見される不発弾は、幕末から日清戦争、第二次世界大戦などの非常に幅広い年代で使用されてきたものになります。その発見される種類も、陸上用、艦艇用、航空用、研究・開発用と多岐に渡り、旧日本軍が保有していたものから、空襲を行ったアメリカのものなど製造国も様々で、実に多様な不発弾が発見されます。

 戦後しばらくのあいだは、旧日本陸海軍のものも多く残されており、1952(昭和27)年から1957(昭和32)年までに、当時の通商産業省(現・経済産業省)が爆薬処理経費の予算を計上して、都道府県に委託して処理していました。この時期以降に発見された不発弾は自衛隊が処理していますが、第二次大戦で激戦地となり、多数の不発弾が埋まっている沖縄を除いて、自衛隊独自で不発弾の探査や発掘をしたことはありません。

 ただし、自衛隊も埋まっている全ての不発弾の状況を把握している訳ではないので、不発弾の多くは工事現場などから偶然発見されることが多いといわれます。

 2008(平成20)年1月には、沖縄県糸満市にて、水道管埋設工事のためにパワーショベルで地面を掘削していたところ、掘り当ててしまった不発弾が爆発し、作業員の男性が顔に重症を負いました。約50m離れた場所にあった施設の窓ガラス約100枚も、その時の爆風の衝撃波で割れています。沖縄県警の調べによると、このときの不発弾は、アメリカ製の250kg爆弾であったと断定されました。

意外と身近に埋もれてるかも もし見つけてしまったら?

 こうして調べてみると、実は我々の生活圏のなかにも、不発弾が埋もれている可能性が十分にあることが分かってきます。いまは静かに眠っている不発弾が、突如として爆発するかもしれないのです。

 もし不発弾を発見してしまった場合、どうすればよいのでしょうか。

 まずは、不発弾に近寄ることなく、触れることなく、警察に連絡します。警察官が現場に到着すると、すぐに不発弾の確認が行われます。この結果、不発弾でないと判断されたり、不発弾でも危険性がないと判断されたりすれば、そのまま警察が処分します。危険性が確認されたり、駆けつけた警察官では対処しきれなかったりする場合は、自衛隊の不発弾処理隊が登場します。

 自衛隊の不発弾処理隊は全国に4つあり、最も処理件数が多いのは、沖縄県の那覇駐屯地に所在する第15旅団隷下の第101不発弾処理隊です。

 第101不発弾処理隊は、1972(昭和47)年から2018(平成30)年11月15日までに3万7288件、重量にして1799tもの不発弾を処理してきました。しかも、このあいだに1件の事故も起こしていません。第101不発弾処理隊以外の処理隊も、同様に無事故で任務を完遂しています。

 不発弾処理隊によって危険であると判断された不発弾の一部には、動かすことで爆発する可能性のあるものもあります。その場合は、現地にて不発弾を処理します。といっても、現地で爆発させることはまれで、基本的には爆弾に取り付けられた信管(起爆装置)を除去することによって、その爆弾が爆発しないように安全化することになります。

 無論、作業中に爆発しない保証はありません。危険性が確認された場合、現場周辺の住民の安全を確保するために、自治体、警察、消防、自衛隊などによって「不発弾処理対策協議会」が開かれ、いかに安全、確実に不発弾を処理するのかが話し合われます。

具体的にどう処理するの? 2013年南品川の場合

 ちなみに冒頭の北区の事例から4か月後、2013(平成25)年に東京都品川区南品川で処理された不発弾は、作業そのものは約3時間半で終了しましたが、発見から処理するまでに1か月半ほどかかっています。これでも都心での不発弾処理対応としては、異例の速さだったといいます。

 不発弾処理現場では、万が一の爆発に備えて、直径2mから3m、高さ6mほどの、円筒形の「ライナープレート」と呼ばれる鉄板で強固な防御壁を構築し、そのなかで作業が行われます。その周囲を「1t土嚢」で覆い、場合によってはその外側をさらに土で覆います。

 ここまでの準備ができたら、次は住民に対する周知を自治体が行います。具体的な避難半径は、5インチ艦砲弾で最大半径156m、50kg爆弾で半径166m、500kg爆弾では半径394mが避難半径になります。現場が都心部の場合、この広報と交通規制をかけるのに時間がかかるというわけです。

 処理当日は、現場から離れた場所に現地対策本部を設置します。ここでは、不発弾の処理がスムーズに進むよう、関係各機関が情報共有するとともに、避難対象地域に居住する住民の避難も受け入れます。

 その後、避難誘導が行われ、交通規制も掛けられます。避難半径内に住民が残っておらず、交通の規制も始まると、自衛隊による不発弾処理が開始されます。もし、処理中に避難半径内への人の立ち入りが確認されると、作業はいったんストップしてしまうため、避難や交通規制の時間も長引くことになります。

周囲の安全は確保した、それからどうする?

 前述のように、不発弾の処理方法はふたつです。現地で爆破可能と判断されれば、その場で爆破処理します。もし、爆破不可能と判断されれば、爆弾に取り付けられた信管を除去するなどして、不発弾を安全化します。処理の成功が確認されると、交通規制は解除され、住民も自宅へと戻ることができます。

 信管除去処理の場合、不発弾は自衛隊が回収し保管します。保管された不発弾は、危険性が高い場合は別の安全な場所で爆破処理されますが、危険性が低いものは、処理企業に引き渡して処分してもらうそうです。

 不発弾処理隊の隊員たちは、発見された不発弾の識別や処理方法について、徹底的に議論し、もっとも安全かつ確実な処理方法を導きだすといいます。そのため、処理作業中は、あくまでも淡々と定められた手順で安全確実な作業をするだけだそうです。

 ちなみに、危険と隣り合わせで作業する不発弾処理隊の隊員たちへは、いわゆる危険手当として、「不発弾の信管除去などの最も危険な作業に従事した場合には、日額1万400円」「信管除去など以外の(比較的危険度の低い)不発弾の捜索や発掘などに従事した場合には、日額750円」が支給されます。

 不発弾処理隊は、「2020年東京オリンピック・パラリンピック」においても、対テロ・ゲリラ対策の一環として、警察と連携して爆発物の処理にあたる可能性が指摘されています。また、年々不発弾の処理件数は減少傾向にあるものの、その数がゼロになるのはまだ先の事でしょう。

 日本の地中に眠る不発弾がなくならない限り、不発弾処理隊の奮闘は続くのです。

【写真】避難半径は数百メートル、1t爆弾の不発弾

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