「いずも」空母化の死角は「人」か F-35B戦闘機の艦上運用、必要増員は200名規模!

「いずも」空母化の死角は「人」か F-35B戦闘機の艦上運用、必要増員は200名規模!

海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」(2018年11月21日、乗りものニュース編集部撮影)。

海自ヘリコプター搭載護衛艦いずも型の、事実上の空母化が発表されました。改修や載せる戦闘機も必要ですが、実際の運用にはなにより、人員の増員が必要です。実はこれが、最も大きな課題かもしれません。

「いずも」空母化、必要なのは「改修」や「戦闘機」だけじゃない

 2018年12月18日(火)、政府は2019年度以降における「防衛計画の大綱」および「中期防衛力整備計画」を発表しました。計画には、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦いずも型(「いずも」「かが」)に対し、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)戦闘機の運用能力を付加する改修を行うことが明記され、また同時にSTOVL戦闘機F-35Bを18機導入する方針が定められました。

 また、これと前後して全国紙などが報じたところによると、F-35Bは将来的に最大42機を導入する可能性があり、また1隻のいずも型に対して8機のF-35Bを搭載見込みであるとされます。現在、海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦専属の航空部隊を持っておらず、陸上飛行場に配備されたSH-60J/K「シーホーク」哨戒ヘリコプターを、必要に応じて護衛艦へ派遣する形で運用しており、F-35Bも同様、航空自衛隊に2個飛行隊を配備し、それぞれ交代しながら艦載されることになるのかもしれません。

 いずも型に対して、8機のF-35Bを艦載するための改修を施すこと自体は、それほど難しくはないでしょう。いずも型は、STOVL戦闘機を運用する諸外国の軽空母に比べても大型の部類に入るため、物理的には十分可能だと推測されます。しかしながらF-35Bを運用するには、ハードウェアよりもさらに難しいひとつの問題を解決しなくてはなりません。

 その難しい問題とは「人」です。

戦闘機を運用するのに必要な「人」は?

 戦闘機を運用するには、非常に多くの専門職を必要とします。

 たとえば飛行場におけるそれには、機種によって若干の差異はありますが、日常的な点検や運用を行う「列線航空機整備員」、定期整備や急な故障の整備を担当する「検査隊航空機整備員」、武装の搭載を担当する「武器弾薬員」、無線装置などの整備を担当する「機上整備員」、油圧系統の整備を担当する「油圧整備員」、レーダーなどの整備を担当する「火器管制装置整備員」、パイロット用の装具などの整備を担当する「救命装備員」、エンジンの整備を担当する「エンジン整備員」、燃料の管理、給油を担当する「燃料員」、損傷の修復などを担当する「工作員」、戦闘機支援機材の整備を担当する「動力機材整備員」、飛行の計画などを立案する「飛行管理員」、そしてもちろん機の操縦を担当する「パイロット」と、多岐にわたる技能を持った人たちが関与しています。

 つまり航空母艦で戦闘機を運用するには、機体だけではなく「飛行場の機能をほぼ丸ごと移す必要がある」のです。もちろん航空母艦という特殊な環境において、発着艦や甲板の管制などを行う人員も増やさなくてはなりません。

 現在いずも型の定員(運用に割り当てられた人員数)は約470名であり、うちヘリコプターを運用するための航空要員は200名を占めます。戦闘機を8機さらに追加するには、さらに200名程度の航空要員が必要となるでしょう。

「人」がいないと「絵に描いた餅」に

 ところがいずも型は、実際はもっと少ない人数で、定員割れのまま運用しているのが現状です。このまま戦闘機を艦載した場合、万が一の有事の際においてまっとうな運用ができず、実質的な戦力は計画から大きく損なわれたものになってしまうことは避けられない、と筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は考えます。

 アメリカ海軍の原子力空母では、これまで1機あたり1日2回出撃した実績がありますが、これは数日間しか実行できない数字です。なぜならば航空要員の負担が大きすぎるためであり、数週間から1か月といった長いスパンでは、1機あたり1日1回出撃が限界となっています。もともと小型であり、1日あたりの出撃数を増やすことが難しいいずも型において、人の数の問題から出撃数がさらに減じてしまっては、当初の計画は「絵に描いた餅」となりかねません。

 F-35は「アリス(ALIS)」と呼ばれる人工知能が組み込まれており、機の状態を自己診断し必要な整備を指示、また部品を自動で発注する能力を持ち、省人化に配慮がなされているものの、それでも実際に何かを行うのは人間である以上、「マンパワー」はどうしても必要です。

 もちろん、陸上飛行場においても「人」が重要である本質は変わりませんが、これまでにない空母では既存の基盤を流用するには限度があり、負担が増すことは避けられません。「人」の確保はいずも型における大きな課題となるはずです。

【写真】強襲揚陸艦「エセックス」甲板上のF-35B戦闘機

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