大型車のタイヤが脱落、後続車に激突も… 冬に増加の車輪脱落、「左後輪ばかり」のナゾ

大型車のタイヤが脱落、後続車に激突も… 冬に増加の車輪脱落、「左後輪ばかり」のナゾ

大型車のタイヤは直径1mを超えるものもある。写真はイメージ(画像:Tewin Kijthamrongworaku/123RF)。

大型車の車輪が走行中に脱落する事故が増えており、後続車や歩行者への影響も大きいことから、国土交通省が運送事業者などに整備の徹底を呼び掛けています。このような事故は「冬の寒冷地で多発」「脱落車輪は左後輪がほとんど」という特徴も明らかになっています。

原因は「慌てて冬タイヤに履き替える」から?

 大型車のタイヤが、ホイールやボルトの破損によって走行中に脱落するという事故が増えています。

 国土交通省によると、このような事故は2015年度に41件、2016年度に56件、2017年度には67件と増加。事故の8割以上が11月から3月までのあいだに集中しており、うち半数以上が北海道、東北、北信越で発生。つまり、冬に積雪地域で多発しているそうです。

 2017年9月には、中央道でトラックのタイヤが脱落し、後続のトラックを直撃、ドライバーが意識不明の重体となる事故も発生しています。ほかのクルマや歩行者などにも大きな影響を及ぼしかねない車輪の脱落、なぜ増えているのか、国土交通省自動車局整備課に聞きました。

――大型車の車輪脱落事故は、なぜ増えているのでしょうか?

 冬タイヤへの交換が特定の時期に集中し、慌てて交換するケースが多いのが主な理由と考えています。タイヤ交換から1〜2か月後に脱落するケースが多く、原因の9割は、ホイールを固定するボルト、ナットの締め付け不良や、タイヤ交換後における「増し締め」(50〜100km走行後、緩みを確認し再度ナットを締めること)の未実施といった作業ミスによるものです。

 地域により雪の降り始めが異なりますが、近年は11月に交換されたタイヤが、12月に脱輪するケースが多くなっています。一方、これまでの累積件数では2月が最多です。比較的暖かい地域では12月や1月にタイヤを交換することもあるためと考えています。

――春になれば夏タイヤに履き替えますが、暖かい時期にはあまり発生していないのはなぜでしょうか?

 夏タイヤから冬タイヤへの交換は、「雪が降ってきたから急いで替えないと」となりがちな一方で、冬タイヤから夏タイヤへの交換は、慌ててやる必要はありません。計画的に確実な整備を心掛ければ防げる事故であることから、タイヤ交換を計画的に行うことも啓発しています。

左の後輪ばかりが脱落している理由

 近年発生した車輪の脱落事故は、そのほとんどが左後輪。2017年度は、左後輪が実に83%、右後輪が16%、右前輪が1%、左前輪は0件という内訳でした。

 これについて国土交通省は、「原因については引き続き調査中」としつつ、次のような可能性が考えられるとしています。

・右折時は、比較的高い速度を保ったまま旋回するため、遠心力により積み荷の荷重が左輪に大きく働く。
・左折時は、低い速度であるが、左後輪がほとんど回転しない状態で旋回するため、回転方向に対して垂直にタイヤがよじれるように力が働く。
・道路は中心部が高く作られている場合が多いことから、車両が左(路肩側)に傾き、左輪により大きな荷重がかかる。

 また、前輪タイヤの脱落が少ないことについては、異常が発生した場合にハンドルの振動などで運転手が気づきやすいためと推定。つまり、左側の車輪は右と比べて負荷が大きく、しかも後輪は変化に気づきにくいため、左後輪の脱落につながっている可能性がある、というわけです。北海道トラック協会も、「左前輪が走行中に音を立て、ドライバーがそれに気づき、外れる寸前で停車したという事例もあります。しかし後輪の変化はわかりづらいでしょう」といいます。

 ただ北海道トラック協会は、車輪の脱落が左後輪に集中していることには、別の理由もあるのではないかと推測します。

「2010(平成22)年に大型車のホイール規格が、世界基準といえる『ISO方式』へ全面的に切り替わりました。それまで採用されていた日本独自の『JIS方式』では、右側の車輪のボルトは『右ねじ(右回し)』、左側は『左ねじ(左回し)』でしたが、新たなISO方式では左右輪とも右ネジです。この新方式を採用したトラックの増加と比例するかのように、脱落事故が増えています」(北海道トラック協会)

 左右輪でボルトの回転方向が異なる従来型のJIS方式では、タイヤの回転方向とねじの緩み方向が反対になり、走行すれば自然にボルトとナットが絞めつけられていましたが、新しいISO方式となって以後、左側の車輪のボルトはタイヤの回転方向と同一に。このため、走行によってだんだん緩んでくることがあるのではないか、という声が北海道トラック協会の会員から上がっているそうです。

ホイール規格の変更、事故との因果関係はあるのか

 国土交通省の統計に基づく全日本トラック協会の資料によると、脱落した車両のホイール規格は2015年にJIS方式が20件、ISO方式が21件だったのが、2017年にはJIS方式が20件に対し、ISO方式が47件に増加しています。

 しかしながら国土交通省自動車局整備課によると、ISO方式のトラックが増え、JIS方式が減っているため、保有台数の割合からすれば、事故がISO方式に偏っていると見るべきではないといいます。「近年増えている要因はやはり、タイヤの交換時『あわて』が目立つようです」とのこと。

 一方、北海道トラック協会によると、車輪の脱落防止については毎年のように啓発を強化し、運送各社では整備管理者がボルトのトルク(締め付けの度合い)も管理しているといいます。「それでも事故が年を追うごとに増え、しかも左後輪に集中しているのは、単に『右よりも負荷が大きいから』だけでは説明がつかないでしょう」とのこと。

 全日本トラック協会も、運行前の点検は必ずあり、ボルトがガタガタの状態で走っているトラックが多いとは考えづらいといいます。「何らかの予兆があるはずで、それを突き止めることが大切でしょう。いずれにしても、ホイールやボルトなどの正しい組み付けや、走行前の点検が大変重要であることをぜひ知っていただきたいです」と話します。

 ちなみに、車輪の脱落は2000年代前半、三菱製の大型トラックでタイヤと車軸をつなぐ「ハブ」の破損による事故が相次ぎ、社会問題となりました。こうした事態を受け、国土交通省では2008(平成20)年、大型車の運行前や3か月点検時におけるホイールやボルトの点検基準を強化。これが一定の効果を挙げたといい、2004(平成16)年度に87件あった車輪脱落事故件数は、2011(平成23)年度には11件まで減りました。JIS方式が主流だった時代にも事故が多く、それを減らしたという経緯があるのです。

 しかしそれ以降、事故件数は増加に転じています。国土交通省自動車局整備課は、ISO方式特有の原因があるのかどうかも、今後調査していくといいます。

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