ボーイング最新給油機KC-46A初納入 原型は767…どんな飛行機? 日本と浅からぬ縁あり

ボーイング最新給油機KC-46A初納入 原型は767…どんな飛行機? 日本と浅からぬ縁あり

アメリカ空軍と航空自衛隊への導入が決定している、KC-46A「ペガサス」空中給油・輸送機(画像:ボーイング)。

ボーイング製空中給油機KC-46Aの初号機が、アメリカ空軍に納入されました。原型は同社の767型機で、旅客機として日本でも広く知られる機です。KC-46Aを通し、767型機が歴史に残した足跡を振り返ります。

767を原型とする空中給油機がロールアウト

 ボーイングは2019年1月10日(木)、アメリカ空軍にKC-46A「ペガサス」空中給油・輸送機の初号機を納入したと発表しました。

 アメリカ空軍は空中給油・輸送機として、ボーイング707旅客機の原型となったジェット輸送機「367-80」をベースに開発されたKC-135「ストラトタンカー」を397機、DC-10旅客機の貨物機型をベースに開発されたKC-10「エクステンダー」を58機、航空自衛隊も運用しているC-130輸送機をベースに開発されたKC-130を60機保有しています(2018年4月時点)。

 主力空中給油・輸送機のKC-135は、最終号機の製造から50年以上が経過しており、アメリカ空軍は1990年代後半から、後継機となる「KC-X」の選定を開始。2011(平成23)年2月にボーイングが提案したKC-46AがこのKC-Xに選定され、今回、その初号機が納入されたというわけです。

 空中給油には、給油機が給油を受ける航空機に「給油パイプ(ブーム)」を差し込んで給油する「フライング・ブーム」方式と、給油機から先端に漏斗のような形のエアシュートの付いたホース(ドローグ)を伸ばし、給油を受ける航空機が自機の給油パイプをエアシュートに差し込んで給油する「プローブ・アンド・ドローグ」方式の2種類があります。

 KC-135やKC-10がフライング・ブーム方式の給油をする場合、機体の後部に配置された「ブーマー」と呼ばれる操作員が、目視で給油を受ける航空機を確認しながらブームを操作して、その給油口にブームを差し込んでいますが、ブーマーがこの作業をスムーズにこなせるまでには、かなりの熟練が必要とされます。これに対してKC-46Aは、操縦席後方に配置された3D対応のゴーグルを着用したブーマーが、機体底部に設置された3次元立体視が可能なカメラの捉えたブームの様子を見ながら、ブームを操作して給油を行なう仕組みとなっています。

 このシステムには、まだいくつかの技術的問題が残されていますが、ボーイングはすでにその解決方法を提示しており、いずれこれが実用化されれば、KC-135などの空中給油機よりも効率的な空中給油が可能になります。

原型機「767」がもたらした「変革」とは?

 KC-46Aの原型機である「767」は、民間機としても様々な点で航空の世界に変革をもたらした航空機と言えます。

 そのひとつは、乗務員のコスト面です。767以前のほとんどの旅客機は、機長と副操縦士のほかに、多数の計器やシステムを監視する「航空機関士」を必要としていました。これに対して767は、多数のアナログ計器を、合計6基のディスプレイに表示する「グラスコクピット」と、エンジンや油圧システム、電気システムなどをコンピューターが監視して、問題が発生した際にはパイロットによる問題箇所の発見をサポートする「EICAS(エンジン計器・乗員警告システム)」の採用により、航空機関士を不要としました。

 航空機の操縦は、基本的に機種ごとに操縦資格が必要とされますが、ボーイングは767と、同時期に開発された旅客機「757」をできる限り共通化。その結果、767または757の操縦資格を持つパイロットは、両機の相違点についての地上講習を受ければ、両方の操縦が認められました。経費のかかる飛行訓練が不要であることは、大幅な経費削減にもつながりなり、先述の航空機関士が不要なこととあわせ、767あるいは757を導入した多くの航空会社は、人件費の大幅な削減に成功したと言われています。

 ほか、双発機への認識を大きく変えたことも挙げられるでしょう。エンジン2基の双発機は、1基が飛行中に停止した場合、一定時間内に空港へ緊急着陸することが可能な航空路でのみ飛行が許可されています。

 767が登場した1980年代前半まで、FAA(アメリカ連邦航空局)とEASA(欧州航空安全機関)は、洋上を飛行する双発機が緊急時に1基のエンジンのみで飛行できる時間を60分以内に設定しており、このため双発機の長距離路線への就航は困難でした。しかし機体、エンジン共に信頼性の高い767の登場により、FAAとEASAは1基のエンジンのみで洋上を飛行できる時間を段階的に緩和し、最終的に767の1基のエンジンで飛行できる時間は3時間まで延長されています。

 767の登場まで、洋上を長時間飛行する国際路線には、燃料消費量が多くそのぶん運用コストも高い、DC-10をはじめとするエンジン3基の「三発機」や、747のようなエンジン4基の「四発機」が投入されていました。そうしたなか、767が洋上飛行制限に大幅緩和の道をひらいたことにより、現在では多くの長距離路線が、三発機や四発機より運用コストが安い、双発機によって運航されるようになっています。

767と日本の浅からぬ縁

 767は日本とも縁が深く、また日本に大きな影響を及ぼした航空機でもあります。

 ボーイングは1970年代初頭、767の対等な共同開発を日本へ打診、これは日本側の意志決定の遅れから実現しませんでしたが、最終的に日本の航空産業は、767の16%の製造を請け負っています。これにより両者の関係は深まり、767に続いて登場した「777」では21%、2006(平成18)年に生産が開始された「787」では35%にまで、日本の航空産業の参画比率は上昇しました。767によって開かれた、ボーイング製旅客機製造への参画は、日本の航空産業にとって、業界全体を支える屋台骨というべき事業になっています。

 航空機メーカーが新型の旅客機や貨物機を開発する際には、メーカーに開発・製造を決断させるだけの十分な発注を行い、計画の後ろ盾となる航空会社が必要で、その後ろ盾となる航空会社を航空業界では「ローンチ・カスタマー」と呼びます。767では、JAL(日本航空)が胴体を延長した「767-300」の、ANA(全日空)が767-300の航続距離延長型「767-300ER」を貨物機へと改修した「767-300BCF」の、それぞれのローンチ・カスタマーとなっています。

日本との縁は民間のみならず

 日本で767を運用しているのは、航空会社だけではありません。航空自衛隊は1990年代に、「767」では初の軍用機型となる早期警戒管制機「E-767」を4機、2000年代に空中給油・輸送機「KC-767」を4機、それぞれ導入。また前述のKC-46Aについても、2019年1月時点で2機を発注済みで、これに加え今後、新たに4機を導入する方針です。

 旅客機としての767は、後継機となる787の登場以降、新規の受注が無く、受注済みの機体の引渡しが完了した2014年以降、生産が行なわれていません。

 ただ、民間貨物機型の767-300Fは2014年以降も堅調な受注を獲得しており、今後も生産が継続されます。また軍用機型もボーイングは2019年1月の時点で、アメリカ空軍から52機、航空自衛隊から2機のKC-46Aを受注しており、将来的にアメリカ空軍は179機、航空自衛隊も上述のように、発注済の2機を含めて6機の導入を計画しており、軍用機型の生産は継続されます。

 JALやANAでは、初期に導入された767-200は退役していますが、767-300と767-300ERは、両社やAIR DOの主力機として活躍しています。航空自衛隊が運用する軍用機型も含め、767は今後も長きに渡り、日本にとって重要な航空機であり続けます。

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