都営浅草線の「レール破断」考えられる要因は 異常発見の仕組みは19世紀に実用化

都営浅草線の「レール破断」考えられる要因は 異常発見の仕組みは19世紀に実用化

都営浅草線の5500形電車(2018年6月、恵 知仁撮影)。

都営浅草線で、レールが破断して運転を見合わせるトラブルがありました。1mあたり約50kgもある「重い鉄の塊」が、なぜ破断してしまうのでしょうか。そこには「電気」の影響が考えられます。

1mあたり約50kgもあるレール

 2019年2月1日(金)の朝6時55分ごろ、都営浅草線の三田〜泉岳寺間で、線路に異常を感知。点検したところレールの破断を確認したため、およそ3時間にわたって全線で運転を見合わせるというトラブルが発生しました。都営浅草線では、1月20日(水)にも本所吾妻橋〜浅草間でレールが破断して運転を見合わせています。

 東京都交通局によれば、現時点(2月1日現在)ではレールが破断した原因は判明していないといいますが、どのような要因でレールは損傷して、そして発見に至ったと考えられるのでしょうか。

 レールの素材は鉄の合金である鋼鉄でできています。一般的に使われるレールは、1mあたりの重さが約50kgで、25mのレール1本で1t以上の重さにもなる、非常に重い鉄の塊です。

 レール上を走行する鉄道車両の車輪も鉄製です。自動車が道路を走ると、タイヤがすり減り、アスファルトも削れていくのと同様に、鉄製のレールも列車が通過するたびに少しずつ傷が付き、削れていきます。特に通過中にキシキシと音を立てるような急カーブでは、レールの摩耗が激しくなります。

「電気」もレールをむしばむ

 レールをむしばむのは、「車輪との接触」だけではありません。鉄道のレールは車両を支える道であると同時に、電気の通り道でもあるためです。

 変電所から送られてきた電気は、パンタグラフなどから電車に取り込まれてモーターを回し、車輪を通じてレールに流れて変電所に戻っていきます。しかし、近くに鉄管など電気を通しやすい埋設物があったり、漏水や湧水などで線路が濡れていたりすると、レールを流れる電気が外に漏れてしまうことがあります。このとき、電気の作用で鉄が溶けてしまう「電食」という現象が発生します。

 1両あたり約30tにもなる鉄道車両が通過するたびに、摩耗や電食によって発生した傷は次第に広がっていきます。通常は定期的な検査で傷の発生を確認し、小さな傷は削ってレールの形を整え、ある程度まで消耗したレールは亀裂が入る前に交換しています。しかし、定期検査で傷を見落としたり、検査後に急激に電食が進んだりすることで、想定より早くレールの傷が拡大することがあるのです。

 レールの破断は頻繁にあるものではありませんが、東京メトロでも2016年5月に東西線と銀座線で、立て続けにレールが破断して運転を見合わせたことがあります。

 2019年2月1日は、前日深夜から関東平野でも雪が降るなど気温が低かったことから、レールが寒暖差で伸び縮みした影響ではないかという指摘もあります。しかし、基本的に地下10m以下の温度は、地上の気温の変化にかかわらずほぼ一定していますから、レール破断の要因としては考えにくいでしょう。

 1月20日の本所吾妻橋〜浅草間は隅田川の下、2月1日の三田〜泉岳寺間は東京湾の沿岸部と、ともに浸水が多そうな区間ですから、筆者(枝久保達也:鉄道ライター)は電食によるレールの腐食が原因ではないかと推測しています。電食は漏水対策や枕木などの絶縁性を高めることで、ある程度は防ぐことができるものの、「要注意ポイント」として、こまめに点検していくしかありません。

レールには「信号の電気」も流れている

 ところで、2月1日のトラブルについて、同日付けの朝日新聞東京夕刊は「都営浅草線の泉岳寺〜三田の間で線路異常を知らせる信号が発生」したと伝えています。そのような監視用の装置があるのかと思った人もいるかもしれませんが、これは信号の仕組みによるものです。

 鉄道の信号には、レールに信号用の電流を流して一定間隔ごとに電気回路を作り、回路に電気が流れているときは青信号を表示させる、という形式のものがあります。この電気回路に車両が進入すると、鉄の車輪でレールの電気回路をショートさせるため、信号機に電気が流れなくなり、自動的に赤信号に変わります。

 この回路は車両が通過したときだけでなく、線路に異常が発生して正常に電流が流れなくなったときにも赤信号に切り替わるため、安全装置も兼ねているわけです。

 線路の異常を発見した列車は、駅のあいだで赤のまま切り替わらない信号に遭遇することで「何か異常があったのではないか」と察知。指令所に連絡して線路点検を行った結果、レールの破断が確認されたというわけです。

 こうした仕組みは驚くべきことに、すでに19世紀には実用化されていました。鉄道が100年以上にわたって積み重ねてきた経験と技術が、小さなトラブルを大きな事故に発展させないよう、機能したわけです。

 都営地下鉄は今回のトラブルを教訓に、さらに安全で安定した輸送の実現を目指してほしいと思います。

【図解】レール破断「発見」の仕組み

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