神戸の和田岬線に乗ってみた 休日は2往復だけ「都会のローカル線」、廃止の可能性は

神戸市が異例の廃止要望を出した「都会のローカル線」JR和田岬線 地元反発で進展せず

記事まとめ

  • JR山陽本線の支線、通称「和田岬線」は休日はわずか2往復の「都会のローカル線」
  • 神戸市は和田岬線が「まちづくりの障壁」となるとJR西日本に廃止を求める要望書を提出
  • 神戸市営地下鉄海岸線の利用促進の狙いもあったが地元の反発があり進展はみられない

神戸の和田岬線に乗ってみた 休日は2往復だけ「都会のローカル線」、廃止の可能性は

神戸の和田岬線に乗ってみた 休日は2往復だけ「都会のローカル線」、廃止の可能性は

和田岬線を走る103系電車6両編成の普通列車(2019年1月28日、草町義和撮影)。

神戸市兵庫区内の兵庫駅から和田岬駅までの1駅を結ぶJR山陽本線の支線、通称「和田岬線」に乗車しました。休日はわずか2往復の「都会のローカル線」ですが、平日は激変。利用者は少なくないですが、廃止の話も出ています。

6両編成の電車に客は20人

 神戸市兵庫区内にある、JR山陽本線(JR神戸線)の兵庫駅。ここから臨海部の和田岬駅まで、山陽本線の支線(和田岬線、全長2.7km)が延びています。人口およそ150万人の大都市にある路線なので列車の本数も多いと思いきや、休日はわずか2往復しか走っていません。

 2019年1月27日(日)の夕方、和田岬駅から兵庫駅行きの普通列車に乗りました。

 和田岬駅は、線路とホームがそれぞれひとつあるだけ。屋根の付いた待合スペースらしきものはあるものの駅舎はなく、もちろん駅員もいません。自動券売機や自動改札機、ICカードリーダーもなく、どこかのローカル線の駅に迷い込んだかのようです。

 しかし、駅の周囲は民家や工場が建て込んでおり、駅前の道路も歩道付き4車線という大通り。さらにその道路の下は神戸市営地下鉄海岸線が走っています。

 17時18分、折り返し兵庫行きとなる下り普通列車がホームに入ってきました。かつて国鉄の通勤形電車で一大勢力を誇った、昔懐かしい103系が6両。1編成の定員は約840人ですが、降りてきたのは10人ほどでした。

 兵庫行き上り普通列車は17時26分に発車。後方の車両は客が1人いるかいないかくらいでしたが、先頭の車両は15人くらいの客が乗っていました。全体では20人くらいでしょうか。

 マンションや工場に囲まれた和田岬線の線路を、兵庫行きの電車はゆっくり進んでいきます。途中に駅はありません。国道2号と阪神高速3号神戸線の高架橋をくぐるあたりで右にカーブし、左に山陽本線の線路が見えてきました。

 和田岬駅の発車からわずか3分、列車は終点の兵庫駅に到着。客は先頭車のすぐそばにある通路を通って改札口や山陽本線のホームへと消えていきます。先頭車に客が集中していたのは、そのためだったか……と思考を巡らしているあいだに、ホームから人の姿が消えました。

客が少なくても維持できる理由

 兵庫県の統計資料などによると、和田岬駅の1日平均乗降人員(2016年度)は約9600人です。しかし、列車1本の利用者数を記者(草町義和:鉄道ライター)の体感と同じ20人とすれば、乗降人員は上下2往復しかないとしたら、80人くらいのはず。統計とは大きな隔たりがあります。

 その理由は平日にありました。翌日の1月28日(月)朝、和田岬行き普通列車に乗ろうと兵庫駅の和田岬線ホームに向かうと、大勢の人が電車に乗り込んでいました。座席と通路はほぼ埋まり、混雑率はほぼ100%といったところでしょうか。

 和田岬駅に到着すると、客の多くは目の前にある工場(三菱重工業の神戸造船所)へと歩いて行きました。和田岬線は、臨海部の工場で働いている人たちの通勤輸送に特化した路線だったのです。

 列車の本数も休日こそ2往復ですが、平日は17往復、土曜は12往復あります。ただし運行はいずれも朝と夕夜間に集中していて、日中はありません。

 和田岬線は、いまから130年近く前の1890(明治23)年7月8日、山陽鉄道(現在の山陽本線)の貨物支線として開業しました。旅客列車は1911(明治44)年から運行を開始。かつては機関車が客車を引っ張っていましたが、1990(平成2)年にはディーゼルカーに置き換えられ、2001(平成13)年からは電車で運転されています。

 ちなみに沿線には、鉄道車両を製造している川崎重工業の工場もあり、工場内の線路は和田岬線に接続。年に何回かは、工場で製造された新しい鉄道車両が機関車にけん引されて和田岬線の線路を走り、全国各地の鉄道事業者の元に届けられています。

廃止の話も浮上しているが…

 和田岬線の利用者は多いとはいえないものの、廃止しなければならないほど少ないわけでもありません。ところが神戸市は2011(平成23)年2月、和田岬線の廃止を求める要望書をJR西日本に提出しました。

 沿線の自治体が鉄道路線の廃止を要望するとは異例ですが、これは和田岬線が「まちづくりの障壁」とされたためです。

 和田岬線の中間には、兵庫運河をまたぐ小さな橋「和田旋回橋」があります。中央の橋脚を中心に橋桁が回転する構造で建設され、船舶を通せるようにしていました。しかし、現在は橋桁が橋脚に固定されており、背の高い船舶の通行は困難です。

 一方、神戸市は兵庫運河周辺地域の活性化のため「運河を巡る船の運航や歩行者が回遊できるルートの整備を検討」(2011年2月15日付け神戸新聞夕刊)しましたが、和田岬線の橋や踏切があるため、船の運航や歩行者回遊ルートの整備が困難でした。そのため、和田岬線の廃止が浮上したのです。

 このほか、神戸市が廃止を求めた背景として「海岸線の利用促進を図る狙い」(2011年2月15日付け神戸新聞夕刊)もありました。神戸市営地下鉄海岸線の利用者数は開業前の予測を大幅に下回っており、和田岬線の廃止で利用者を海岸線に誘導しようというわけです。2011(平成23)年2月22日の神戸市議会では、当時の副市長が「(和田岬線の利用者が海岸線に移ると)約4億円の増収となる見込みでございます」と答弁しました。

 ただ、JR西日本は「『地元の総意』を条件に廃線を検討する姿勢」を示したものの、「廃線によって乗換駅でなくなるJR兵庫駅周辺の商店街からは反発の声」(2012年1月5日付け朝日新聞大阪夕刊)が上がったこともあってか、特に進展はみられません。

 いつか「地元の総意」により、和田岬線が廃止される日が来るのでしょうか。

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