越後湯沢から「JR積雪最高地点」へ 豪雪地帯の生活を支える県境越え路線バス

越後湯沢から「JR積雪最高地点」へ 豪雪地帯の生活を支える県境越え路線バス

「急行 森宮野原線」に使われる三菱ふそう「エアロスター」。岐阜県の北恵那交通からの移籍車(oleolesaggy撮影)。

県境を越える路線バスが年々減少しつつあるなか、上越新幹線の駅がある新潟県の越後湯沢から、長野県内へ向かう路線が健在です。日本有数の豪雪地帯を経て、「JR日本積雪最高地点」として知られる飯山線の森宮野原駅までを結びます。

スキー場や温泉には目もくれず、峠に挑む

 上越新幹線も停車するJR越後湯沢駅(新潟県湯沢町)の周辺は、「苗場」「ガーラ湯沢」など10を超えるスキー場が点在する「スキー場銀座」。近年は海外からの観光客も多く、冬の駅前バス乗り場は、いろいろな国の人で賑わいます。

 そこに発着する路線バスのなかで唯一、県境を越えて長野県内まで走るのが「急行 森宮野原線」です。駅近くに車庫を構える南越後観光バスが、1日4往復運行しています。

 湯沢は温泉街としても知られ、市街の至る所に温泉や観光施設が立ち並んでいますが、このバスは「急行」の名の通り、主要バス停にのみ停車して市街地を足早に通過していきます。有名スキー場も経由することなく、大きな国道17号を進んだバスはやがて左折し、国道353号へ。ここから山を上り、「十二峠」(標高およそ720m)の連続カーブを走行します。

 峠のふもとで、上越新幹線の高架下に設けられたトンネル状のスノーシェッド(雪覆い)を通過します。高架からの落雪による事故を防止するため、設置されているものだとか。その後もカーブに沿って長いスノーシェッドが連続し、さらにトンネルを抜けると、新潟県十日町市に入ります。

山越えの次は市街地 日本有数の豪雪地帯へ

 トンネルを出てからも、至る所に待避所がある片側1車線の道が続きます。カーブのところだけ道幅が広がるものの、積雪期には、その広くなった部分にも雪がたまり、見通しを悪くします。

 やがてバスは、スノーシェッドの出口に立つ清津峡入口バス停に停車。ここから徒歩20分ほどのところにある「清津峡」は、マグマが黒く六角形に固まった「柱状節理」の奇岩で知られ、手前側には温泉街もある観光地です。

 さらにバスは国道353号を走行。平地になるにつれ人家も増えていきます。いまは十日町市となった旧・中里村の中心部に当たる山崎交差点で左折し、国道117号へ。清津川を渡ると津南町に入りますが、車通りの多い市街地区間が続きます。

「津南町」といえば全国的にも豪雪地帯で知られます。2006(平成18)年1月には町内で397cmの積雪を記録し、この市街地でもバス停が雪ですっぽりと埋まったとのこと。積雪期は道路の両側に雪の壁ができ、住宅も玄関が埋もれてしまうため、基礎部分を高くして、玄関をあえて高い位置に構える家も目立ちます。

 なお、津南町役場バス停などでは、“秘境”として知られる「秋山郷」方面へのバスへ乗り換えることができます。平家の隠れ郷として知られ、同じ村内でも方言が違うほど周囲から隔絶されていた秋山郷は、長野県栄村に位置しているものの、バスが走れるような道が長野県内の他地域に通じておらず、津南町から向かうルートが最短です。ただし津南町から秋山郷へは2018年10月、バス路線が短縮され県境を越えなくなり、途中で「秋山郷線乗合タクシー」(予約に応じて運行)に乗り継ぐ形となっています。

県境越えたらすぐ終点 それでも補助金を出す長野県栄村の事情

「急行 森宮野原線」のバスは秋山郷方面へは行かず、国道117号をさらに進みます。右手の遠くを流れていた信濃川も、近くに見えるようになりました。

 やがて信濃川を50mほどの橋で越え、長野県栄村に入ると、ほどなく終点の森宮野原駅に到着します。1945(昭和20)年2月12日に7.85mの積雪を記録し、それを示す「JR日本積雪最高地点」という標柱が構内に設置されている駅です。

 この駅周辺が栄村の中心市街地で、駅前には観光案内所のほか「震災復興記念館・絆」があり、2011(平成23)年に発生した長野県北部地震からの復興の様子を見ることもできます。地震による倒壊から立ち直り、駅前に移転開業したスーパー「がんばろう栄村」では、手作りの「くるみ餅」や、名産の「妻有(つまり)そば」なども購入できます。

 とはいえ、栄村には大きな病院や量販店がなく、住民の通院や買い物には、津南町や十日町市の市街地へ向かうバスが欠かせません。「急行 森宮野原線」は沿線自治体などからの補助を受けて運行されていますが、起点の湯沢町から遠い自治体ほど額が増える仕組みで、栄村内はたった3分ほどしか走らないにも関わらず、栄村は30%を拠出。残りの多くは、津南町と十日町市が負担しています。

 このような「県境を超える路線バス」は全国的に減少しており、前述した津南町から秋山郷への路線バスも運行区間が短縮されるなど、環境は厳しさを増しています。

※記事制作協力:風来堂、oleolesaggy

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