モノレールと新交通システム、なぜ大きく広がらない? その特徴とジレンマ

モノレールと新交通システム、なぜ大きく広がらない? その特徴とジレンマ

コンクリートの上をゴムタイヤで走るゆりかもめ(2014年1月、草町義和撮影)。

鉄のレールの上を鉄の車輪で走る従来の鉄道は、摩擦が少なく小さな力で動かせるのがメリット。しかしモノレールや新交通システムの多くは、コンクリート上をゴムタイヤで走ります。どのような経緯で生まれてきたのでしょうか。

「バス」と「鉄道」のいいとこ取りをした安価な交通機関が必要に

「鉄道」とはその名前の通り、鉄のレール上を鉄の車輪で走る乗りものです。強度のある鉄は大きな荷重を受け止めることができ、摩擦が少ないため小さな力で動かすことが可能です。この特性により、鉄道は大量の人や貨物を効率よく運搬することを得意とします。

 ところが「鉄道」の仲間でありながら、ゴムタイヤで走行するモノレールや新交通システムなどの乗りものが存在します。鉄を使うことが最大のメリットだった「鉄道」が、ゴムタイヤを使うようになったのはなぜでしょうか。

 コンクリートの上をゴムタイヤで走る代表的な乗りものといえば自動車です。レールに縛られず小回りが利く自動車の普及は人々の生活を一変させ、鉄道にも大きな影響を与えます。鉄道が生き残るためには、路面電車のように自動車と道路を取り合うのではなく、立体交差の線路を走る地下鉄や高架鉄道として、高速輸送・大量輸送に特化する必要がありました。

 しかし地下鉄建設には莫大な費用がかかるため、利用者がそれほど多くない路線や、中規模都市の交通機関では採算が取れません。バス以上鉄道未満の輸送力を持ち、両者の良いところ取りをした安価な交通機関が求められるようになりました。

普及が期待されたモノレール、しかし…

 そこで注目を集めたのがモノレールです。鉄のレールと鉄輪で走行するモノレールは古くから存在しましたが、1950年代に入ってコンクリート製の桁の上をゴムタイヤで走る新しいコンセプトの「アルヴェーグ式」モノレールが開発されました。

 ゴムタイヤは鉄輪ほど重い物を支えられず、摩擦も大きいためエネルギー効率は悪いですが、急勾配を走行可能、加減速が得意、騒音も少ないなど、都市上空を縫うように走るモノレールには大きなメリットがいくつもありました。通常の高架線よりも格段に細い桁は景観や日照への影響も小さく、建設も容易であることから、モノレールへの期待は一気に高まりました。

 アルヴェーグ式モノレールは、1959(昭和34)年にカリフォルニアのディズニーランドに初の実用路線を開業すると、万博の会場アクセス路線や、初の本格的営業路線となった東京モノレールなど実績を積みました。他のメーカーも独自のモノレールを開発して参入するなど、本格的なモノレール時代が到来するかと思われました。

 しかし、結果的にモノレールは当初期待されたほどには普及しませんでした。現在、日本で営業中のモノレールは、2019年11月からの休止を表明している上野動物園モノレールを含めてようやく10に届く程度です(それでも世界的に見れば日本は「モノレール大国」)。

 普及が進まなかった要因はいくつかありますが、最大の理由としては、期待されたほど建設費が安くなかったという点が挙げられます。鉄のレールと鉄輪を使う一般的な鉄道(普通鉄道)は長い歴史を持ち、動力(蒸気、ディーゼル、電気……)や軌間(線路の幅)に違いはあっても基本的なメカニズムは一緒です。しかしモノレールは実用化されてから歴史が浅く、技術的に成熟しておらず、また各社が特許を保有する規格が乱立したため、価格競争が起きにくかったのです。

 こうした状況をふまえて、旧運輸省(現在の国土交通省)は1967(昭和42)年に跨座式モノレールの標準規格として、アルヴェーグ式を改良した「日本跨座式」を定めました。1980年代以降に開業した日本のモノレールは、ほとんどが日本跨座式を採用しています。

新交通システムが登場

 もうひとつ、1980〜90年代に整備促進されたゴムタイヤの交通機関が、神戸のポートライナー、大阪のニュートラム、東京ではゆりかもめや日暮里・舎人ライナーに代表される「新交通システム」です。

 しばしば混同されるモノレールと新交通システムですが、ゴムタイヤで走る立体交差化された中規模都市交通機関という意味では、同じ役割を担う存在です。すでに実績のあるモノレールに対し、新たに新交通システムの導入が進められた背景には、ライセンスで保護され競争入札ができないモノレールに対し、旧建設省(現在の国交省)が標準規格に基づき各メーカーで競争入札が可能な新交通システムの導入を積極的に進めてきた経緯があります。

 このころ、建設省はまずガイドウェイバス(かんたんに言うと、ハンドル操作することなく側壁に沿って曲がるバス)用の高架橋を建設し、需要が増えた段階で新交通システムに転用する「デュアルモードシステム」を検討していました。建設省の立場からすれば、モノレールしか走行できない桁よりも、道路としても使える高架橋を造りたかったというのが本音だったのでしょう。

 この構想に基づいて整備された事例として、1985(昭和60)年に開通した茨城県土浦市の高架道路「土浦ニューウェイ」は、将来の新交通システム転換を想定した設計になっています。

 モノレールや新交通システムに代表されるゴムタイヤ鉄道の最大の弱点は、規格統一と普及が実現されない限りコストが削減されず、そしてコストが下がらないと本来の役割が果たせないというジレンマにあります。

 鉄道とバスのあいだを埋めるために登場したゴムタイヤ鉄道ですが、地下鉄は急勾配や急曲線に対応できるリニアモーター式の地下鉄でコストダウンを実現し、バスは公共車両優先システム(PTPS)の活用で高機能化(BRT化)が可能になったことで、既存路線の延伸を除けば、今後の新規開業はなかなか難しいのかもしれません。

【写真】開業から半世紀が経過した東京モノレール

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