「セダンくらいしか入らない」立体駐車場は変わる? 背が高くなったクルマ、どう対応

「セダンくらいしか入らない」立体駐車場は変わる? 背が高くなったクルマ、どう対応

地下にある機械式立体駐車場の例(乗りものニュース編集部撮影)。

機械式の立体駐車場は、限られたスペースで多くのクルマを収容できるものの、特に高さの制限から入庫できないクルマも少なくありません。背の高いクルマが増えるなか、どう対応しているのでしょうか。

車高「1550mm以下」がひとつの基準

 ミニバンやSUV、軽自動車を中心に、背の高いクルマが増えていますが、そのようなクルマは「(機械式の)立体駐車場に入らない」という声が聞かれます。

 たとえば、現行の5代目よりも背が低かったホンダ「オデッセイ」の3代目と4代目モデル(2003〜2013)などは、3列シートのミニバンでありながら全高が1545mmから1550mmに抑えられており、多くの立体駐車場に入れることをひとつのウリにしていました(駐車場によっては全幅や全長などの要因から入庫できないケースもある)。

 立体駐車場を手掛ける新明和工業では、タワー式立体駐車場における車室の種類を、収容可能車種に応じて3つに分類し、そのなかで最もベーシックな「乗用車」用の高さを「1550mm以下」としています。この「1550mm以下」という数値が、立体駐車場におけるひとつの基準となっているのです。

 もちろん、より背の高いクルマが入る車室もあり、新明和工業では「ミドルルーフ車」用が高さ1750mm以下、「ハイルーフ車」用が高さ2000mm以下を標準としています。

「ミドルルーフ車」としては、たとえばトヨタ「ハリアー」(全高1690mm)、マツダ「CX-5」(同1690mm)、三菱「アウトランダー」(同1710mm)といったSUVが当てはまります。「ハイルーフ車」は、トヨタ「アルファード」(同1935〜1950mm)といったミニバンのほか、ホンダ「N-BOX」(同1790〜1815mm)、ダイハツ「ウェイク」(同1835mm)といった背の高い軽自動車などです。上述の「乗用車」用の車室では、これら車種は入庫できません。

背の高いクルマも入れる駐車場、増えている?

 立体駐車場の業界団体である立体駐車場工業会によると現在、立体駐車場はほとんどのクルマが入れるように設計されているといい、高さだけでも2200mmに対応するものまであるとのこと。ある立体駐車場メーカー関係者も「新規で建設される駐車場では、背の高い車種に対応するところが増えています」と話します。

 しかしながら、一般的に「立体駐車場」と呼ばれる機械式駐車場は、1990年代から2000年代にかけて最も多く設置されています。メーカー関係者によると、「20〜30年前に造られた駐車場は、そのころ一般的だった『乗用車』用、つまりセダンくらいしか入庫できないところが多いですね」とのこと。

「およそ30年経過した立体駐車場は、メンテナンスにおいて建屋内のパレット(クルマが載る台)だけを更新することがあり、その際にハイルーフ、ミドルルーフの車室を希望されるオーナーさんも多いです。ただし、このような施設の更新は新規建設と同じくらい費用がかかるため、更新されないままだったり、取り壊されたりすることもあります」(立体駐車場メーカー関係者)。

 タワー式立体駐車場などで建屋内部の設備のみ更新する場合、車高の高い車室を設ければ、そのぶん駐車台数は減ってしまいます。メーカー関係者によると、「全車室を一律のサイズで造ることもあれば、異なる車高に対応する車室を混在させることもあり、『附置義務台数』を確保できる範囲で決められます」とのこと。

「附置義務台数」とは、かんたんに言うと自治体の条例で、施設や建築物の規模に応じて決められた、確保すべき駐車場の収容台数です。路上駐車を防止する観点から、特定の地域内において一定の規模を超える店舗や事務所、住居などに、駐車場の設置が義務づけられており、建物の用途と床面積に応じて必要な収容台数が決まります。

 つまり、更新にかかるお金の問題だけでなく、背の高いクルマに対応したくても、収容台数を一定以上減らしてはいけないケースがあるわけです。

見直し進む「附置義務台数」

 立体駐車場メーカーのIHI運搬機械によると、仮に乗用車用を全てハイルーフ対応の車室にした場合、台数はおよそ3割減るそうです。特にマンション向けの2〜3段の立体駐車場を中心に、ハイルーフ車対応のニーズが非常に高くなっているものの、附置義務台数との兼ね合いで、導入が難しいケースもあるといいます。

 駐車場制度を所管する国土交通省都市局によると、駐車場の附置義務条例は基本的に自治体単位で一律に定められ、建物単位で需要に合わせて変更することはできないとのこと。ただ、東京23区の特定エリアなどでは「地域ルール」が適用され、建物単位で附置義務駐車場のあり方を審査し、認可することも可能になっているそうです。

 これまで、路上駐車を防止すべく駐車場の整備が進められてきましたが、国土交通省によると、自動車保有台数が頭打ちとなるなかで、稼働率の低い駐車場が出てきているなど、政策の転換期を迎えているとのこと。駐車場供給量の適正化を図るべく、自治体に対し諸制度の見直しを促しています。

 IHI運搬機械によると、現状で附置義務台数以上が確保されていて、かつ駐車需要が少ない建物では、前出の「地域ルール」のように、その現状が考慮されることもあるなど、各自治体で附置義務台数が緩和されてきていると話します。

 国土交通省は、2018年7月に発表した「まちづくりと連携した駐車場施策ガイドライン」において、「駐車場の量的なコントロールを適切に行うことが重要」「既存の駐車場についても他の土地利用への転換を図る」などとしています。今後、セダンほどの高さの乗用車しか停められないような立体駐車場が更新され変わっていくのか、そもそも駐車場そのものが減っていくのか、どちらの可能性も考えられます。

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