中部空港セントレア「2本目」のアクセス鉄道はできるか? コスト抑えられても残る課題

中部空港セントレア「2本目」のアクセス鉄道はできるか? コスト抑えられても残る課題

セントレアに設けられた中部国際空港駅。現在は名鉄常滑線の列車が乗り入れている(2005年9月、草町義和撮影)。

中部空港「セントレア」、「2本目」の空港アクセス鉄道の構想が浮上しました。インバウンド需要の高まりなどを背景に、名古屋駅と名古屋港を結ぶ「あおなみ線」の延伸が検討されますが、実現には課題もあるようです。

空港利用者は開港時のレベルまで回復

 開港から10年以上がたち、いまでは名古屋・東海地方の空の玄関口として定着した中部空港「セントレア」(愛知県常滑市)。ここに乗り入れる鉄道は、名古屋鉄道(名鉄)の空港線だけですが、「あおなみ線」を空港まで延伸して空港アクセス鉄道を2路線にしようという動きが、近年高まっています。

 あおなみ線は名古屋駅と、「リニア・鉄道館」や名古屋市国際展示場「ポートメッセなごや」などが近くにある名古屋港の金城ふ頭駅(名古屋市港区)を結ぶ、全長15.2kmの鉄道路線。第三セクターの名古屋臨海高速鉄道が運営しています。

 延伸構想が浮上した背景には、空港利用者の増加があります。実質的な開港初年度である2005(平成17)年度の旅客数は1235万1727人でしたが、その後は減少が続き、2011(平成23)年度には889万731人に。しかし、これ以降は訪日外国人観光客の増加もあり、2017年度は開港時のレベルに近い1153万9901人まで回復しました。

 また、近年は滑走路を2本に増やそうという動きも高まってきました。これが実現すれば、空港の利用者はもっと増えるため、アクセス交通の強化も必要、というわけです。

 それだけではありません。名鉄空港線に接続する常滑線は踏切が多く、自動車や歩行者との衝突事故が起きやすいという課題を抱えています。2014(平成26)年11月には、名鉄常滑線を走る特急列車が乗用車と衝突。この影響で同線は約1時間にわたって運転を見合わせ、約6000人に影響が出たといいます(2014年11月16日付け朝日新聞名古屋朝刊)。

 あおなみ線の延伸でルートが二重化されれば、どちらか一方が事故などで不通になっても、影響を最小限に抑えられます。

開港前からあった延伸構想

 こうしたことから名古屋市などは、あおなみ線の延伸を考えるようになりました。同市の廣澤一郎副市長は2018年9月、市議会で「2019年度早々に調査検討ができる組織が立ち上がるよう、積極的に県はじめ関係者に働きかけてまいります」と答弁。河村たかし市長も「この地域の産業力を落とさない上で極めて重要であると、そういうふうに思っております」と話しました。

 あおなみ線をセントレアのアクセス鉄道として活用しようという動きは、最近になって始まったことではありません。

 愛知県はセントレアが構想段階だった1990年代から空港アクセス鉄道の検討を行い、1995(平成7)年2月に調査結果をまとめています。この調査では、名古屋〜空港間の5ルートと、豊田市など三河方面から空港に向かう3ルートを検討。そのなかには、貨物線のJR西名古屋港線を活用する案も含まれていました。

 この西名古屋港線が、現在のあおなみ線。すでにある貨物線を旅客化するとともに、海底トンネルを建設して空港まで延伸するというものでした。

 ただ、各案の事業費(空港への連絡橋を除く)は、名鉄常滑線の延伸案が約200億円とされたのに対し、ほかの案は1000億円以上と試算。西名古屋港線の活用案は、旅客化の費用を除いても2100億から2700億円かかるとされました。このため、事業費が一番安い名鉄常滑線の延伸がセントレアの開港までに整備する路線として選ばれ、西名古屋港線は旅客化だけ行われることに。2005(平成17)年にあおなみ線として開業したのです。

「ライバル路線」に乗り入れできる?

 一方、名古屋市も2003(平成15)年度にあおなみ線の延伸を検討しています。同市が考えたのは、金城ふ頭駅から東側、海の向こうにある埋立地へ抜け、貨物線の名古屋臨海鉄道に合流するルート。名古屋臨海鉄道も電化や複線化などの改良を行いつつ名鉄常滑線の新舞子付近(愛知県知多市)まで延伸し、新舞子〜空港間は常滑線に乗り入れるというものです。

 この案では海底トンネルの建設距離が短くなり、事業費も従来の案より大幅に安い約800億円と試算されました。現在浮上している延伸構想も、この2003(平成15)年度の調査ルートを基本に検討されるとみられます。

 ただ、この案はいくつかの課題があります。名鉄常滑線の新舞子以北(名古屋寄り)が事故などで不通になった場合、あおなみ線を代わりに使えますが、あおなみ線の列車が乗り入れる新舞子以南(空港寄り)が不通になれば、あおなみ線でも空港にアクセスできません。これではルートを二重化する意義が薄れてしまいます。

 そもそも、乗り入れ先となる名鉄にとって、あおなみ線の延伸構想は“ライバル”。名鉄の協力を得られるかどうかは分かりません。同社の山本亜土会長は2018年9月、「我々の会社(名鉄)には(市から)何の問い合わせもない」(2018年9月27日付け読売新聞中部朝刊)と不快感を示したといい、調整は難航しそうです。

 さらに山本会長は「滑走路が2本になって発着便が増えても(名鉄だけで)十分運べる輸送力はある。すごいお金を使ってやる必要があるのか」(2018年9月27日付け中日新聞朝刊)と話し、ルートの二重化自体を疑問視しています。

 2019年度から始まる名古屋市の調査検討で、あおなみ線の延伸構想がどのように結論付けられるか、注目されるところです。

【地図】海も走る! あおなみ線の延伸イメージ

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