都営大江戸線の車両、なぜ狭い? 「普通サイズ」で計画されるも、小型化したワケ

都営大江戸線の車両、なぜ狭い? 「普通サイズ」で計画されるも、小型化したワケ

一般的な地下鉄と比べていくぶん狭い都営大江戸線の車内(乗りものニュース編集部撮影)。

都営大江戸線の車両は、ほかの一般的な地下鉄車両と比べて小型です。当初は「普通サイズ」で計画されていましたが、結果は、トンネルの断面積が半分の「小型地下鉄」に。どのような紆余曲折があったのでしょうか。

当初の計画は「普通サイズ」だった

 都営大江戸線は、一般的な地下鉄と比べて小型の車両を用いています。乗ったことがある人ならば、細かい数字を並べて説明しなくても、感覚的に分かるはずです。

 例えば普通の電車であれば、車内両側につり革を握る立ち客がいたとしても、そのあいだを人ひとりが通り抜けることが可能です。ところが大江戸線の電車では、両側に立ち客が並べば通路は埋まってしまい、座席の客が足を前に投げ出していると、そのスペースさえなくなってしまいます。天井も低いため、通常であればそのまま吊る中吊り広告を、上半分を斜めに折り曲げて設置することで高さを稼いでいます。

 JRや私鉄線と直通運転を行う東京の地下鉄車両は、中間車1両あたり全長20mで定員約150人、全幅2850mm、全高4100mmが標準的なサイズです。しかし、大江戸線の最新車両である12-600形電車は、全長16.5mで定員100人、全幅2490mm、全高3145mmと、幅で35cm、高さで1mも小さいのです。日本初の地下鉄である銀座線(1000系電車)が全長16m、全幅2600mm、全高3465mm。この銀座線よりもさらに小型の車体を採用した名古屋市営地下鉄東山線(N1000形電車)でも全長15.5m、全幅2548mm、全高3440mmですから、その小ささが際立ちます。

 とはいえ大江戸線は、当初から小型車両として計画されていたわけではありませんでした。大江戸線の原型である「地下鉄12号線」計画は1968(昭和43)年に構想され、1972(昭和47)年3月に、練馬付近から新宿に至る放射線と、新宿から都心をぐるりと回る環状線からなる現在に近いルートが決定しています。東京都は同年10月、20m大型車両10両編成の規格で、この12号線の免許を申請し、1974(昭和49)年に取得しています。

 しかし免許取得の前年(1973年)、オイルショックが日本経済を直撃しました。物価の高騰により、東京都の財政は大きく悪化。日本全国で大規模な公共事業が見直されました。12号線は巨額の建設費に対して十分な需要が見込めないとして、計画の凍結と全面的な再検討を余儀なくされたのです。

いまではメリットがデメリットに?

 需要増が望めないのであれば、建設費を削減するしか方法はありません。そこで、建設費の7割を占める土木工事費を削減するアイデアとして登場したのが、従来のトンネルより断面積を半分にした「小型地下鉄」構想でした。

 小型の車両を使い、トンネルの内径を従来の約6.2mから約4.3mまで縮小すると、断面積は半分になります。こうすることで、建設費を2割削減できるという試算が出たのです。

 大江戸線は小型地下鉄計画として再検討され、他線と相互直通運転しない路線であり独自規格を採用しても問題ないとの判断から、1986(昭和61)年に光が丘〜練馬間の建設に着手されました。

 大江戸線は車両に搭載した電磁石とレール間のリアクションプレートを反応させて走る「リニア地下鉄」ですが、光が丘〜練馬間の着工時はまだリニア地下鉄の開発が完了していなかったため、通常のモーター駆動でも対応できる設計になっていました。

 リニア地下鉄は車両の高さを低くできるほか、推進を車輪の回転に頼らないため急勾配、急カーブを走行できるので、通常の鉄道では設定できないような、地下空間を縫うように進むルート設計が可能で、建設費の削減効果が一層大きくなります。1988(昭和63)年、大阪市営地下鉄(現・大阪メトロ)の長堀鶴見緑地線に続いて大江戸線へのリニア地下鉄採用が決定すると、続く練馬〜新宿間と環状部のトンネル設計はリニア地下鉄に最適化した形状に変更されています。

 紆余曲折を経て実現した大江戸線ですが、建設がバブル経済期に重なり、工期が予定よりも伸びたことで、最終的な建設費は環状部だけで約1兆円、通常の地下鉄と大差ない1km300億円以上に膨らんでしまいました。また輸送力が小さいため、一部区間の混雑が激化するなど、小型地下鉄のメリットが隠れ、デメリットが目立つ皮肉な結果となっています。しかし、それもこれも小型地下鉄の採用によって、一時は絶望視されていた大江戸線が実現したからこその悩みだということを忘れてはなりません。

【写真】途中で斜めに折り曲げている中吊り広告

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