阪神なんば線が開業10周年! 神戸〜奈良の流れを変えたその役割

阪神なんば線が開業10周年! 神戸〜奈良の流れを変えたその役割

阪神尼崎駅で顔を合わせる近鉄車両(左)と阪神車両。直通運転ならではの風景だ(2009年3月、伊原 薫撮影)。

阪神なんば線の西九条〜大阪難波間が開業して10周年。同区間の距離はわずか3.8kmですが、神戸と奈良が直通列車でつながり、阪神本線や近鉄奈良線に変化をもたらしました。どのような影響があったのか、この10年を振り返ります。

伝法線→西大阪線→「阪神なんば線」に

 2019(平成31)年3月20日(水)、阪神電鉄の阪神なんば線が全線開業から10周年を迎えます。まずは、同線の歴史を簡単に振り返ってみましょう。

 大正末期から昭和初期にかけて、阪神本線の尼崎駅(兵庫県尼崎市)から千鳥橋駅(大阪市此花区)に至る路線が伝法線として開業しました。これが、阪神なんば線の前身です。その後、1964(昭和39)年には千鳥橋〜西九条間が開業し、これに合わせて西大阪線と改称されます。当時から、さらに先への延伸が計画されており、西九条駅(大阪市此花区)はそれを見越してJR大阪環状線を乗り越える構造となっていました。

 ところが、延伸区間の住民による反対運動や、建設費の高騰などを受け、計画は頓挫してしまいます。再び議論されるようになったのは1990年代後半のこと。延伸ルートに大阪ドーム(現・京セラドーム大阪、大阪市西区)が建設されたことや、沿線住民が建設賛成に転じたことなどがその理由です。

 工事は2003(平成15)年10月に始まり、約5年をかけて完成。2009(平成21)年3月20日に開業し、同時に近鉄奈良線との相互乗り入れが始まりました。路線名も西大阪線から阪神なんば線へ変更され、新たなスタートを切ったのです。

 ちなみに、延伸区間である西九条〜大阪難波間は、線路や駅といった施設を第三セクター会社である西大阪高速鉄道株式会社が保有していて、阪神がそれらを借り受けて営業しているという形になります。これは、自治体の出資や国からの補助を受けるためで、建設費が高くなる一方で公益性が高い、都市部の鉄道建設でよく使われる手法です。

開業で人の流れが大きく変化

 阪神なんば線の全線開業は、“革命的”ともいえる人の流れの変化をもたらしました。これまで、奈良から神戸へ(あるいはその逆へ)移動する人たちは、いったん近鉄奈良線やJR関西本線を使って大阪市内まで行き、そこからJRや阪急、阪神などで向かう必要がありました。それが阪神なんば線の開業により、乗り換えなしで行けるようになったのです。

「神戸から奈良へ(奈良から神戸へ)行く需要が、そんなにあるのだろうか」と思う人がいるかもしれませんが、両エリアはともに全国有数の観光地です。訪れる観光客にとって、非常に便利であることは間違いありません。沿線に住んでいる人にとっても、休日に“ちょっと近所へお出掛け”という感覚で、港町や古都に気軽に行けるのは魅力です。

 また、神戸〜奈良間を乗り通す需要だけではなく、例えば奈良県の生駒から兵庫県の尼崎へ、大阪府の布施から兵庫県の西宮へといったように、途中の都市を移動する人にも重宝されています。さらに、近鉄や阪神の沿線には、いくつもの高校や大学があります。これまで下宿が必要だった学校へ自宅から通えるようになるなど、進学の選択肢が増えることにもつながりました。

 阪神なんば線の利用者は、開業当初は1日5.8万人ほどだったのが、2017年度は9.5万人以上に増加。同線が、人の流れを大きく変えたことが分かります。

多彩になった車両たち

 阪神電鉄では、全線開業に合わせて新形式の1000系電車を導入しました。1000系は、近鉄への乗り入れを前提に開発された車両です。近鉄の車両は1両あたり約21mと長く、また混雑が激しいため朝ラッシュ時には最大10両編成となります。一方、阪神の車両は1両あたり約19mで、これまで最大6両編成での運行でした。そこで、1000系では6両編成の基本編成と2両編成の増結編成を製造し、阪神の尼崎駅で連結・切り離しを行って最長10両編成とすることで、近鉄線内の混雑に対応できるようにしています。

 1000系は、外観にも特徴があります。これまで阪神の車両は、一部を除いてすべて車体が塗装されていましたが、1000系は車体の材質にステンレスを採用し、塗装を省略。銀色に光るボディは、ドア部分をオレンジ色とすることで、分かりやすさとアクセントを兼ねています。細かい点では、架線から電気を取り入れるパンタグラフが、阪神では初めて「くの字形」のシングルアーム式となっています。

 一方で、阪神なんば線や尼崎以西の阪神本線では、相互乗り入れを行う近鉄の車両も見られるようになりました。白とマルーン、あるいは白と薄いブラウンのツートンカラーを身にまとった近鉄の車両が、駅や沿線で阪神の車両と並ぶ姿は、阪神なんば線の開業を象徴するシーンといえるでしょう。阪神本線には山陽電車も乗り入れており、車両カラーのバリエーションに華を添えています。

今後は特急の運転にも期待?

 そして、阪神線には時折“スペシャルゲスト”が訪れます。それは、近鉄の特急車両。定期列車としての運行はないのですが、これまでに何度か団体臨時列車として、阪神の神戸三宮駅(神戸市中央区)まで乗り入れたことがあるのです。2019年3月から12月にかけても、阪神なんば線開業10周年を記念して、近鉄特急に乗って神戸三宮から奈良や伊勢志摩方面へ向かうツアーが企画されています。

 この臨時列車に使われているのは、近鉄の22600系電車です。近鉄と阪神では、保安システムなどが違うため、両方の機器を搭載した車両でなければ直通運転はできません。いまのところ特急車両で直通運転ができるのは、対応改造工事を行った22600系の一部編成のみです。今後は特急列車の定期運行や、近鉄のフラッグシップトレイン「しまかぜ」の直通運転にも期待したいところです。

 全線開業から10周年を迎える阪神なんば線。西九条〜大阪難波間は、わずか3.8kmという短い距離ですが、いまや多くの人々にとってなくてはならない路線となりました。次の10年でどんな変化を遂げるのか、楽しみです。

※内容を一部修正しました(3月19日10時40分)。

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