災害時の移動はやはりバイク最強? 陸自が災害時情報収集で民間バイク団体と協定結ぶ

陸上自衛隊が民間バイクボランティア団体と協定 災害時の情報収集活動で協力体制構築

記事まとめ

  • 陸上自衛隊東部方面隊は「災害ボランティアバイクネットワーク関東」と協定を締結した
  • 関東甲信越地域における災害発生時に、バイクの機動性を生かして災害現場を撮影
  • 自衛隊側は災害状況を迅速に把握できる、という体制の構築が目的だという

災害時の移動はやはりバイク最強? 陸自が災害時情報収集で民間バイク団体と協定結ぶ

災害時の移動はやはりバイク最強? 陸自が災害時情報収集で民間バイク団体と協定結ぶ

富士総合火力演習にて、偵察用オートバイ部隊の展示より。今回の協定は彼ら偵察部隊の活動にプラスアルファした部分の能力構築を目指すもの(画像:陸上自衛隊)。

災害発生時、自衛隊にまず必要なものは現地の情報です。しかしそこまでの交通事情は決して良好とは限りません。そこでいち早く情報収集するために、陸上自衛隊東部方面隊は民間バイクボランティア団体と協定を結びました。

災害発生! いち早く情報を集めるために

 陸上自衛隊東部方面隊は2019年3月18日(月)、一般社団法人 日本二輪車普及安全協会に事務局を置く「災害ボランティアバイクネットワーク関東(災害VBN関東)」と、災害時における情報収集活動に関し協定を締結しました。関東甲信越地域における災害発生時に、ボランティアメンバーがバイクの機動性を生かして、災害現場の画像などをいちはやく撮影し速やかに伝送、自衛隊側は災害状況を迅速に把握できる、という体制の構築が目的です。

 協定の内容には、災害発生時の相互協力、訓練の実施、情報管理などが含まれるということです。

 今回の協定は、昨年9月ごろに、陸上自衛隊東部方面隊側から打診し、締結に至ったといいます。発表会見に臨んだ東部方面総監部の情報部長である嶋本 学1佐は「災害時におけるバイクの有用性と、地域に密着したボランティアの力を活用して、東部方面隊が持つ独自の情報収集能力にプラスアルファした、災害の初動時に役立つ情報収集を行っていただきたいです」と話しました。

 東部方面隊には、おおむね100名程度の情報収集要員がいるものの、それだけでは、大規模災害時に収集できる情報量は限られています。たとえば、首都直下地震などの大規模災害が発生した場合、駐屯地の近傍はさておき、駐屯地や地方協力本部などの自衛隊関係機関や部隊が近くにない場合は、情報収集要員を現地に派遣する必要があります。

 そのような状況のなか、各地に居住する災害VBN関東加盟会員が、自分の周辺で発生した被害情報を無理のない範囲で収集し、それを自衛隊に提供すれば、自衛隊もより迅速に、救援に必要な各種情報を集められるというわけです。

人が現場に行く意味 ドローンには得られない情報もある

 災害発生時において、最も大切なのは「現地の情報」です。

 たとえば1995(平成7)年に発生した「阪神淡路大震災」の場合、大阪から神戸までクルマ(4輪車)で16時間かかった移動時間が、バイク(2輪車)であれば2時間程度で到達できたといいます。また2018年の「西日本豪雨」では、通常クルマで1時間30分程度の距離が、7時間かかったとも紹介されました。こうした移動時間は、自衛隊と被災者双方にとって避けたい「空白の時間」であり、これを穴埋めし、現地の情報をすみやかに収集する役目が、災害VBN関東には期待されています。

 陸上自衛隊東部方面隊は過去に、民間のドローン団体とも「災害時協定」を結んでいます。そのことに対し嶋本1佐は「空からの情報も非常に有効なのですが、バイクであれば、現地の『臭い』や『音』などの情報をも収集することができます」と、バイクで現地に人が向かう利点を挙げます。

 また、バイクで運ぶことができる程度の大きさの物資輸送も、災害VBN関東が担うかもしれないとのことでした。具体的には、緊急で必要な医薬品などがそれに当たります。さらに、通信インフラが途絶している場合には「伝令」として、被災地と災害対策本部などを繋ぐ役目も期待されています。

 災害VBN関東の赤坂正人会長は「現在、災害VBN関東は八潮市、新座市、横浜市、東京都と災害時における協定を結んでいます。会員数は2019年2月末の段階で約661名です。あくまでボランティア団体ですので、会員の意志確認を行っておりまして、現在までに約100名近くの方から(自衛隊への協力活動に)参加表明をいただいております」といいます。

最大の課題は通信の確保か

 こうした協力関係を結ぶなかでも課題はあります。それが「通信・連絡手段の確保」です。

 今回の協定では、自衛隊側との連絡はNTTなどの一般回線を用いる旨が明記されているそうですが、もし携帯電話などの電波塔が破壊されたり、停電が発生したりすると、この連絡手段は使うことができません。自衛隊の通信器材を貸し出すにしても、最寄の駐屯地まで取りに来るのは手間になり、また通信器材の維持管理も問題になります。

 ほかにも、情報収集で被災地のさまざまな場所を出入りするため、空き巣や窃盗グループに間違われることや、行方不明者などの捜索活動にかかった燃料代を請求する詐欺などの災害犯罪を防止するために、災害VBN関東会員にはオレンジ色のベストを配布するとのことですが、これも全員ぶん揃っているわけではなく、また、災害時の受け渡しも課題になっているとのことでした。

 自衛隊と災害VBN関東の協定は結ばれたばかりで、多くの課題が残っていますが、これから双方が協力して訓練などを重ねるなかで、これらの課題は解消されていくでしょう。

 災害に先んじて、協力関係を構築しておくということは、決して無駄なことではありません。自衛隊は将来の災害に備えた取り組みとして、様々な民間団体と協力関係を結んでいます。こうした取り組みが、万が一の災害時に我々の命を救うことになるのです。

【写真】すっごい跳ぶよ! 陸自の偵察用オートバイ

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