船への浸水どう防ぐ? 軍艦には欠かせない「ダメージコントロール」とは

船への浸水どう防ぐ? 軍艦には欠かせない「ダメージコントロール」とは

晴海ふ頭で一般公開されたイギリス海軍のフリゲート艦「モントローズ」。甲板上でダメージコントロール訓練のデモンストレーションが見られた(画像:アメリカ海軍)。

軍艦が損傷を受けた場合、これを沈ませないために、どのようなことが行われているのでしょうか。英軍艦「モントローズ」の一般公開にて、その「ダメージコントロール」に対する努力の一端が見られました。

イギリス艦が見せてくれた軍艦にはとても重要なもの

 2019年3月9日(土)と10日(日)に、東京の晴海ふ頭にて、イギリス海軍のフリゲート艦「モントローズ」が一般公開されました。こうした海外の軍艦が一般公開されることは、年間を通してままあることですが、「モントローズ」の甲板上では、なかなかお目にかかれないような展示が行われていました。

 見たところ小さな金属製のその器具には、まるで内側から爆発でも起きたかのような外向きの破裂口が開いていて、そこから海水が勢いよくあふれています。近くにいた乗員に詳しい話を聞いてみると、艦内で浸水が発生した際にどう対処するかを訓練するための装置、とのことでした。

 こうした浸水への対処は「ダメージコントロール(ダメコン)」と呼ばれ、戦闘により損傷する可能性がある軍艦には欠かせないものなのです。

 そもそも艦艇におけるダメージコントロールとは、艦を沈没させたり、あるいは人命を危険にさらしたりするようなあらゆる要因に対処するというものです。そのため、そこには先述した浸水対処のほかにも、艦内で発生した火災への対処やその予防などが含まれています。

ダメージコントロール、実際どうやっているの?

 では艦艇における「ダメージコントロール」の実際のところは、どのようなものなのでしょうか。

 たとえば船体に穴が開き浸水が発生した場合の対処ですが、まずは浸水箇所に布や木の板、ロープや箱などをあてたり、木材の端材などを打ち込んだりして、その穴を塞いでいきます。さらに角材などで水圧に耐えられるよう支柱を設け、浸水を防ぎます。すでに艦内に入った海水は、放水ポンプで外へくみ出していきますが、片側の浸水が激しい場合には、その反対側にあえて注水して船体を安定させ、転覆を防ぐ場合もあります。

 実際に「モントローズ」で展示されていた対処方法は、まず浸水が発生すると警報が鳴り、対処要員は金づちと木材が入った小さな袋を持って現場に駆け付けます。浸水箇所を確認したら木材を金づちで打ち込み、水の勢いを抑えていきます。そしてその上から半球状の蓋をあて、さらにそれが水圧に耐えるよう、支柱で固定していました。

 一方、艦艇における火災への対処ですが、そもそも火災には紙や木など固体の可燃物による「A火災(一般火災)」、油など可燃性の液体による「B火災(油火災)」、電気配線のショートなどによる「C火災(電気火災)」の3種類があり、それぞれの場合で対処が異なります。

 Aの一般火災の場合には、水を勢いよく放水する消火方法が用いられますが、この方法はBの油火災の場合には、かえって火の勢いを強くしてしまい、またCの電気火災の場合には感電の恐れがあるため、用いることができません。それら火災の種類を見極め、水を霧状に放水する装置や、ガスや薬剤を用いた消火方法などがとられます。

 また、海水を散布する装置が各所に設置されていて、これらを用いて艦内で発生した火災を消火します。

ダメコン成功例「『フィッツジェラルド』衝突事故」

 こうしたダメージコントロールが功を奏した例が、実は近年、日本近海で見られました。アメリカ海軍のイージス艦「フィッツジェラルド」が、貨物船と衝突した事故です。

 2017年6月17日未明、訓練を終えて静岡県伊豆半島沖を航行していた「フィッツジェラルド」は、フィリピン船籍の貨物船が接近していることに気づかず衝突し、艦内の居住区や通信室などに浸水が発生しました。また、衝突の衝撃で艦橋の一部が押し曲げられるなど船体構造がダメージを受けたほか、漏電や有毒な煙霧まで発生し、まさに運用開始以来の、絶体絶命の危機を迎えたのです。

 しかし、この危機から「フィッツジェラルド」を救ったのが、同艦の乗員たちでした。前述したような危険な状況下にもかかわらず、乗員は被害を受けた区画において16時間連続でダメージコントロールを実施し、見事「フィッツジェラルド」を母港である神奈川県横須賀基地へと帰港させたのです。

 この事故により、「フィッツジェラルド」は結果として、居住区への浸水で7名の乗員の命を失ったほか、船体にも大きなダメージを受けてしまいましたが、乗員たちの懸命の努力によって幸い沈没は免れました。後日、アメリカ海軍は懸命のダメージコントロールによりさらなる人命損失を防ぎ、艦を守った功績をたたえ、「フィッツジェラルド」の乗員36名に対して勲章を授与しました。

 ダメージコントロールは戦闘中のみならず、このように平時から重要性の高いものです。今回、「モントローズ」の公開によって、イギリス海軍によるダメージコントロールに対する努力の一環を垣間見ることができました。

【写真】事故で損傷した「フィッツジェラルド」の艦内

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