生活環境から眺める「海自P-1哨戒機」という職場 長時間飛ぶ飛行機だからこその特徴は

生活環境から眺める「海自P-1哨戒機」という職場 長時間飛ぶ飛行機だからこその特徴は

海上自衛隊のP-1哨戒機。2019年1月現在、実運用部隊は厚木基地の第3航空隊のみ(関 賢太郎撮影)。

哨戒機はその任務の性質上、飛行時間が長くなる傾向にあります。搭乗員たちにとって、どのような職場環境なのでしょうか。海自P-1哨戒機における日常生活などについて、現役パイロットに話を聞きました。

長時間過ごす「P-1」という「職場」

 海上自衛隊の新型哨戒機P-1は、広い洋上をパトロールしたり潜水艦を探したりする目的から、数ある自衛隊機のなかでも、最も航続時間が長い機種のひとつです。

 P-1が、具体的にどのくらいの航続時間があるのかは明らかにされていませんが、同様の任務に就くP-3C哨戒機について、海上自衛隊がメディア向けに公表したところによると、航続時間は約10時間といい、そしてP-1の航続距離はP-3Cの約1.2倍とされています。

 2018年3月に内閣官房が発行した「2017年海賊対処レポート」によると、東アフリカのジブチにおいて、ソマリア沖・アデン湾の海賊への対処活動に従事する「派遣海賊対処行動航空隊」のP-3Cは、2017年までに1951回飛行し1万4910飛行時間の任務を行ったとしていますから、一度の任務で飛行時間は平均8時間弱になるようです。P-1においても、朝に離陸した機体は夕方ごろに帰って来ることが多いため、実際の任務はおおむね8時間程度とみて間違いないと思われます。

 実はP-1、そしてP-3Cの胴体最後尾には、「ギャレー区画」と呼ばれる休憩スペースがあります。筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)はかねてより、「ギャレーは長時間の任務が多いP-1やP-3Cらしい設備だな」と思っていました。ところがこの点に関し、海上自衛隊厚木基地(神奈川県)の第4航空群第3航空隊にてP-1パイロットを務める小笠原 拓1等海尉に尋ねたところ、「P-1の搭乗員が休憩のためにギャレーを使うことは、基本的にはありません」と、予想外の答えが返ってきました。

正副操縦士のお弁当は必ず別メニュー

 小笠原1尉はさらに、「P-1では、11名の搭乗員はすべて所定の配置について任務をしています。もしそこを離れてしまった場合、センサーなどが機能しないことになってしまいますので、ギャレーは基本的に、搭乗員が休憩のために使うことはありません。パッセンジャー(乗客)が使用することはありますけれども」と続けました。

 ギャレー区画にはトイレもあり、さすがにこれについては「所用のため席を外します」とひとこと言えば使えるようですが、平均8時間にもおよぶ飛行であるにも関わらず、たとえば「15分休憩」といった息抜きはないそうです。

 一方で、お弁当が支給され、食事をすることはできるようです。

「食事については、普通のお弁当屋さんのものと変わりません。P-1には、P-3Cのころにはなかった電子レンジがあるため、お弁当を温めることができるようになりました。また万が一の食中毒に備え、必ず2種類が用意されており、正副2名の操縦士は別々のお弁当を食べます」(小笠原1尉)

 P-1のギャレーには座席とテーブル、トイレ、給湯器、冷蔵庫、電子レンジといった設備があります。なお、P-3Cに装備されていた簡易ベッドは、P-1にはありません。

 第3航空隊副長の小俣泰二郎1等海佐は、「P-3Cの仮眠用ベッドは、アメリカ軍が同機を使っていたころの名残」だと言います。

「アメリカ海軍のP-3Cは、冷戦時代、ソ連の潜水艦がアメリカ西海岸まで近寄ってきていたころなどは、航続時間ギリギリまで飛んでいたそうです。そのためパイロットを3人とし、ひとりは休みましょうというコンセプトで運用していたようです」(小俣1佐)

 同型機である海上自衛隊のP-3C哨戒機は、前述のように約10時間の飛行が可能とのことですから、それだけ長く飛ぶのであれば、さすがに休憩も必要になるでしょう。

急患輸送ではどう運ぶの?

 P-1は、離島における急患輸送を目的とした「災害派遣」へ、年に何回か出動しており、2018年12月には2日と8日に出動しています。いずれも小笠原諸島の父島で発生した急患で、まずは航空自衛隊のUH-60Jヘリコプターによって硫黄島へと運ばれたのち、P-1によって厚木基地へ送られました。

 こうした急患輸送においては、患者が生死の境にあることが多いため、同乗した医師が治療しやすいよう、ギャレーよりも少し機首側の比較的広い区画に、ストレッチャーを固定するそうです。

 仮眠用ベッドはおろか休憩室さえ使えず、トイレ以外の休憩時間もないという哨戒機の任務は、大変ではないのでしょうか。「一定期間内における飛行時間の制限が定められており、機を降りてからは必ず休養があります」と小笠原1尉は説明します。

 こうした事情は国際線を飛ぶ旅客機においても同じです。旅客機は飛行時間のほとんどを高高度の巡航に費やしますから、パイロットは長時間ほとんど変化しない計器を監視し続けなくてはなりません。一方で、哨戒機は洋上を監視したり対潜水艦任務が与えられたりすることも有ります。哨戒機の飛行は変化に富む一方で、ワークロード(仕事量、作業量)自体は旅客機の乗務員よりも増えてくるはずです。

 もちろん、どちらも大変な仕事であることに変わりはありませんが、役割の違いからくる「疲労のポイント」は異なってくるはずです。「長時間、様々なことをやらなければならない負担」は、哨戒機搭乗員特有の厳しさがあるといえるでしょう。

【写真】レンジ、冷蔵庫、給湯器…充実したP-1のギャレー

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