足柄駅で小田急からJRに乗り換えたら、なぜか7時間も要した件 …もうやりたくない

足柄駅で小田急からJRに乗り換えたら、なぜか7時間も要した件 …もうやりたくない

神奈川県小田原市にある小田急の足柄駅から「乗り換え」をスタート(2019年3月、蜂谷あす美撮影)。

小田急小田原線とJR御殿場線にある足柄駅。名前こそ同じながら、駅は神奈川県小田原市と静岡県小山町で、まったく別の場所に位置します。道のりにして約25km離れているこの両駅で乗り換えてみました……が、もう二度としないでしょう。

乗り換え検索の結果を見て、画面をそっと閉じた

 足柄駅を知っていますか。小田急小田原線とJR御殿場線に設置されている駅のことです。この説明だと、「小田急線とJR線の乗換駅のことかな」と思われる人もいるかもしれませんが、小田急線の駅は神奈川県小田原市、JR線の駅は静岡県小山町に位置し、両駅間の距離は直線で約17km、道のりで約25km。乗り換え検索で調べても出てきません。そんな足柄駅で実際に乗り換えてきました。

 乗り換えにあたり事前にしたことは「足柄駅(神奈川)から足柄駅(静岡)」のルート検索です。Googleマップによると距離は24.6km、徒歩の所要時間は5時間57分、県境の足柄峠を越えることから標高差は320mとのことでした。遠い、怖い。無意識のうちにGoogleマップの画面を閉じている自分がいました。乗りものニュース編集部には敢行日を報告。「同行しましょう」と優しい返事が来ないものかと期待していたのですが、返ってきたのは「体調に気を付けて無理しないでください」。……一人で行けってことですね。

 さて当日。スタート地点である小田急の足柄駅を出発したのは午前10時半のこと。まずは歩いて、伊豆箱根鉄道大雄山線の大雄山駅(神奈川県南足柄市)を目指します。長い行程という現実に打ちのめされそうになるので、なるべく地図を見ないようにしていたところ、のっけから道を間違え20分ほどロスしました。

 軌道修正した後は大雄山線沿いの神奈川県道74号を歩いていきます。まだ心身にゆとりがあり、地元の人に「こんにちは」と挨拶したり、通過していく電車を見て「この区間は電車に乗ってもバレないのでは」と悪いことを考えたりしていました。“第一中継所”の大雄山駅に到着したのは12時33分。全体のおよそ3分の1にあたる7.5kmが終了です。

「もう3分の1終わったのか」

 いま振り返ると、のんきに喜び過ぎでした。ちなみに大雄山駅にあるセブン‐イレブンを逃すと、この先にコンビニエンスストアはありません。

 さて、ここからは神奈川県道78号(足柄街道)を西へ歩み始めます。道路標識に県境である「足柄峠」が見え始め、浮き足立ちました(かなりフライングです)。

住宅街から田畑へ 疲労を覚え始める

 黙々と進んでいくと周囲は住宅街から田畑へと変わり、少しずつ勾配が強まってきます。来た道を振り返ると、酒匂川沿いの街並みが遠くに小さく見え、手前では菜の花が元気に咲いていました。この時点では、心を洗う余裕があったのです。

 スタートから3時間が経過した13時36分、私(蜂谷あす美:旅の文筆家)は矢倉沢という集落の入り口にあるバス停にいました。足柄駅(神奈川)から12.5km。見上げれば久し振りの案内標識。目的地である足柄駅(静岡)の位置する「小山」が書かれており、ゴールがすぐそこにあるかのような錯覚に陥ったものの、標識の向こうに見える道が恐ろしく急勾配であることに気付き、たちまちしょんぼりしました。歩かないとゴールにはたどり着けません。渋々上り坂に向かいます。ここで、「静岡県境まで6.6km」の標識も追加で登場しました。

「これまでに歩いた距離の半分を歩けば、もう静岡か」

 確かに計算上ではそうなのですが、これは勾配をまったく無視した楽観的なザル勘定です。周囲は、いかにも「自動車の道」という様相を呈してきました。ほとんど無の心で歩き続けます。疲労を覚え始めたのはこのあたりからでした。

 行程中唯一のトンネルである地蔵堂トンネルを越えると「金太郎のふるさとへ 南足柄市」の案内板。時刻は14時33分、足柄駅(神奈川)から15.5km。道端のベンチに座り、昼食休憩とします。通過していくクルマのドライバーが怪訝そうに私を見ていくのが切なかったです。

工事のおじさんと景色を堪能

 15分ほど休んだのち、再び歩き始めますが、ここからが文字通り最大の山場。ヘアピンカーブが延々と続きます。回転するように上り坂を歩いているせいなのか、目が回り始めました。途中、ランニングをしている人とすれ違ったのですが、どこから来て、そしてどこに向かっていたのかは、分かりません。

 グロッキーなままに歩き続けることおよそ30分。15時18分に「見晴台」に到着しました。ちょうど近くで工事が行われており、交通整理のおじさんに話しかけられました。

「小田原から歩いてきました」

 やっていることが頓珍漢すぎたので、おじさんにはうまく伝わりませんでした。なお、「見晴台」を堪能するためには、崖側のガードレールまで接近する必要がありました。平衡感覚が失われかけていたため、かなり怖かったです。

「あれは東名高速道路、あそこが松田町」

 おじさんが解説してくれるのを聞きながら、高所恐怖症の人の気持ちを味わっていました。

 休憩もほどほどに、再び過酷な道を歩きます。「金太郎のふるさと」案内板近くの地蔵堂から先は路線バスが季節運行になり、なおかつこの日は運行時期ではなかったため、リタイアという選択肢はとっくに消滅。これといって登山経験はありませんが、しかし自分の足で進まねばなりません。

峠を越えて真正面に富士山!

 足柄峠に到着したのは15時51分のこと。スタートから5時間半近くが経過し、ようやく県境をまたぐことができました。まさか徒歩で静岡入りする日が来るとは。県境の向こうでは、「ようこそ金太郎のふるさとへ 静岡県小山町」の看板が出迎えてくれました。そういえば、先ほど似たようなのを見た気がします。

 ここからは一転して下り坂です。途中、足柄城跡を見つけ、「せっかくだし」と見学するまでに精神も回復してきました。そしてついに「足柄駅4.3km」の看板がお目見えしたのです。もちろんこれは、足柄駅(静岡)のこと。

 さらに進むと、真正面に富士山が大きく現れました。

「今日の私は、この富士山を見るために、ずっと歩いてきたのかもしれない」

 当初の目的をすっかり忘れ、人がいないのをいいことに、喜びの奇声を発しました。ここまで来ればもうあとはゴールを目指して歩くだけです。途中、2か所の三差路に出くわしましたが、案内とスマホの地図で乗り越え、17時19分、ようやく足柄駅(静岡)に到着しました。すでに辺りは夕暮れの色。感動よりも、ただただ足腰の疲労と、「これで帰れる」という安堵が圧倒的に大きかったです。乗り換えに約6時間50分を要しました。

 なお、本当につらかったのはこの翌日のこと。私の下半身を筋肉痛が襲い、2日間にわたって角ばった動きで生活することを余儀なくされました。同じ行程を歩くことは、たぶん、もう二度とないと思います。

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