F-16戦闘機がインドで「F-21」に至るまで 続く進化、開発意図とはまったく別物へ

F-16戦闘機がインドで「F-21」に至るまで 続く進化、開発意図とはまったく別物へ

F-16の最初の量産型F-16A(画像:アメリカ空軍)。

1974(昭和49)年に初飛行したF-16戦闘機が売れ続けています。その最新版は初期型とはまったく別物、ついに「F-16」という名前まで変える提案がなされています。半世紀近く継続する進化の経緯を振り返りました。

F-16がそもそも目指したものとは?

 2019年3月19日(火)、台湾の蔡英文総統が、アメリカ政府から「F-16V」戦闘機を導入する意向を表明しました。

 いまのところアメリカ国防総省と国務省は、武器の輸出にあたって必要となる、アメリカ連邦議会への通告を行なっていませんが、一部メディアが3月22日(金)付で、台湾へのF-16Vの輸出をトランプ政権が後押ししていると報じており、連邦議会の承認が得られれば、台湾は長らく求めていた最新鋭戦闘機を手に入れることになります。

「F-16V」は、航空自衛隊が運用するF-2戦闘機の原型となったF-16戦闘機の、2015年に初飛行した最新型です。

 F-16は小柄な機体に強力なエンジンを組み合わせたため、機体のサイズのわりに搭載できる爆弾やミサイルの量も多く、また多種多様な兵器を搭載できるため、1機で様々な任務に対応できます。この点が評価されて、F-16は28ヵ国に採用され、4500機以上が製造されるベストセラー戦闘機となったのですが、実のところ開発開始の時点でアメリカ空軍が考えていたF-16の姿は、まったく別物でした。

 アメリカ空軍は、1950年代から60年代にかけて様々な戦闘機を開発しましたが、これらはソ連の爆撃機の迎撃や、対地攻撃能力に重きが置かれていたため、空対空戦闘、とりわけ戦闘機同士の格闘戦(ドッグファイト)には不向きで、ベトナム戦争では高い運動性を備えた旧ソ連製のMiG-21戦闘機やMiG-17戦闘機に格闘戦へ持ち込まれ、苦戦を強いられていました。

 その後1970年代初頭、アメリカ空軍では「ファイターマフィア」と呼ばれる軍官僚の集団が暗躍します。彼らは、終わりを迎えつつあったベトナム戦争での戦訓を踏まえて、次期戦闘機は格闘戦闘能力を重視すべしという考えを持ち、そのような戦闘機を開発すべく議会への働きかけなどを行なっていました。

 彼らが立案した格闘戦能力の高い、簡素な軽戦闘機の開発計画は連邦議会の支持を得て、「軽量戦闘機」の開発計画がスタート。紆余曲折の末、後にロッキード・マーチンに吸収合併されたジェネラル・ダイナミクスの案が採用され、F-16として制式化されることとなります。

商業的成功と多用途戦闘機への道

 ファイターマフィアの面々は、F-16は短距離空対空ミサイルと機関砲だけを搭載する、簡素な戦闘機であるべきだと考えていましたが、同機は輸出が見込める機体であったことから、途中で無誘導爆弾やロケット弾などの搭載能力が追加されました。高い運動性を持ち、かつ多用途性も備えたことで、F-16はそれまでF-104「スターファイター」戦闘機などを運用していたNATO(北大西洋条約機構)に加盟するヨーロッパ諸国などに次々と採用され、商戦でも成功をおさめることになります。

 とはいえ、最初に量産されたF-16A/B型には精密誘導爆弾の運用能力がなく、1991(平成3)年の「湾岸戦争」で低空爆撃を行った際には、イラク軍の対空砲火によって8機が撃墜されてしまうなど、対地攻撃機としての同機はパッとしませんでした。後に精密誘導爆弾や対レーダーミサイルの運用能力を獲得したF-16C/D型が開発され、F-16は攻撃機としてもトップレベルの能力を持つ、真の多用途戦闘機になります。

 F-16は小柄な戦闘機のため、機体内部の燃料タンクが小さく、F-15のような大型の戦闘機に比べて航続距離が短いという弱点と、やはり小柄であるがゆえに電子機器類の追加装備が難しいという弱点を抱えていました。前にも述べたように、航空自衛隊のF-2はF-16をベースとしていますが、原型機同様、機体に余分なスペースが無いことから、戦闘機同士や早期警戒管制機などとデータのやりとりをする既存の「データリンク」端末を搭載することができませんでした。それゆえ防衛省は「自衛隊デジタル通信システム(戦闘機搭載用)」という名称の、F-2に搭載できるデータリンク端末を新たに開発しています。

 ジェネラル・ダイナミクスを買収してF-16のメーカーとなったロッキード・マーチンは、これらの弱点を克服するため、シンガポール空軍などに採用されたブロック50/52と呼ばれる仕様の機体から、複座型の機体の背部に「ドーサルスパイン」と呼ばれるふくらみを設けて電子機器を収容し、胴体上部の両側面に着脱式のコンフォーマルタンク(増加燃料タンク)を装備することで、航続距離の大幅な延伸にも成功しています。

半世紀積み重ねた進化の先に「F-21」

 F-16の進化はその後も続き、UAE(アラブ首長国連邦)空軍に採用されたF-16E/F(ブロック60/62仕様機)は、パワーの大きいエンジンの装備により飛行性能が向上したほか、F-2と同様に捜索距離の長いAESAレーダーを装備するなど電子装置も大幅に強化された結果、格闘戦に強い簡素な軽戦闘機を志向していたファイターマフィアの面々が見たら、腰を抜かすのではないかと思われるほどの、マッチョなフォルムのゴージャスな多用途戦闘機となっています。

 台湾が導入を希望しているF-16V(ブロック70/72仕様機)は、飛行性能や外観は従来型のF-16から大きく変わっていませんが、目標捜索性能の高い「AN/APG-83 AESAレーダー」、新型コンピューター、最新のデータ処理システム、タッチパネル式の大型ディスプレイの採用などにより、「ユーロファイター タイフーン」やダッソー「ラファール」、航空自衛隊のF-2といった、F-16よりも後に実用化された戦闘機に匹敵、あるいは上回る能力を備えています。

 F-16Vは輸出も好調で、バーレーンとスロバキアが導入を決定しているほか、アメリカ空軍と台湾空軍も、手持ちのF-16をF-16Vに準じた仕様への能力向上改修を行なっています。

 ロッキード・マーチンとアメリカ政府は、インド空軍が現在運用しているMiG-21戦闘機を後継する新戦闘機に、F-16のブロック70仕様機を提案しています。インド空軍に提案されるブロック70仕様機は、同軍の空中給油機に対応する給油プルーブの追加、F-35と同様の大画面液晶ディスプレイを使用するグラスコクピットの採用といった改良が計画されていますが、さらにロッキード・マーチンは2019年2月にインドで開催された航空ショー「エアロ・インディア」の会場で、インドに提案するF-16ブロック70仕様機の名称を、「F-21」とすることを明らかにしています。

 ロシアのMiG-29も、能力向上型はMiG-35という新たな名称が与えられていますが、今のところMiG-35はセールス面で苦戦を強いられています。F-21がMiG-35と同様にセールス面で苦戦するのか、はたまた成功をおさめるのか、今後の推移が注目されます。

【写真】改めて見比べてみると…? 航空自衛隊F-2戦闘機

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