ホームから駅の外まで5分 トンネル内のトキ鉄「筒石駅」で下車、開業以来の変化が

ホームから駅の外まで5分 トンネル内のトキ鉄「筒石駅」で下車、開業以来の変化が

トキ鉄の日本海ひすいラインにある筒石駅(2019年3月、草町義和撮影)。

旧・北陸本線のえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインにある、新潟県の筒石駅。かつては地上にありましたが、ある事情から山岳トンネル内にホームを移設した珍しい駅です。利用者の減少が進み、開業以来の変化がありました。

「日本一」のトンネル内にホームを設置

 えちごトキめき鉄道(トキ鉄)の筒石駅(新潟県糸魚川市)は、山岳トンネルの途中にある珍しい駅として鉄道ファンに知られています。2019年3月16日(土)のダイヤ改正で、この駅に開業以来の変化が発生。その「変化」から10日ほどが過ぎた3月25日(月)、同駅を訪ねてみました。

 JR北陸新幹線の上越妙高駅(新潟県上越市)でトキ鉄妙高はねうまラインに乗り換え、さらに直江津駅(同)でトキ鉄日本海ひすいラインに乗り換えました。線名の通り、日本海に沿って西の糸魚川方面へ進んでいきますが、長いトンネルが断続的に続いているため、海が見える区間はあまり長くありません。

 直江津駅から3つ目の名立駅(新潟県上越市)を発車すると、列車はすぐに頸城(くびき)トンネルへ進入しました。全長は1万1353mで、私鉄や第三セクター鉄道の山岳鉄道トンネルとしては日本一の長さを誇ります。暗闇が数分続いたのち、列車が減速。目の前にライトで照らし出されたホームが見えました。

 ここで降りたのは記者(草町義和:鉄道ライター)ひとりだけ。ホームには親子連れがいたものの、列車には乗らず、トンネル内を珍しそうに見渡しているだけです。おそらくはクルマでやってきた見物客でしょう。

 列車が糸魚川寄りの暗闇に姿を消してから周囲を見渡すと、トンネル内には上り線(糸魚川方面)と下り線(直江津方面)の線路があり、その両外側に幅が約2mのホームが設けられていました。上り線ホームは糸魚川寄り、下り線ホームは直江津寄りにずれて設置されているのが特徴です。

発車時刻に着いても乗り遅れるワケ

 とりあえず外に出ようと、トンネルの壁にあった扉を開けました。コンクリートで囲まれた待合スペースがあり、脇にはベンチの姿が。その奥を右へ曲がったところに階段があり、ここを上がると再び右に曲がって、直線の通路が数十mほど続いていました。途中で下り線ホームにつながっている階段が合流し、突き当たりを右に曲がると、目の前に現れたのは長い上り階段でした。

 長さは100mくらいで、階段は100段、いや200段くらいはあるでしょうか。脇にはエスカレーターを設置できそうなスペースがありますが、これは駅の建設で資材搬入や作業員の輸送に使った斜行エレベーターの跡地と思われます。

 一歩一歩、階段に足をかけ、奥のほうに見える光を目指して進みます。勾配は緩くて段差も低く、思っていたほど疲れませんが、それでも中間あたりまで到達すると、息が上がってきました。ホームを「出発」してから5分ほどで階段が途切れ、ようやく目の前に駅舎が。逆に言えば、少なくとも発車時刻の5分ほど前には駅に着いていないと、列車に乗り遅れることになります。

 駅舎はシンプルな平屋建てで、一見すると工事現場で見かけるプレハブの詰め所のよう。待合室には誰もおらず、自動券売機やきっぷ売り場もありません。というより、窓口があった場所が板でふさがれており、駅員の姿も見えません。実は3月16日のダイヤ改正で駅員がいなくなり、無人駅になったのです。

 駅の外に出て目の前にある道を少し進むと、右手には深い谷があり、正面には谷をまたぐ北陸自動車道のコンクリート橋が。そして橋の下に日本海の海面が見えました。周囲に民家が数軒あるものの、人の声が聞こえてくることはありませんでした。

利用者が少なくても駅員がいた理由

 筒石駅は100年以上前の1912(大正元)年12月16日、国鉄の信越線支線(のちの北陸本線の一部)の駅として開業。のちにJR西日本の駅になりました。その後、北陸新幹線に並行する在来線をJRから分離することが決定。2015年に北陸新幹線の長野〜金沢間が延伸開業したのにあわせ、筒石駅を含む北陸本線の新潟県内区間が、第三セクターのトキ鉄に移管されました。

 開業当時、筒石駅は現在地から約700m離れた集落の近くにありました。しかし、海沿いの断崖にへばりつくようにして駅が整備されたため、幾度となく地滑りの被害に遭っています。そこで国鉄は、北陸本線の電化と複線化にあわせ、内陸寄りを長いトンネルで通り抜けるルートに変更することにしました。

 このため、筒石駅は新ルートに移設せずに廃止される計画でしたが、これに住民が反発。トンネル内に駅を設置することになったのです(2012年8月14日付け新潟日報)。こうして筒石駅は1969(昭和44)年9月29日、現在地に移転。地上駅舎と地下ホームの高低差は40mあり、合計290段の階段(上り線ホームからは280段)で結ばれました。

 過疎化が進む地域の駅ということもあって筒石駅の利用者は非常に少なく、2005(平成17)年度の1日平均乗車人員で46人。それでも国鉄時代から駅員が常駐しました。暗いトンネル内に幅の狭いホームを設けているため、無人駅では安全の確保が難しかったためです。

 しかし、利用者の減少はさらに進み、2017年度には1日平均乗車人員は12年前の半分(23人)に。監視カメラを設置するなどの安全対策が進んだこともあり、ついに無人駅に変更されたのです。

 その一方、珍しい「トンネル駅」をひと目見ようと、全国各地から大勢の鉄道ファンや観光客が筒石駅を訪れるようになりました。トキ鉄は2018年3月から、同社の観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花」を筒石駅に停車させて見学時間を確保。駅自体を「観光地」のひとつとして活用しています。

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