多摩都市モノレールの延伸は実現するのか 経営破綻寸前から復活、準備も着々と進行

多摩都市モノレールの延伸は実現するのか 経営破綻寸前から復活、準備も着々と進行

多摩都市モノレールは、多摩センター〜上北台間約16kmを結んでいる(2010年1月、恵 知仁撮影)。

東京の多摩地域を南北に結ぶ多摩都市モノレールには、多摩センターや上北台から先へ延伸する構想があります。かつて経営破綻寸前までなった経営も近年は黒字で安定。路線の延伸に向けて、準備は少しずつ進んでいます。

かつて「負の遺産」と評された多摩都市モノレール

 立川北駅・立川南駅(東京都立川市)を中心に、多摩センター駅(同・多摩市)から上北台駅(同・東大和市)まで約16kmを南北に結ぶ多摩都市モノレールは、2018年11月に開業から20周年を迎えました。多摩地域の人にとっては欠かせない交通機関になりつつあります。

 交通政策審議会は2016年4月、多摩都市モノレールについて、北の終点である上北台駅からJR八高線の箱根ケ崎駅(東京都瑞穂町)までの約6.8kmと、南の終点である多摩センター駅からJR町田駅(同・町田市)までの約13kmの延伸計画について、2030年ごろの事業化に向けて検討を進めるべきと答申。これを受けて東京都は「東京都鉄道新線建設等準備基金」を創設するなど、具体化な動きも始まりました。

 一度は「負の遺産」と評され経営破綻寸前まで追い込まれた多摩都市モノレールは、一体どのようにして復活を遂げたのでしょうか。そして延伸計画に実現性はあるのでしょうか。

 多摩都市モノレールは1986(昭和61)年に東京都や沿線自治体などが出資する第三セクター企業として設立され、1990(平成2)年に着工。1998(平成10)に最初の区間である立川北〜上北台間が、2000(平成12)年1月に全線(多摩センター〜上北台)が開業しました。

 同社にとって最大の誤算は、創立から開業までの約15年にバブル景気の到来と崩壊が直撃してしまったことでした。地価や人件費の高騰で工費は当初想定の倍に膨れ上がった反面、不景気の影響で需要予測は1日平均16万人から11万人に下方修正。さらに同社が負担する整備費約1200億円のうち、出資金200億、東京都からの無利子借入金100億円を除く、約900億円を高金利の借入金で調達しなければならなかったことで、膨大な利息の負担が発生し、全線開業翌年度の2000(平成12)年は40億円近い経常赤字を計上しました。

黒字で長期債務も削減、ようやく反転攻勢に

 2006(平成18)年度は輸送人員が計画の11万人に達し、3期連続営業黒字を計上するも、累積損失242億円、債務残高921億円で、37億円の債務超過に転落、2008(平成20)年中に会社の運転資金が底をつくことが決定的になりました。

 営業黒字にも関わらず苦境に陥ったのは、一般的には自治体から無償で提供されるべき車庫用地を、約300億円で有償取得せざるを得なかったこと、東京都からの出資金が少なく、自己資本比率が過小だったことなど、事業スキームの組み方自体に問題があったからです。

 そこで東京都から車庫取得費に相当する300億円の追加支援を受け、金融機関に160億円の繰り上げ返済を行い、その他の借入金返済期間も繰り延べする経営改善計画が実行されます。債務超過を解消し、年間の利子負担が約4億円減ったことで、2008年に初めて1億円の経常黒字を達成。その後9期連続の黒字を計上し、2017年度の営業利益は20億円近くになりました。

 長期債務も2008年度末の約820億円から370億円まで削減が進み、2023年度には210億円まで減少する見込みと、ようやく、反転攻勢に出られる準備が整ったというわけです。では、延伸はどのように進められることになるでしょうか。

カギはモノレールの「導入空間」

 これを読み解くカギが「導入空間」です。都市モノレール整備では、橋脚や軌道桁など「インフラ部」を国と自治体の費用負担で建設し、事業者は鉄道運行に必要な「インフラ外部」の整備費を負担します。道路構造物として扱われるインフラ部を建設するには、軌道の下に導入空間となる幅25mの都市計画道路が整備されている必要があります。

 一歩先んじているのが箱根ヶ崎ルートです。延伸区間は拡幅した新青梅街道(東京都道5号)上に建設する構想で、武蔵村山市によると2023年度中に全区間で道路拡幅工事が完成する予定です。

 町田ルートは沿線人口も多く大きな整備効果が期待されますが、延伸区間13kmのうち導入区間を確保済なのが約7km、拡幅が必要な区間が約2km、整備未着手の区間が約4kmと導入空間がいつ確保できるのかまだ見通せない状況です。町田市は早期の事業化を目指したいとしていますが、東京都は箱根ヶ崎ルートを優先して着工する意向のようです。

 箱根ヶ崎ルートの総事業費は800億円。うち半分を「インフラ外部」整備費とすると、多摩都市モノレールの負担額は約400億円です。100億円を東京都及び沿線自治体からの追加出資、100億円を自己資金で賄うとして、新規に200億円を借り入れたとしても、現在の金利状況であれば経営に問題はないでしょう。

 工期を約6年と見積もれば、道路拡幅完了後の2024年度に着工し、2030年度に開業するスケジュールが見えてきます。

【路線図】上北台、多摩センターそれぞれからの延伸ルート

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