なぜ島に駐屯地を作るの? 奄美、宮古、石垣…進む陸自の南西諸島配備 その現状と意義

なぜ島に駐屯地を作るの? 奄美、宮古、石垣…進む陸自の南西諸島配備 その現状と意義

2019年4月7日に行われた宮古駐屯地における新編行事にて、岩屋防衛大臣から宮古警備隊へ隊旗が授与された(画像:陸上自衛隊)。

地上の守りの要である陸上自衛隊が、鹿児島から沖縄にかけての南西諸島へ部隊の配備を進めています。広大なエリアに散らばる島々ゆえ、敵の侵攻に即応するための備えであることはもちろんですが、そこにはそれ以上の意義も含まれています。

陸上自衛隊が奄美大島と宮古島に部隊配備を開始

 2019年3月26日(火)、九州と沖縄本島のほぼ中間に位置する鹿児島県奄美大島と、沖縄本島の南西約300kmの位置にある沖縄県宮古島それぞれに、新たな陸上自衛隊の部隊が新編されました。両島に配備されたのは現在のところ、奄美大島に警備部隊(有事の際に島内を防衛する部隊)と地対艦、地対空ミサイル部隊あわせて約560人、宮古島には警備部隊約400人ですが、2020年以降には奄美大島と同様に宮古島にも地対艦、地対空ミサイル部隊が配備される予定です。

 上記の例からもわかるように、現在、陸上自衛隊は九州から沖縄にいたる長さおよそ1200kmの島しょ群、南西諸島の防衛を強化する姿勢を打ち出しています。これは近年、海洋進出を強める中国に対抗するためのもので、従来陸上自衛隊が配備されてこなかった、いわば「防衛の空白地域」を埋めようという動きです。

 2019年4月現在、沖縄本島の那覇駐屯地に置かれた第15旅団のほかに、南西諸島に配備されている陸上自衛隊の部隊としては、上述の奄美大島の警備部隊および地対艦、地対空ミサイル部隊と宮古島の警備部隊に加え、2016年3月に日本最西端の島である沖縄県与那国島へ配備された、付近を航行する艦艇などを監視する約160人の沿岸監視部隊があります。今後、奄美大島や宮古島と同様に、沖縄県石垣島にも警備部隊や地対艦、地対空ミサイル部隊が配備される予定です。

南西諸島に陸上自衛隊を配備する意義とは

 有事が発生した場合には、こうした平素から島々に配備される部隊に加えて、日本各地から増援部隊が派遣され島の防衛にあたります。特に、長崎県の相浦駐屯地を拠点とする「日本版海兵隊」こと水陸機動団や、戦車より軽量な機動戦闘車などを配備することで、部隊の身軽さを向上させた各即応機動連隊は、おそらくそのほかの部隊に先駆けて現地に到着するでしょう。

 それでは、このように南西諸島への部隊配備を行う意義とはいったい何でしょうか。それは、相手側が行動を起こした際の「コスト」を吊り上げることによる、抑止力の向上です。

 たとえば、自衛隊が一切配備されていない島を敵が占領しようと考えた場合、そのために必要な兵力の規模は少なくて済みます。しかし、自衛隊が配備されている島を占領しようと考えた場合には、当然ながらより多くの物資を準備し、装甲車両などの重たい装備や大量の兵力を動員する必要があり、またそれを運ぶための輸送機や輸送艦も用意しなければなりません。つまり、自衛隊が配備されていない島を占領する場合と比較して、準備と実施にかかる負担が非常に大きくなるわけです。また自衛隊は、いざとなれば日本各地から事前あるいは事後に増援部隊を派遣する態勢を整えつつあり、そうした部隊の存在も考えれば、相手方が準備しなければならない兵力や物資の量、そしてそれらを輸送するための負担は余計に吊り上げられるのです。

ポイントは「少しでも負担がかかると思わせること」

 さらに、奄美大島や宮古島などに地対艦、地対空ミサイルが配備されるという点も非常に重要です。

 現在、中国軍は平時から艦艇や航空機を頻繁に太平洋側へと進出させていますが、今後南西諸島に地対艦、地対空ミサイルが配備されることによって、有事における中国軍の東シナ海から太平洋にかけての艦艇や航空機の動向は大きく制限され、太平洋側への進出も難しくなります。言ってしまえば、中国軍を東シナ海の内側に封じ込めることができ、自衛隊やアメリカ軍が太平洋を安全に利用することが可能になるのです。

 また、それでもなお中国軍が太平洋へ進出しようとした場合には、陸上自衛隊のこうした脅威を取り除くために、南西諸島に対して事前に航空機や地上部隊による攻撃を行う必要がありますが、これは先述したように、その準備や実施に非常に手間がかかるため、結果として太平洋に向かうためのコストがこれまでよりぐっと高まることになるのです。

 相手にこちらを攻撃させることを思いとどまらせることが、いわゆる「抑止」ですが、現在、陸上自衛隊が進める南西諸島防衛は、まさにその抑止の典型例といえるでしょう。

【図】陸上自衛隊の南西諸島における新設駐屯地の位置関係

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