ANAの超大型機A380就航で競争激化のハワイ路線 座席数「大幅増」のメリットは

ANAの超大型機A380就航で競争激化のハワイ路線 座席数「大幅増」のメリットは

ANAのエアバスA380型機「フライングホヌ」初号機。今後、あと2機が導入される(2019年4月、恵 知仁撮影)。

ANA超巨大機A380導入で、日本〜ハワイ路線の競争激化が予想されます。ファーストクラスが新設されるほか、1便あたりの座席数は大幅増。運賃などの面で、利用者にどれほどのメリットがもたらされるのでしょうか。

A380就航でホノルル線の競争激化 利用者にメリットは?

 ANA(全日空)が2019年5月24日(金)、東京(成田)〜ハワイ(ホノルル)線に超大型機エアバスA380を導入します。

 もともとハワイマーケットはJAL(日本航空)が圧倒的に強く、オアフ島以外の島々も含め他社に先駆けて多くの旅行商品を開発してきました。JALが主催する「ホノルルマラソン」はすでに45年の歴史を持ち、日本人にとっては「ハワイ=JAL」という市場勢力図ができ上がっているところに、ANAが超大型機を投入してシェアの奪回を図るという構図になったわけです(2018年度上期の日本〜ハワイ路線シェアはJAL33%、ANA14%と大差)。

 A380就航に合わせANAはホノルル空港に自社ラウンジを新設、JALは内外各社との提携による新しいハワイの旅行スタイルを打ち出すなど、両社のサービス・運賃面の競争はこれからもヒートアップしそうで、利用者にとっては様々なメリットが期待できる環境になってきました。

 ANAは計3機のA380を順次導入します。これらを運航する場合、数字上は東京〜ホノルルのデイリー3往復は可能ですが、オペレーション上のトラブルなどに対応するにはある程度の機材余裕を持つ(スタンバイ予備機を確保する)必要があるため、成田線の2便をA380で運航することになるでしょう。この場合、1便あたりの座席数は現在の246席が520席と2倍以上の増加となりますが、ビジネスクラスは48席が56席と大きな変化はなく、2.3倍以上の座席増となるプレミアムエコノミーおよびエコノミー、そしてANAが初めてハワイ線に投入するファーストクラスをどう売っていくかが、大きな課題になるとみられます。

結局「JALよりやや安い」くらい?

 ただ、運賃面では現時点で際立った施策が打たれているようには見えず、全般的に「JALをやや下回るレベル」での運賃設定になっているようです。

 強いていえば「ノーマルエコノミー(変更可能型)が10万円とかなり安い」「プレミアムエコノミーとビジネスが22万円程度で同運賃」というのが目につく程度で、まずは安売りをしてでも席を埋めようといった販売姿勢はうかがえません。これまで巷間いわれているように、「多少席が余っても、ANA全体でマイレージによる特典航空券の席が取れないとの苦情が多い現状を、少しでもこのホノルル線の座席で解消できれば、下手に安売りするよりいい」と考えているのかもしれません。

 ANAはすでに2019年1月より、A380が就航する5月24日から7月11日(夏休み多客期開始)まではA380便に限って「エコノミー、プレミアムエコノミーに空席があればマイレージ特典航空券で搭乗可能」というキャンペーン(さらに抽選で100人にひとりマイル全額返還)を展開しており、当初からエコノミー席を埋めることには懸念を感じていることがわかります。

 マイレージ特典航空券については、「便が取れない」という旅客の苦情で企業イメージが悪化するリスクがあるというだけでなく、顧客に消化されていないマイルは負債として会計処理をしなくてはなりません。これまでは各社によって処理方法が違っていましたが、今後は国際財務報告基準に従って厳格な会計基準が適用されるようになります。「マイルの消化」は空席になりそうな座席を提供することが、航空会社にとって最も効率的(物品などへの交換だと仕入原価が流出してしまう)であるため、このようなキャンペーンが行われていると考えるのが自然でしょう。

競争にはLCCの動向も影響

 2019年冬ダイヤからのフル稼動後に毎日2往復、32席を売らなくてはならないファーストクラスについても、10月以降、30万円台に設定されるなど相当な安価になっており、営業サイドの危機感がうかがえます。

 もっとも「本当の思い切った施策」はウェブで閲覧できるようなところには反映されないのが普通で、特定の旅行代理店へのボリュームインセンティブ(多くの金額を売ればキックバックを支払う)や、法人および高額所得者に強い代理店向け、あるいはANAの直販用に大胆な安売り施策が打たれている可能性があるので、5月以降の販売実態など、もう少し情報を拾ってみる必要があるでしょう。A380登場で旅客利便や運賃メリットなどがどう変わっていくのか、それを見極めるには時間がかかりそうです。

 また5月30日(木)にはシンガポールのLCC、スクートが関空〜ホノルル線から撤退します。子会社の統合を進めるシンガポール航空による路線の取捨選択判断の一環ではありますが、先発のエアアジアXを追って長距離LCCが以遠権(自国から相手国へ到着した航空機を、さらに第三国へ運航する権利)を使った、他国間の同一路線で競合する日本初の事例は、スクートの搭乗率低迷(シンガポールからの乗り継ぎ客が特に不調だったとのこと)によってわずか1年半で幕を閉じました。しかしこれは日本〜ハワイ間の競争激化の幕開けに過ぎず、今後、首都圏市場で長距離LCC各社がどのような戦略をとるかも含め、しばらくはハワイから目が離せない状況が続きそうです。

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