工事現場も下水道も「観光資源」 国ぐるみで推進する「インフラ観光」その魅力とは?

工事現場も下水道も「観光資源」 国ぐるみで推進する「インフラ観光」その魅力とは?

埼玉県春日部市にある「首都圏外郭放水路」。官民連携で見学ツアーを強化し、2018年8月からの4か月間で3万5000人が訪れた(画像:photolibrary)。

道路やダム、水道施設といったインフラそのものを観光資源とする「インフラツーリズム」の拡大に国が力を入れています。高速道路会社も、自社の資産を活用したツアーを新事業として打ち出すほど。どのような魅力があるのでしょうか。

道路会社も「新規事業」とする「インフラツアー」

 道路やダム、水道施設といった生活を支えるインフラ。それらを「観光資源」として活用する動きがあります。

 たとえば、東京湾アクアラインのトンネル内避難路などを見学する「裏側探検ツアー」。NEXCO東日本が年に1回行っていたところ、2019年から通年に拡大し、同社の旅行部門が主催するバスツアーなどのほか、外部の旅行会社によるツアーの受け入れも始まりました。

 NEXCO東日本ではこのほか、関越道の関越トンネル(新潟・群馬県境)の裏側や、常磐道の4車線化工事現場を見学するバスツアーなども実施しています。参加者からは「工事について勉強になった」「ふだん見られないところを見られてよかった」「特別な体験だった」といった声があるとのこと。

 一般的に道路建設などの公共事業は、地元の協力が不可欠であることから、主に地域住民へ向けた施設見学会などが行われています。NEXCO東日本はそれを2018年に「新規事業」として位置づけ、旅行商品としての「インフラツアー」を本格化させているのです。ツアーの添乗員として参加者を案内している同社の新事業推進部、大西秀平さんによると、「地域の方に高速道路のことを理解していただくのが第一義ですが、政府も『インフラツーリズム』を盛り上げていることもあり、遠方からも参加しやすいようにしました」とのこと。

 国土交通省総合政策局は2019年3月、「インフラツーリズム拡大の手引き(試行版)」を策定し、道路や河川、ダム、砂防、下水道、港湾、空港などに関連する土木施設への観光者数を、2017年の年間50万人から、2020年には100万人に増やす目標を掲げています。これら施設は「観光資源」として、どのような魅力があるのでしょうか。

下水道も観光資源に?

「インフラツーリズム」について、国土交通省総合政策局に聞きました。

――「インフラツーリズム」は、いつ頃から活発になってきたのでしょうか?

 政府が「インフラツーリズム」の推進を初めて打ち出したのは、2013(平成25)年に観光庁が発表した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」です。これ以降、施設管理者と民間の旅行会社などが調整したツアーなどが増加しており、観光資源としての認知度が上がってきています。

――どのような施設が人気なのでしょうか?

 埼玉県春日部市にある「首都圏外郭放水路」(江戸川周辺の氾濫を防ぐための導水用地下トンネル。巨大なコンクリート柱が林立する地下空間が「地下神殿」などと呼ばれる)などは、外国人観光客も多く、マスコミにもしばしば取り上げられています。こうした状況を受け、見学に積極的な施設管理者も増えてきました。

 建設中の施設としては、群馬県の「八ッ場(やんば)ダム」でしょう。10くらいの見学ツアーが設けられているほか、工事現場をライトアップした夜間の見学も行われています。実際に使われているものでは、神奈川県の宮ヶ瀬ダムが「観光放流」を定期的に行っており、2017年には10万人以上が訪れました。

――下水道施設などは、本当に観光資源になり得るのでしょうか?

 それも「見せ方」次第です。東京都では、歴史的な下水処理施設などの見学ツアーを実施して人気だと聞きます。ポイントはその施設によって異なり、SNSでの拡散を見越した「いい写真が撮れる」ことをアピールするところもあれば、「ふだん入れないところに入れる」という特別感をアピールするところもあります。

※ ※ ※

 国土交通省総合政策局によると、「インフラを目当てに来た人は、その地域に滞在する時間が増えますので、地方への経済効果は間違いなく大きいでしょう」とのこと。ただ、人気の施設は首都圏に比較的近いところが多く、これを全国に広めていくのが現在の課題だそうです。

「『2020年までに(全国のインフラへの)来訪者数100万人』というのは、ひとつの目標ではありますが、それ単体で達成することに意義はありません」(国土交通省総合政策局)

 インフラをいかに活用し、来訪者に地域へ繰り出してもらうかが重要だと話します。

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