ある意味日本の「エリア51」 毎夏恒例、富士山麓の夜空に浮かぶ発光体の正体は…?

ある意味日本の「エリア51」 毎夏恒例、富士山麓の夜空に浮かぶ発光体の正体は…?

毎夏、富士山のふもとで見られる発光体をとらえた1枚。知っている人ならば、ひと目見ればその正体がわかるもの、ではある(武若雅哉撮影)。

富士山麓では毎年夏になると、夜空にゆらゆら浮かぶ発光体が観測されます。そこは自衛隊の演習場で、一般人は簡単に入れない地域……とはいえ中で何が行われているかはお察しのとおりですが、いくつか種類がある発光体の正体を見ていきます。

富士山麓オーブ(光球)飛ぶ

「謎の飛行物体」いわゆるUFOは、真相はともあれ古今東西、その目撃談にこと欠きません。なかでも数多くの報告が挙がるアメリカの「エリア51」は、熱心な愛好家たちから「聖地」とされている場所です。日本国内でも北海道の八雲町や東京都多摩地区など、目撃情報の多さで知られる地域がいくつかあります。

 そうした目撃情報は、おおむね夜空に光るなにかを見た、というものですが、実は年間20万人以上が訪れる富士山の周辺でも、毎年夏になると夜空に浮かぶ発光体が観測されています。

 それはオレンジ色であったり、白かったりし、そしてゆらゆらと風に流されながら落ちていくように見えるなどするといいます。

 これら富士山周辺で発光体が目撃される場所にあるのは、自衛隊の演習場です。そしてその時期、周辺には多くの自衛隊車両が行き交い、演習場の入り口には自衛官が、出入りする車両や人員の監視を行っています。当然、演習場へは、関係のない一般人が立ち入ることはできません。

 自衛隊と謎の発光体。いったい、どのような関係があるのでしょうか。

1発でろうそく160万本ぶんにも!

 ゆらゆらと降りてくる、オレンジ色の明るい発光体の正体は、自衛隊で使用している「照明弾」というものです。

 この照明弾は、夜間における戦闘を想定した訓練で使用されます。光の明るさ(光度)を表すのに「カンデラ」という単位があり、1カンデラはおおよそろうそく1本ぶんですが、小さい照明弾では光度60万カンデラの明るさで地上を照らし、大きな照明弾になると100万カンデラを超える明るさになります。

 照明弾は、陸上自衛隊が装備する各種の火砲(大砲などの火器)で打ち上げますが、装備により使用弾薬およびその威力が異なるように、照明弾も装備により、その光度が多少異なります。たとえば81mm迫撃砲の場合、1発の照明弾の光度は100万カンデラで、100mの高さから、東京ドームとほぼ同じ面積を照らすことができます。120mm迫撃砲の場合だと、1発で160万カンデラ、84mm無反動砲の場合は、1発で65万カンデラという明るさで光り輝きます。「ゆらゆらと降りてくる」挙動は、照明弾に取り付けられたパラシュートによるものです。

 このほか火砲による「発光体」としては、白く光りながら流れ星のように落ちてくるものがあります。これは「曳(えい)火射撃」という、空中で砲弾を炸裂させる方法で射撃した場合に見られるものです。

浮上していく発光体の正体は?

 照明弾ほど頻繁に見ることはできませんが、地上から空へと昇っていく発光体の目撃情報もあります。

 この明かりの正体は、空挺部隊が演習場へパラシュート降下などをするために必要な情報を集める、「観測気球」に取り付けられた照明です。

 空挺部隊の降下訓練は昼夜を問わず行われます。この観測気球はそのために揚げられるもので、その結果をもとに、航空自衛隊の航空機や陸上自衛隊のヘリコプターが適切な進路から演習場に進入し、空挺隊員を降下させます。

 ちなみにこの夜間降下ですが、現役の空挺隊員によると、着地地点が暗くてよく見えず、屈強揃いの彼らでも着地する直前は“少しだけ”怖いそうです。

 こうした訓練時は、一般人が演習場に立ち入ると大変危険なため、監視任務を持った自衛官たちによって、周囲は厳重に警備されます。その厳重さは、まさに「エリア51」に通ずるものがあります。そのため、一部UFO愛好家のあいだでは「自衛隊がUFOを使って訓練している」ともささやかれているそうです。

 この夜間訓練の様子は、毎年8月末に行われる「富士総合火力演習」という実弾演習において、一般人であってもチケットがあれば見学できます。ほか、御殿場市内や富士山からも、この照明弾を確認することができます。富士山周辺で目撃される「謎の発光体」の正体は、“そのほとんどが”こうした自衛隊の照明弾などのことだったのです。

 ただし、なかには照明弾などとは明らかに違う発光体を見たという目撃情報もあります。それは、単なる見間違いか、それとも……。

【写真】落下傘が次々と 発光体に深く関与する第1空挺団の降下

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