台風の予想進路図? 北陸新幹線の敦賀〜新大阪間、公表ルートが「大ざっぱ」な理由

台風の予想進路図? 北陸新幹線の敦賀〜新大阪間、公表ルートが「大ざっぱ」な理由

高崎と金沢を結ぶ北陸新幹線。いまは金沢〜敦賀間が工事中で、敦賀〜新大阪間はルートが公表された(2015年4月、草町義和撮影)。

北陸新幹線の未着工区間である敦賀〜新大阪間のルートが公表されました。しかし、ルートは幅10km程度の太い線で描かれていて、詳細な位置は示されていません。そこには、大規模プロジェクトで重要な手続きの改正がありました。

幅10kmの太い線でルートを図示

 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)は北陸新幹線 敦賀〜新大阪間の「計画段階環境配慮書」を作成し、2019年5月に公表。これにより建設ルートが明らかになりました。

 配慮書によると、北陸新幹線は敦賀駅から日本海(若狭湾)に沿って西へ進み、福井県小浜市から山岳地帯を南下。京都府内に入り、京都市を経て京田辺市で西へ向きを変え、大阪市までを結びます。全体の約8割がトンネルで、京都市と大阪市などの市街地も地下トンネルにすることが考えられています。駅は福井県内が敦賀駅と小浜市(東小浜)付近、京都府内が京都駅と京田辺市(松井山手)付近、大阪市内が新大阪駅としています。

 しかし、配慮書に掲載されている「事業実施想定地域」のルート図を見ると、線路の予定地が5〜10km程度の幅で示され、駅の位置も最大で直径10kmくらいの円で描かれており、かなり「大ざっぱ」。これまでよりは位置がはっきりしてきたものの、買収の必要がある土地の細かい位置までは分かりません。

 小浜から京都方面へのルートの幅は、5km程度から徐々に10km程度に拡大して、その先に半径10km程度の円(駅の想定位置)があります。そのため、SNSでは「台風の予想進路図みたい」という声も上がっています。

 ルートや駅の位置が「大ざっぱ」なのは、「環境影響評価」(環境アセスメント)の手法が、昔とは変わったためです。

 環境アセスメントとは、鉄道や道路の建設など大規模なプロジェクトを実施する際、大気汚染や騒音、振動など周辺の環境に及ぼす影響を調査、予測する手続きのこと。新幹線の場合、以前は詳細なルートや駅の位置を定めた建設計画を取りまとめたうえで、周辺の環境への影響を調査していました。

「計画を評価」から「計画に反映させる」へ

 しかし、環境アセスの調査を行った結果、建設予定地に希少生物がいることが分かったり、沿線にある住宅地の騒音や振動が想定以上に悪化することが判明したりしても、建設計画を取りまとめたあとでは、計画を大きく変えるのが難しいといった課題がありました。これでは、環境アセスを行う意義が薄れてしまいます。

 そこで、「この都市と都市を結ぶ鉄道を建設しよう」という「大ざっぱ」なルートを決めたのち、環境への影響をあらかじめ調査。その結果を建設計画に反映させ、環境に配慮した詳細なルートを決めることになりました。

 この考え方に基づく手続きが、「計画段階環境配慮書」という文書の作成と公表です。この文書では、環境アセスを行う複数のルート案と駅位置案を示したうえで、ルートや駅位置を選ぶ際に配慮しなければならない項目(騒音や振動、地下水脈の位置、文化財、動植物など)と、各項目の予測結果や評価結果などが記されます。

 北陸新幹線 敦賀〜新大阪間の計画段階環境配慮書の場合、複数のルート案と駅位置案を最大10km程度の「幅を持ったルート帯」(鉄道・運輸機構)として示しました。そのため、台風の予想進路図のようなルート図になったわけです。

 日本では2011(平成23)年4月、配慮書の作成手続きを採り入れた環境影響評価法の改正法が公布。2013(平成25)年から2014(平成26)年にかけて施行されました。

 ちなみに、JR東海は2011(平成23)年8月、リニア中央新幹線 東京(品川)〜名古屋間の配慮書を作成。改正法の施行前でしたが、法改正の趣旨に準じて配慮書を作成し、幅5km程度の「大ざっぱ」なルートを示しました。その後、詳細なルートを選定し、2014(平成26)年に工事実施計画が認可されています。

 今後も、鉄道新線のような大規模プロジェクトが動き出すたびに「台風の予想進路図」を見ることになるかもしれません。

【画像】北陸新幹線 敦賀〜新大阪間のルート

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