持ち逃げは不可避か 駅やバスの無料貸し出し傘、返却率で明暗わかれる

駅やバスの傘無料貸し出し、返却率で明暗 仙台市交通局は返却率76%

記事まとめ

  • 傘の無料貸し出しをしている駅などがあるが、返却率が悪くサービス停止するケースも
  • 仙台市交通局の2018年における傘の返却率は76%で、他都市に比べても高い結果のよう
  • 駅構内に傘立てを設けず、駅窓口で申し出てもらう方式を採っているところが特徴

持ち逃げは不可避か 駅やバスの無料貸し出し傘、返却率で明暗わかれる

持ち逃げは不可避か 駅やバスの無料貸し出し傘、返却率で明暗わかれる

警視庁管内で拾得物として処理される傘類は、年間およそ34万点以上。写真はイメージ(画像:federicofoto/123RF)。

駅やバス車内などで、の無料貸し出しを行っていることがありますが、利用者が必ずしも使用後に返却するわけではないようです。返却率の悪さからサービスを停止する事例もある一方で、「返却率70%以上」というところもあります。

短命に終わることも多い傘の無料貸し出し

 一部の駅などで行われている傘の無料貸し出しが、返却する人が少ないために、継続が困難になるケースがあります。

 たとえば名古屋市交通局では、「友愛の傘」と呼ばれる傘立てを市営地下鉄の全87駅中85駅で設置しています。1962(昭和37)年から50年以上にわたり続くサービスですが、傘が傘立てに全くないケースが多く、「返却率は高くないと認識しています」(名古屋市交通局)とのこと。

 2016年3月には、北海道函館市が北海道新幹線の開業を機に、函館駅や市内の主要箇所に傘立てを設置し、無料貸し出しサービスを開始しましたが、返却率の低さから1年後に廃止となりました。2000年代には京王電鉄や、新京成電鉄などでもこのようなサービスが一時実施されましたが、いずれも短命に終わっています。

 2018年6月から駅の改札口付近に傘立てを設置し、傘の無料貸し出しを開始したIRいしかわ鉄道(石川県内の旧JR北陸本線を運営)でも、「返却率は、はっきり言って高くありません」とのことで、傘をひんぱんに補充しているといいます。

 それでも同社がサービスを続けるのは、同社に所有権が移行した忘れ物の傘(遺失物法に基づく保管期限の過ぎた傘)を有効利用できる側面があるからです。「大量に発生する忘れ物の傘を廃棄するのにもお金がかかります。それを有効利用し、サービス向上につなげる目的で始めました」といい、状態がよく、柄が少ないものを選別して貸し出し用にしているそうです。

 なお、名古屋市営地下鉄の「友愛の傘」や、函館市が提供していた傘は新品です。前者の傘は、団体・企業から寄付されたもので、その寄付があったときに初めて傘立てに補充される仕組みだそうです。後者の場合は、新品のビニール傘に専用のロゴをプリントしていたそうですが、返却されず追加購入のコストがかかることも、廃止の要因でした。

「返却率76%」要因は?

 忘れ物の有効活用を目的として、新たに傘の無料貸し出しサービスに乗り出し、傘がしっかり返却されているケースもあります。

 仙台市交通局では、2015年10月から市営地下鉄の一部駅で傘の無料貸し出しを開始し、2016年4月には全30駅に拡大しました。

「2018年の返却率は76%といったところで、他都市に比べても高いといわれます。貸し出し実績は年4200本ですので、ある程度、サービスとして定着しているでしょう」(仙台市交通局)

 仙台市のサービスの特徴としては、駅構内に傘立てを設けず、駅窓口で申し出てもらう方式を採っていることが挙げられます。雨の日には、窓口付近に傘を貸し出している旨のお知らせを掲出しているそうです。

 新潟交通では新潟市内の中心部と南西部を結ぶバス路線「萬代橋ライン」の車内で、2018年6月から忘れ物の傘を再利用する形での無料貸し出しサービスを始めました。

 導入前は返却率の高さは期待しておらず、短命に終わると思っていたそうですが、ふたを開けてみると、「意外と返却いただいています」とのこと。梅雨の時期はもちろん、雪が降る冬季にも傘がよく利用され、また返却されたそうです。こちらは傘立てを設置していますが、その場所は車内の最前列で、借りる際も返す際も、運転手の対面で行われます(返却は新潟交通のどのバスでも運転手に申し出ることで可能)。

 このような「人の目」がなくても、高い返却率を維持しているサービスもあります。ダイドードリンコが2015年から、街なかにある飲料の自動販売機に傘立てを据え付けて行っている「レンタルアンブレラ」です。2016年に関西エリアで7割の返却率を確認したことから、他地域にも導入し、2019年6月現在、18都道府県まで拡大しています。

 社会貢献とともに、「自販機に親しんでもらいたい」という思いから始めたというこのサービス、ダイドードリンコによると「返してもらえる」秘訣は大きくふたつあるといいます。

鉄道会社の「忘れ物傘」が巡り巡って…

 ひとつは、駅や繁華街、観光地など人通りの多いところで実施していないことだといいます。「そのような場所では、1回きりの使用で返ってこないことが多いですし、観光客の方は、返したくても返せないという状況になります。そもそも、売店などで傘を購入しやすい場所ではなく、傘を買いたくても買えない方に手を差し伸べられるようにしています」とのこと。駅からやや離れた、地元の特定の人が毎日通るような場所で展開しているのだそうです。

 もうひとつの要因は、ビニール傘を使っていない点だそうです。「ビニール傘は風で破損しやすいうえ、似通ったものが多いこともあり、家まで使って、そのままにされてしまう可能性が高いためです」と話します。ただし、仙台市交通局や新潟交通などでは、貸し出し傘はどちらかというとビニール傘が多いそうなので、これはケースバイケースかもしれません。

 なお、ダイドードリンコでは当初、新品の貸し出し用傘を自前で用意していましたが、2019年度からは忘れ物のリサイクル傘のみとし、おもに近鉄、西武、東急、名鉄、JR西日本の鉄道各社から提供を受けたものを活用しているとのこと。

「鉄道会社さんにとっては忘れ物の有効利用になるほか、たとえば近鉄さんから提供された傘は関西で、東急さんから提供された傘は関東で優先的に使っています。各社からは『直接持ち主にお返しできなかったものを、間接的に還元できている』という点を喜んでいただいています」(ダイドードリンコ)

 忘れ物の有効活用やサービス向上につながる傘の無料貸し出し、今後も様々な展開があるかもしれません。

【画像】返却率7割! 自販機の無料貸し出し傘

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