梅田と直結「阪急大阪空港線」実現の可能性は? 整備効果や採算だけじゃない課題

梅田と直結「阪急大阪空港線」実現の可能性は? 整備効果や採算だけじゃない課題

大阪空港線の分岐駅にすることが考えられている阪急宝塚本線の曽根駅(2017年2月、草町義和撮影)。

古くから大阪の空の玄関口である伊丹空港。いまはモノレールが乗り入れているものの、大阪の中心部と伊丹空港を直接結ぶ鉄道はありません。阪急がアクセス鉄道の整備を提案していますが、採算性のほかにも課題があります。

乗り換え不要、時間も短縮

 関西には、大阪府と兵庫県の府県境に建設された大阪国際空港(伊丹空港)、そして大阪湾を埋め立てて建設された関西国際空港(関西空港)と神戸空港などがあります。これらは鉄道が乗り入れていて、アクセスは比較的便利といえます。

 しかし、伊丹空港は大阪の郊外を走る大阪モノレール線が乗り入れているものの、梅田など大阪の中心部に直通する鉄道はありません。鉄道で梅田から伊丹空港に向かう場合、阪急宝塚本線と大阪モノレール線を乗り継ぐ必要があります。そこで現在考えられているのが、「大阪空港線」の構想です。

 大阪空港線は、阪急電鉄が提案している全長約4kmの新線構想。詳細なルートはまだ固まっていませんが、阪急宝塚本線の曽根駅(大阪府豊中市)で分岐し、伊丹空港に乗り入れることが考えられています。2017年9月、阪急阪神ホールディングスの角和夫会長が記者会見で「いまは構想段階だが、実現に向けて努力していきたい」と話し、実現に向けて強い意欲を示したといいます(2017年9月12日付け読売新聞大阪朝刊)。

 梅田〜伊丹空港間は、所要時間(平日昼間、乗り換え時間を含む)が鉄道利用の阪急宝塚本線〜大阪モノレール線で約30分。リムジンバス(約40分)より短く、運賃もリムジンバスより220円安い420円です。しかし、途中で乗り換える必要があるため、特に大きな荷物を持って移動するなら乗り換えのないリムジンバスのほうが楽に移動できます。

 大阪空港線が整備されると、梅田から伊丹空港まで直通列車が運転されるようになり、リムジンバスと同様に乗り換えが不要に。その一方で所要時間は約6分短縮され、鉄道を使ったアクセスが一段と便利になりそうです。

実現に必要な「3新線」の整備

 ただ、わずか4kmほどの路線とはいえ、本当に実現するかどうかは未知数です。

 近畿運輸局は2018年4月、大阪空港線を含む関西の新線構想について、整備効果などを試算した調査結果を公表。それによると、大阪空港線の事業費(車両の導入費を除いた額)は約700億円、利用者数は1日あたり約2万5000人と想定され、この路線の社会的な整備効果は事業費の1.4倍あるとされました。

 この試算は、3つの新線が整備されていることを前提条件としています。具体的には、新大阪〜北梅田(仮称)〜JR難波・南海新今宮間を結ぶ「なにわ筋線」(新大阪〜北梅田間はJR東海道本線貨物支線の地下化)と、阪急線の十三駅となにわ筋線の北梅田駅を結ぶ「なにわ筋連絡線」、十三駅と新大阪駅を結ぶ「新大阪連絡線」です。

 なにわ筋線は、大阪の中心部と関西空港のアクセスを改善するための新線。ほかの2線も、なにわ筋線の整備効果を高めるための支線といえます。これら3新線との連携を図ることで、大阪空港線の整備効果も高まるというわけです。たとえば、なにわ筋線となにわ筋連絡線を整備したうえで大阪空港線も整備すれば、十三駅で乗り換える必要はあるものの、伊丹空港〜関西空港間を移動しやすくなります。

 逆にいえば、3新線を先に整備しないと、大阪空港線の整備効果が出にくいともいえます。なにわ筋線は2031年春の開業を目標にしていますが、なにわ筋連絡線と新大阪連絡線の開業時期は未定です。

 しかも、近畿運輸局の試算では、大阪空港線の整備効果はあるとしつつ、採算性に関しては「40年間で黒字転換する可能性が低い」としています。国が鉄道の整備に補助金を出すかどうかを判断する際、開業後40年以内に黒字化できるかどうかがひとつの目安になっているため、現状では事実上、建設できません。

 大阪空港線を整備するなら、まずなにわ筋線やなにわ筋連絡線、新大阪連絡線の整備を進め、そのあいだに大阪空港線の採算性向上策を並行して検討する必要があるでしょう。仮に実現することが決まったとしても、開業までには相当な時間がかかりそうです。

古くから構想はあるものの…

 伊丹空港と大阪の中心部を直接結ぶ鉄道は、1950年代から幾度となく検討されてきました。たとえば1971(昭和46)年、運輸大臣の諮問機関だった都市交通審議会が関西圏の鉄道整備基本計画を取りまとめ、大阪市営地下鉄(現在の大阪メトロ)四つ橋線を延伸する案を盛り込んでいます。

 1989(平成元)年には、兵庫県伊丹市がJR福知山線(JR宝塚線)から分岐して伊丹空港に乗り入れる新線「大阪国際空港広域レールアクセス」の構想を打ち出しました。2004(平成16)年に近畿地方交通審議会(国交省近畿運輸局長の諮問機関)が近畿圏の鉄道ネットワークに関する意見を取りまとめた際、同審議会は大阪国際空港広域レールアクセスを中長期的に整備が必要な路線としました。

 しかし、これらの構想は、いずれも実現していません。直接的には事業費や採算性の問題をクリアできなかったためですが、そもそも伊丹空港の「未来」が見えなかったことも、背景にあります。

 伊丹空港は高度経済成長に伴って飛行機の発着数が増加。一方で周辺の人口も増え、飛行機の騒音が大きな社会問題になりました。そのため、大阪湾に新しい空港(現在の関西空港)を整備することが計画された際、伊丹空港の廃止も考えられるようになり、アクセス鉄道を整備すべきかどうかの議論も停滞したのです。

 関西空港の着工から3年後の1990(平成2)年には、伊丹空港の存続が決まりましたが、2010(平成22)年前後には、大阪府の橋下 徹知事(当時)が伊丹空港の廃止論を唱えます。これは伊丹空港跡地の開発利益で大阪の中心部と関西空港を結ぶリニアモーターカーを整備しようというもくろみがあったため。その影響で伊丹空港アクセス鉄道の検討も再び停滞したといえます。

 その後、伊丹空港の廃止論は尻すぼみになり、旅客数も2012(平成24)年度以降は増加が続いていることもあって、アクセス鉄道の整備の機運が再び高まったといえます。路線の事業費や採算性だけでなく、伊丹空港の存続方針を引き続き維持できるかどうかも、大阪空港線の実現のカギを握っているといえそうです。

【地図】こんなにあった! 伊丹空港アクセス鉄道計画

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