F-35なぜ「次世代機相当」へ進化できるのか? LM社が発表した「性能向上改修」とは

F-35なぜ「次世代機相当」へ進化できるのか? LM社が発表した「性能向上改修」とは

2019年の「パリ国際航空宇宙ショー」に出展されたF-35A「ライトニングII」戦闘機(画像:アメリカ空軍)。

航空自衛隊も導入している最新鋭戦闘機「F-35」の性能向上改修について、詳細が発表されました。その内容は「もはや別物の戦闘機」といえるほどの進化ですが、コスト面も含めこれが可能な理由のひとつは、「数」の力にあります。

F-35は更なる進化、次世代相当の能力獲得か

 2019年6月17日、フランスのパリ郊外、ル・ブルージェにおいて開催されていた世界最大級の航空見本市「パリ国際航空宇宙ショー」で、ロッキード・マーチンはF-35「ライトニングII」戦闘機における、最初の性能向上改修型「ブロック4」ソフトウェアの開発が進行中であることを発表しました。

 開発の開始自体はかねてより知られていましたが、同社はF-35について、ブロック4の適用によって現在の「第5世代戦闘機」を上回る「第6世代戦闘機」相当の能力を得ることになるとしています。

 F-35は2019年6月現在、配備中の機体はすでに400機以上に達しており、現行型は初期開発段階であるシステム開発実証(SDD)を終えた完全作戦能力型「ブロック3F」という仕様に準拠しています。

 ブロック4における性能向上は、おもにソフトウェアの更新によって行われますが、まずハードウェア面においては、胴体内ウエポンベイに携行可能な空対空ミサイルが4本から6本へと増強されます。これによってF-35の弱点であった、機内にすべての兵装を収容する必要がある「ステルスモード」時における、ミサイル搭載数の少なさが改善されます。

 また、既存のAIM-120「アムラーム」中距離空対空ミサイルの約2倍に達する射程を持った、高性能空対空ミサイル「ミーティア」の運用能力が付加され、空対空戦闘能力が向上する見込みです。

 そして空対地攻撃能力は、それ以上に大幅な拡張を予定しています。ブロック3Fでは多種の誘導兵器を搭載することができませんが、新たに射程300kmの対地・対艦巡航ミサイル「JSM」、ウエポンベイ内部に8発を収納できる小型滑空爆弾「SDB II」、B-61戦術核、外部増槽など多数の兵装が使用可能になります。

 ほか統合コアプロセッサーの一新、電子妨害能力の向上、レーダー・センサー類、ネットワークやナビゲーションの強化や、複数無人機の統制、赤外線レーザーなど光速度兵器への対応、およびコックピットの一新などが行われると見られます。

ブロック4は墜落も自動で回避

 ブロック4に対応したF-35が「第6世代戦闘機」と呼ばれるようになるのかどうかはわかりませんが、少なくともブロック4によって既存のブロック3F仕様のF-35とはほとんど別の戦闘機といってよい能力を得ることになります。

 そして戦闘能力には直結しませんが、「自動墜落回避システム(AGCAS)」も実装されます。自動墜落回避システムは、パイロットが何らかの状況によって操縦能力を失った場合などにおいて、自動的に地面への衝突を回避し、安全な状態へ復帰する装置です。

 2019年4月9日、航空自衛隊のF-35Aが墜落する事故が発生しました。原因はパイロットが「バーティゴ(平衡感覚喪失)」に陥った可能性が高いと報告されており、自動墜落回避システムはすべてのケースにおいて墜落を防げるわけではありませんが、これを備えたブロック4であれば今後、類似の事例において最悪の事態とはならずに済むかもしれません。

 F-35に限らず、例外なくすべての現代戦闘機の開発は極めて長い時間を必要とするため、必要な能力に優先順位を付け、まず最低限の能力を持った状態で実用化し、その後はおもにソフトウェアのアップグレードによって能力を高めてゆく、いわばスマホのアプリと同じような形式で行われる方式を採用しています。

 よってブロック4はF-35というプロジェクトの枠組みにおいて、事前に予定されていた性能向上計画に過ぎません。ブロック4実用化は2024年を見込みます。

戦いも性能向上もやはり「数」が力に

 ブロック4の開発はソフトウェアが80%を占め、予想されるコストは10億8000万ドル(約1100億円)であり、これはF-2戦闘機の開発費のほぼ半額に匹敵し、うち7割をアメリカが負担します。

 F-35の発注はすでに3000機を大きく上回っており、2023年までに1000機の生産が完了する見込みです。そしてブロック3Fからブロック4へのアップグレードには、米軍配備機のみで105億ドル(約1兆円)が必要であると見積もられています。

 F-35はブロック3Fに達するまでに、555億ドル(約6兆円)の研究開発費を要しました。現代戦闘機はばく大な研究開発費が必要であり、設計寿命である30年から50年の運用期間においては性能向上も欠かせません。

 今後ブロック5、ブロック6と性能向上し続けることになるF-35は、その都度、数百億から千億円単位の開発費が必要となります。しかし、すでに3000機以上の生産が決まっているF-35は、将来にわたって必要な研究開発費の1機あたりの額を非常に小さく抑えることができます。

 性能向上は、ほかの戦闘機においても必要となります。これに要する研究開発費は膨大な額ですが、F-35は生産機数がけた違いであるため、1機あたりで考えれば極めて安価に最新鋭機と同等の能力を維持し続けられるという大きな強みを持っています。

 日米欧などいくつかの国においては、21世紀中ごろの実用化を見込む次世代戦闘機コンセプトがすでに発表されていますが、こうした次世代戦闘機の開発を具体化させるには、まずは圧倒的なコストパフォーマンスを武器に性能向上し続けるF-35を「あえて選ばない口実づくり」に苦労することとなるでしょう。

【写真】海自いずも型もいずれ…F-35Bと空母「クイーン・エリザベス」

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