「兄弟でANAの機長になる!」 でも先輩は弟 「兄弟パイロット」の夢、実現のドラマ

ANA「兄弟機長」実現 廣田圭司さんが機長として初フライト、副操縦士は弟の義記さん

記事まとめ

  • ANAの羽田発福岡行きNH247便で、廣田圭司さんは機長としての初フライトを迎えた
  • 圭司さんの右側に副操縦士として座るのは、3歳下の弟である廣田義記さんだった
  • 弟の義記さんは2018年に先に機長へ昇格済みで、それには理由があったという

「兄弟でANAの機長になる!」 でも先輩は弟 「兄弟パイロット」の夢、実現のドラマ

「兄弟でANAの機長になる!」 でも先輩は弟 「兄弟パイロット」の夢、実現のドラマ

兄の廣田圭司機長(右)と弟の廣田義記機長(2019年7月5日、伊藤真悟撮影)。

「兄弟でANAの機長になる!」――そんなある兄弟の夢が実現し、兄弟ふたりの手によるフライトが行われました。しかし、パイロットの道へ先に進んだのは弟で、機長になったのも弟が先。なぜ兄は、弟の背中を追ったのでしょうか。

カメラのフィルムが切れ、「パイロットになろう」

 2019年7月5日(金)、ANA(全日空)の羽田発福岡行きNH247便で、1人のパイロットが「機長」としての初フライトを迎えました。機長の名は廣田圭司さん。そして、その右側に副操縦士として座るのは、3歳下の弟である廣田義記さんでした。

 弟の義記さんは2018年3月、先に機長へ昇格済み。この日は兄の門出を祝うため、副操縦士としての乗務です。兄弟ふたりでの乗務は、弟の義記さんが機長として初フライトを迎えた際に、兄の圭司さんが副操縦士として乗務したとき以来、今回が2回目です。

 先に弟が機長になる、というと逆のようにも思えますが、それには理由があります。

 弟の義記さんは、子どもの頃からANAのパイロットになることが夢。航空大学校でライセンスを取得したのち、ANAに入社しました。

 一方、兄である圭司さんは銀行に就職。その後、ANAの自社養成パイロットに合格し、現在に至ります。

 ANAへの入社は、兄の圭司さんが1年早いですが、入社後にパイロットのライセンスを取得する兄と、ライセンスを持って入社してくる弟という関係から、「パイロット人生」は弟の義記さんのほうが先になっているのです。

 いわば「弟が先輩になる」という状況のなか、兄の圭司さんが銀行員という仕事からANAのパイロットを目指した背景には、なにがあったのでしょうか。

元銀行員の兄、なぜ弟の背中を追った?

――まず、弟の義記さんがANAのパイロットを目指した理由を教えてください。

義記さん(弟)「小さいとき、熊本から東京へ帰省でANAの飛行機に乗りました。当時はコックピットで記念撮影させてもらえることがあり、このときもさせてもらったのですが、双子の妹が先に撮ったタイミングでカメラのフィルムが終わってしまい、私は撮れなかったんです。そこで『だったら自分がパイロットになってやろう!』と思ったのがきっかけです」

――兄の圭司さんもANAのパイロットを目指すことになったわけですが、そのきっかけを教えてください。

圭司さん(兄)「弟から、弟が入学した航空大学校の話を聞き『パイロットいいな』と考えてはいたのですけれども、私は視力が良くなかったので、当時の基準ではなるのが難しかったんです。そして銀行に就職したのですが、新聞にANAが自社養成のパイロットを募集するという記事が載っていて、目の基準も緩和されていたことから、自分にもチャンスがあると知り、応募しました」

――機長になるまで、大変だったことを教えてください。

圭司さん(兄)「一番は、機長の昇格訓練かもしれません。機長になるには、飛行機を飛ばすチームのリーダーとしての統率能力が求められます。この過程で、とことん自分と向き合って、キャプテン向きの性格にならねばなりません。普段の生活では、いろいろな性格の方がいていいと思いますが、飛行機を安全に飛ばすためには、そうはいきません。私は自己表現があまり得意ではなかったのですが、それを克服するのは大変でしたね。でも、頼りになる先輩(弟の義記さん)にどうしたらいいか聞け、助けられました(笑)」

義記さん(弟)「昇格訓練は大変でした。私も、順調にキャプテンになれたわけではないんです。機長の認定は1回失敗しています。自分の弱さに向き合うのは、本当に辛かったです。ですがそれに向き合わないと、飛行機が危ない方向へ行ってしまうこともありうるわけですから、私は『任せられたこの機を安全に飛ばせられれば、それでいい』と割り切って考え、壁を乗り越えました」

「機長」は絶対評価の仕事

――そうした壁を乗り越え、兄弟で機長になったわけですが、ここまで来た感想を教えてください。

義記さん(弟)「2018年3月に、私が機長としての初フライトを迎えたときも、兄が副操縦士として隣にいてくれて嬉しかったですし、ふたりで機長になるというのが夢でしたので、やっと実現できたなという感じです。でも、ここからがスタートです」

圭司さん(兄)「ここまで来るのに、弟にはおんぶにだっこ状態でいろいろやってもらいました。ただやはりここからがスタートなので、1便1便を大切に頑張ります」

――パイロットになって、良かったことを教えてください。

圭司さん(兄)「最前列で空を見られることは、やはり良いですね。あと、同期とのつながりです。『機長』は、定められたラインを超えればなれる絶対評価の仕事。そこが、相対評価で自分の成績が決められることが多い銀行員の時代とは違うかもしれません。どちらが良い悪いではなく、『違い』としての話です。パイロットは同期同士、みんなで機長になろうという協力関係が生まれます」

義記さん(弟)「大変なこともありますが、やっぱり『空』って最高です! あと、パイロットにとって『同期』という言葉は、一般的にその言葉に対して感じるところより“近い”と思います。パイロットは協力社会ですから」

パイロットになるため必要なことは? そして「ジャンボ」は強い

――パイロットに憧れ、なりたいと思っている子どもたちにアドバイスがあれば、お願いします。

圭司さん(兄)「健康第一なのはもちろんですが、周りの人を大切にすることでしょうか。パイロットの仕事は、コミュニケーション能力が求められます。普段の生活で周りの人を大切にすると、自然とその人たちとコミュニケーションをたくさん取るようになりますから」

義記さん(弟)「どんなことでも、やりたいことを一生懸命やることが大切だと思います。上手くいかないときがあると思いますが、そうしたときこそ、それまでの人生で培ったことが大事になってきます。いろいろなことを一生懸命やっていれば、それが生きてきます」

※ ※ ※

 ちなみに、ボーイング787型機の機長であるふたりに「飛ばしてみたい飛行機」を聞いたところ、ともに「ハイテクジャンボ」の愛称を持つ「ボーイング747-400型機」とのこと。「実は、新聞に載っていたパイロットの募集要項の背景に写っていたのが、ボーイング747-400型機だったんです。でも、ボーイング787型機も良い飛行機ですよ」と、圭司さん(兄)は話してくれました。

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